この用語のポイント
簡単にいうと…
輻射器とは
光を放って照明、表示、反射などの効果を生み出す
技術要素・個体の総称です。
詳しくいうと…
放たれた光のある風景
光を放つこと、それはまずもって照明の課題でした。人間含むホモ属は視覚を頼りに生活しています。そんな私たちは夜間や坑道に火を灯し、視界と行動の幅を確保してきました。
照明はたんなる視界の提供だけでなく、信号をも提供してくれます。車や電車の運転手には信号機が、船の航海士には灯台が、飛行機のパイロットには航空灯がそれぞれ、行き先の指針を与え、発振/停止の合図となります。
つまり光を放つことは、色を与え、周囲のひとびとが色とその意味を共有することでもあるのです。19世紀にはフィルムに光を投影して映画の上映が行なわれます。現実風景を再現するのに光が用いられ始めた時代でした。
20世紀以降、電子技術の発達と共に、光を放つことは別の機能を担うようになります。ひとつには、ディスプレイの登場がひとびとにより鮮明な色と光を求めさせ、ふたつめには、レーザーの登場が、医療手術や情報読み取り装置として確固たる位置をわたしたちの生活内に占め始めたことが挙げられます。
いまや、光を放つことは、たんなる照明や投影の問題を離れ、表示すること、溶接すること、読み取ることと同義になっているのです。
それら輻射器の種類について見てゆきましょう。
輻射器の種類
輻射器は、その光の輻射(放射)がもたらす主な効果に応じて、以下のように分類可能です:
①照明器
②表示器
③映写機
ひとつひとつ概覧してゆきます。
照明器(明かりの技術)
照明器は、光を放って視界を確保したり、さまざまな色彩表現を可能にする輻射器です。
現在主流の発光ダイオード(LED)のほか、蛍光灯、白熱電球、信号機などがこのタイプです。
表示器(画面の技術)
表示器は、ディスプレイ上に極小の色彩単位(画素)を持ち、バックライトなどで発色して画像を表示する輻射器です。
現在主流の液晶ディスプレイのほか、ブラウン管、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなどがあります。
映写機(投影技術)
映写機は、光を色彩と共に壁面へ投影して、フィルムやデジタルデータを大画面で表示させる輻射器です。
現在主流のDLPプロジェクタのほか、フィルム映写機、あるいはプラネタリウムなどがこのタイプです。
レーザー発振器(光線の技術)
レーザー発振器は、発生させた光を増幅させて一定方向へ光線状に放つ輻射器です。
いわゆるレーザー発振器のほか、異なる仕組みをもつレーザー半導体などが主流で、用途別にみるとレーザーポインター、バーコードリーダー、レーザーメス、レーザー溶接機、レーザー距離測定器、CDプレイヤーなど多くの応用物があります。
以上で概観したように、輻射器は、さまざまな仕組みでさまざまな場所に光を与え、明るくしたり、鮮明に見させたり、大画面で表示したり、増幅された光の反射や熱などをもたらすことで、わたしたちの日常生活のいたるところに明かりや色彩、あるいは素早い情報伝送をもたらしてくれるのでした。
さらに知りたいなら…
光学機器が一番わかる(2010年)
(←画像クリックでAmazonサイトへ)
光学機器について広く気軽に学びたい方向けです。目次はこちらのサイトをご覧ください。
つまり…
輻射器とは
光を放って照明、表示、反射などの効果を生み出す
技術要素・個体の総称なわけです。
光は電気と同じく精密なコントロールに向いたエネルギーじゃな。電気→光へ効率的に変換するレーザー発振器や、光→電気へ変換するフォトダイオードが開発されて以降、そのポテンシャルがますます注目されつつあるぞい。
歴史のツボっぽくいうと…
- 1888年液晶物質の発見オーストリアの植物学者F.ライニッツァーらが、コレステロールと安息香酸のエステル化合物である結晶を加熱すると液体状になること(サーモトロピック液晶)を発見する。
- 1906年LEDの予感イギリスの工学者ヘンリー・ジョセフ・ラウンドが、炭化ケイ素(SiC)の塊に電流を流すと黄色く発光することを確認する。
- 1917年レーザー理論の確立ドイツ生まれの物理学者アルベルト・アインシュタインが、論文「放射の量子論について」を発表、レーザーの理論的基礎を確立する。
- 1950年光ポンピング法の提案フランスの物理学者アルフレッド・カストレルが、原子・電子を励起状態にする光ポンピング法を提案する。
- 1958年レーザーの特許出願アメリカ・ベル研究所の物理学者チャールズ・タウンとアーサー・ショウロウが、レーザー(当時は光学メーザーと呼ばれていた)を研究し、特許を出願する。
- 1959年「レーザー」の登場コロンビア大学の大学院生ゴードン・グールドが、論文「レーザー―輻射の誘導放出による光の増幅―」を発表、レーザーという言葉を公で初めて用いる。
- 1960年レーザー発振器の開発アメリカ・ヒューズ研究所の物理学者セオドア・メイマンが、最初のレーザー発生装置を開発する。
- 1962年動的散乱効果の特許アメリカRCA社のウィリアムズが、電圧をかけると液晶が光を散乱する現象(動的散乱効果)にかんする特許を出願する。
- 1962年LEDの開発アメリカのゼネラル・エレクトリック社の研究者ニック・ホロニアックが、赤色LEDを開発する。翌年、同氏は「LEDがトーマス・エジソンの白熱電球を置き換えるだろう」と予言。
- 1968年動的散乱効果の実用化アメリカRCA社のハイルマイアーが、動的散乱効果を利用して、室温下でも安定的に存在できるネマティック液晶を用いたディスプレイを試作する。
- 1970年代各色LEDが登場赤・黄・橙・黄緑などの各色LEDが開発される。
- 1973年液晶電卓の登場日本のシャープ社が、液晶表示装置を搭載した電池駆動式電卓EL-805を開発する。
- 1984年液晶テレビの登場日本のエプソン社が、液晶カラーテレビET-10を販売する。
- 1986年高輝度青色LEDの先駆け日本の工学者 赤崎勇、天野浩らが、青色発光に必要な窒素ガリウム(GaN)の単結晶化に成功する。
- 1987年DMDの発明アメリカのテキサス・インスツルメンツ社のラリー・ホーンベックがDMDを発明する。
- 1993年高輝度青色LEDの開発日本の工学者 中村修二が高輝度青色LEDを開発する。
- 2000年代携帯端末の発展携帯電話、PDA(携帯情報端末)、携帯音楽プレイヤーなど小型電子機器で幅広く液晶ディスプレイが搭載される。