簡単にいうと…
原子力の技術とは
原子の核崩壊・核反応から有用な効果を得る
工夫のことです。
英語ではtechnology of nuclearと書きます。
詳しくいうと…
原子力のある風景
原子力とは、特定の物質内部の原子核が、自然と崩壊したり(原子核崩壊)、あるきっかけで分裂・融合する(原子核反応)際に生じるエネルギーのことです。核エネルギーとも呼ばれます。
身近なところでは、病院のレントゲン検査が原子核崩壊に伴う放射線(X線)を用いていたり、原子力発電所が原子核反応を用いていたりします。また、人工衛星のなかには原子力電池を動力源にしているものもあります。
「原子力」「核」と聞くと、危険というイメージがありますね。実際、大量の放射線に生物がさらされた場合、細胞が死滅して器官に重篤な影響を残すことがあります。
そのため、原子力を用いる技術には、細心の制御やリスク対策が求められます。そのうち、とりわけ制御の難しい原子核反応を用いる装置・設備は、つねに国際社会や地域社会から議論の対象とされています。
そうした原子力に関するホモ・サピエンスの工夫は、大きく分けて3つあります:
①原子核崩壊をいかに利用するか?
⇒核崩壊器の工夫
②原子核反応をいかに利用するか?
⇒核反応熱器の工夫
③原子核反応をいかに兵器として利用するか?
⇒核兵器の工夫
①~③の工夫について、一つひとつみてゆきましょう。
核崩壊器
核崩壊器は、原子核崩壊に伴う放射線を利用する装置です。
レントゲンやCT検査装置、X線検査装置、原子力電池などがあります。
核反応熱器
核反応熱器は、原子核反応(そのうち主に核分裂反応)に伴う強力な熱エネルギーを利用する設備です。
主に原子炉がこのタイプです。
核兵器
核兵器は、原子核反応(核分裂反応および核融合反応)を利用する軍事兵器です。
核爆弾、核ミサイルなどがあります。
さらに知りたいなら…
よくわかる 最新 発電・送電の基本と仕組み(2017年)
(←画像クリックでAmazonサイトへ)
難しい電磁気理論がわからなくても、イラストや写真を見ているだけでわかったつもりになれるかもしれません。内容はこちらのサイトをご覧ください。
核兵器のしくみ(2004年)
(←画像クリックでAmazonサイトへ)
いまもわたしたちがこうして利用している電気を発電している原子力発電所について、あるいは大国の切り札と化してしまっている核爆弾について、仕組みをちゃんと知っておきたい方向けです。内容はこちらのサイトをご覧ください。
つまり…
原子力の技術とは
原子の核崩壊・核反応から有用な効果を得る
という工夫なわけです。
原子核の崩壊や分裂・融合反応などは、その放射線の便利な性質や強力なエネルギーが得られる一方で、その様子を直接見たり聞いたりできない分、万が一の際の怖さが増すのぉ。
歴史のツボっぽくいうと…
【核崩壊器】
- 1954年RTGの発明アメリカの科学者ケン・ジョーダンとジョン・バーデンが、熱電方式原子力電池(RTG)を発明する。
- 1961年RTGの実用化アメリカの人工衛星トランシット4AにRTGが搭載される。
【核反応熱器】
- 1938年核分裂反応の発見ドイツの化学者オットー・ハーンと物理学者リーゼ・マイトナーが、中性子をあてたウラン原子核が分裂することを発見する。
- 1942年最初の原子炉での実験イタリア生まれの物理学者エンリコ・フェルミが、移住先のアメリカで、世界最初の原子炉「シカゴ・パイル1号」を完成させ、原子核分裂の連鎖反応の制御に史上初めて成功する。
- 1954年最初の原子力発電所ソビエト連邦(現・ロシア)のオブニンスク原子力発電所が、原子力発電所としては世界で初めて運転を開始する。
- 1955年最初の原子力潜水艦アメリカで、世界最初の原子力潜水艦「ノーチラス」が初航行する。
- 1960年最初の原子力空母アメリカで、世界最初の原子力空母「エンタープライズ」が進水する。
【核兵器】
- 1942年マンハッタン計画連合国側のアメリカ、イギリス、カナダが、ナチス・ドイツの原子爆弾開発に対抗するため、原子爆弾開発のために科学者、技術者を総動員する。
- 1945年最初の原爆実験アメリカで人類史上初の原爆実験(トリニティ実験)が行なわれる。
- 1945年原子爆弾の投下日本の広島、長崎に原子爆弾が投下される。
- 1952年最初の水爆実験アメリカで、人類史上初の水爆実験(アイビー作戦)が行なわれる。
<参考文献>(2019/08/19 visited)