簡単にいうと…
膨張弁とは
液体(冷媒)を、狭い隙間に通すことで低温・低圧にして、かつその流量・温度を自動調整する
技術要素です。
圧力差分で弁調整する「定圧自動型」や、電子制御する「電子型」などありますが、
ここではもっともベーシックな「温度自動型」の膨張弁について説明します。
詳しくいうと…
たとえば、野球ボールを回転させながら投げると、
空気(流体)を切る速度が速い(低圧)部分と、遅い(高圧)部分が生じて見事カーブします。
つまり、ある流体が高速に流れると、その高速箇所だけ低圧になります(ベルヌーイの定理)。
膨張弁もだいたいおなじような仕組みです。
膨張弁の構造と仕組み
膨張弁は、エアコンや冷蔵庫などの冷凍サイクル内において、蒸発器の手前側に配置されます。
この際、感温筒は蒸発器の出口側に付着させます。
基本的な仕組みですが、
冷凍サイクルの上流側(左図では下側)から、高温高圧の冷媒がやって来ると、
膨張弁の狭い孔を通ることで、この冷媒の流入量が減るとともに、噴き出すようにして速度が増します。
すると、この冷媒が低温低圧へと変化します(冒頭の野球ボールの例と同様)。
$位置E(h)+速度E\left\{\frac{v^2}{2g}\right\}+圧力E\left\{\frac{ρg}{p}\right\} = 一定(const.)$
流体の速度が上がると(左辺の中央)、流体にかかる圧力は下がります(左辺の右側)。この自然法則を利用して高圧流体を減圧する仕組みとして、ベンチェリ管やキャピラリーチューブがあります。
気になる方は、下記用語もご参照ください:
ただし、これだけであれば、何も弁構造である必要はなく、
先端を細くしたチューブ(キャピラリーチューブ)でも同じ機能が得られます。
膨張弁の特徴は、流れる冷媒の温度や圧力に応じて、自動で弁を開閉してくれる点にあります。
冷媒を液体→気体へと気化させる蒸留器の出口付近にある、感温筒がその機能を果たします。
この感温筒は、温度に応じて弁側へ異なる圧力をかけることで、弁の開閉を調整しています。
この開閉機能について、具体的に見てゆきましょう。
弁が閉まるとき
まず、弁の開→閉の場面を見てみましょう:
最初、弁が開いた状態だと、冷媒の流入量が多く、このため
蒸発器出口の冷媒温度がいつもより低くなります。
この低温のために、感温筒が生み出す圧力は低くなり、膨張弁側から流れてくる冷媒の圧力に負けてしまうため、
弁を閉める方向へ働きます。
弁が閉まることで、冷媒の流入量が少なくなり、
蒸発器出口の冷媒温度は標準まで上がります(標準温度に戻る)。
変化前:多量&低温の冷媒
↓
変化後:適正量&適正温度の冷媒
弁が開くとき
では、弁の閉→開の場合はどうなっているでしょう?
最初、弁が閉じた状態だと、冷媒の流入量が少なく、このため
蒸発器出口の冷媒温度がいつもより高くなります。
この高温のために、感温筒が生み出す圧力は高くなり、膨張弁側から流れてくる冷媒の圧力に勝ることで、
弁を開く方向へ働きます。
弁が開くことで、冷媒の流入量が多くなり、
蒸発器出口の冷媒温度は標準まで下がります(標準温度に戻る)。
変化前:少量&高温の冷媒
↓
変化後:適正量&適正温度の冷媒
以上が膨張弁の仕組みです。
通過する冷媒の流量・温度を調整することを通じて、
下流側の冷媒の流量・温度が適正になるよう自動で調整しているのがわかります。
こうして膨張弁は、日々わたしたちの部屋のエアコンや冷蔵庫の内部サイクルが上手く回るように、今日も冷媒の流量を調整してくれているのでした。
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つまり…
膨張弁とは
液体(冷媒)を、狭い隙間に通すことで低温・低圧にして、かつその流量・温度を自動調整する
技術要素ということです。
「弁」という日本語は、なんかムサイのぉ。もう「バルブ」で統一してはどうじゃ?
<参考文献>(2018/08/18 visited)