簡単にいうと…
冷凍サイクルとは
冷媒という特殊な物質を使って、熱を移動させる
技術原理です。
詳しくいうと…
グラフを準備
この冷凍サイクルのはたらきをみる前に、あるグラフを用意しましょう。
たとえば、「熱」を与えて、お湯を沸騰させると、水(液体)は蒸気(気体)になりますね。
また、「圧力」が高いとこの沸点は低く、低いと沸点は高くなります。
(低圧の富士山山頂では、約90℃が沸点になります)
この「熱」と「圧力」を使ってグラフをつくると、
下図のように、液体⇔気体がどのような条件で変わるのかが明確になります:
これはモリエール線図(p-h線図)とも呼びます。
グラフ内X軸の「比エンタルピー」とは、とりあえず「熱」のことです。
さて、いま液体状態である冷媒に対して
この熱を上げてあげると…
液体分子が自由に動きはじめて体積膨張し、
半液体・半気体の湿り蒸気へと変化します。
次に、ここからさらに熱と圧力を上げてみると…
さらに体積が膨張し、気体分子の運動エネルギーの高い
過熱蒸気という気体へと変化しました。
このように、熱と圧力の増減に応じた
冷媒の位相変化(液体⇔湿り蒸気⇔過熱蒸気)が
このグラフから読み取れますね。
冷凍サイクルのグラフ
ではここから、エアコンや冷蔵庫で用いられる冷凍サイクルという仕組みを、
このグラフ上にプロットして、その循環を読み取ってみましょう。
この循環には、次の4つのモメントがあります:
①膨張弁(圧力↓)
②蒸発器(熱↑)
③コンプレッサー(熱↑&圧力↑)
④凝縮器(熱↓)
それぞれ確認してゆきましょう。
①膨張弁(圧力↓)
まず冷媒は、膨張弁の狭い隙間を通り抜けることで、
その圧力が下がります。
湿り蒸気域へ移動したのがわかりますね。
この蒸発器を通過することで、冷媒は気液混合状態になりました。
またこのとき、断熱膨張(熱の出入りがない状態で体積が広がる)により、冷媒の温度も下がります。
②蒸発器(熱量↑)
次に冷媒は、蒸発器を通り抜けることで
その冷たい温度をパイプ外に放出して=パイプ外の熱を吸収します。
冷媒が外部の熱を吸収するので、冷媒の温度は上がります。
冷媒の熱が右方向へ上昇して
グラフ右側の過熱蒸気域へやってきたことがわかりますね。
③コンプレッサー(熱量↑&圧力↑)
冷媒は、続いてコンプレッサー(空気圧縮機)にかけられ、圧力が上がります。
また、このときの断熱圧縮(外部へ熱が逃げないような圧縮)により、
コンプレッサー自体の運動エネルギーが、冷媒にかかる圧力だけでなく
冷媒の温度も上げます。
このコンプレッサーを通り抜けることで、
冷媒は引き続き過熱蒸気の状態、しかも高圧になっています。
④凝縮器(熱量↓)
最後に、凝縮器(=空気交換機)を通ることで
冷媒の熱がパイプ外へと逃げてゆきます。
このため冷媒の熱が下がり、
湿り蒸気域を通り抜け、左側の過冷却域へと戻ってきました。
ふたたび冷媒は液体状態になります。
ひとめぐりしてみて
以上の1サイクルを基本として、
②の蒸発器で吸収した熱を、
④の凝縮器で排熱することで、
冷凍サイクルは熱を一方の場所から他の場所へ移動させることができます。
このサイクルにおいて、
①の膨張弁と、③のコンプレッサーは、
圧力を増減させることで、②と④のあいだを橋渡しします。
こうして冷凍サイクルは、エアコンや冷蔵庫などで、
①→②→③→④→①…の冷媒循環サイクルを繰り返すことで、
熱をある場所から別の場所へと移動させ続けることができるのです。
以上が冷凍サイクルの仕組みです。
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冷凍サイクルとその各構成パーツについて豊富なイラスト付きで分かりやすく学べる1冊。エアコンや冷蔵庫の仕組みにちょっと興味あるなぁ。。。くらいの方にもちょうどよさそうですね。
つまり…
冷凍サイクルとは
循環する冷媒の熱や圧力を上げ下げしながら熱を移動させる
技術原理ということです。
また、熱や圧力を上げ下げさせる技術要素として、膨張弁やコンプレッサーなどがあります。
熱と圧力を操作するだけでなく、ついでに熱も移動させてしまうとは、とんでもない工夫じゃな!
歴史のツボっぽくいうと…
(調査中です)
<参考文献>(2018/08/17 visited)