簡単にいうと…
造形芸術とは
美感的意義をもつ物事のうち、物質の形態・色彩によって視覚表現を行なう物事
という制作物です。
詳しくいうと…
造形の2つのタイプ
鉛筆でコの字型の線を引いてみましたが、これではまだ線です。
他方、ロの字型の線を引いてみると、弧が閉じているため、形になりました。
次いで、後者の形は、周辺が閉じているため、色で塗りつぶすことができます。灰色で塗りつぶすとコンクリートの土台のようになり、黒色で塗りつぶすと重しか何かのように見えますね。
以上はホモ・サピエンスの思考の側から、
トップダウンで造形を行なう例です。
絵画や漫画がこのタイプにあたります。
他方、わたしたちの周囲を見渡してみると、それら個々の物にははじめから形態と色彩が備わっていることに気付かされます。
物質は特定の分子構造から、とりわけ生物は特定の細胞構造から構成されていて、その構造パターンの連続が、個体としてこれこれの稜線によって結果として縁どられ、形態となり、また特定の光を吸収・反射することで、これこれの色合いを表現しています。
すでに形態と色彩を備えた物質を主材料とし、それら所与の材料をこねたり、削ったり、揃えたりすることで、新たな形態や色彩を再形成させることもできます。
これは所与の自然の側から、ホモ・サピエンスの思考と身体によって加工が加えられた、
いわばボトムアップ型の造形といえるでしょう。
彫刻、建築、庭園、生け花、書、写真、インスタレーションなどがこのタイプにあたります。
触発と理念
これら造形の2つのタイプ―トップダウン型とボトムアップ型―のいずれにも共通しているのは、造形を行なう当のホモ・サピエンスが、何かに触発されていることです。
絵描きは風景や静物に触発されてそれらを自身の視覚・心象表現をもって模写するわけですし、カメラを手に持つひとびとは所与の光景に触発され、これこれの角度から導かれるようにして自然にシャッターを切るわけです。
あるいは、特定の理念に導かれるケースも多々あります。たとえば花を生けるひとは、なぜあちらの花ではなくこちらの花を、花瓶のあの位置ではなくこの位置に差したのでしょうか? 彫刻刀を握るひとびとは、まだ生のままの材料の彼方に、いったいどんな形象を見つめているのでしょうか?
答えは、彼らの精神のうちに「これでよし」とする理念、だいたいにおいては美の理念があるためで、たとえばそれは色彩の調和であったり、曲線同士の調和であったり、あるいは常識からの逸脱を示す多少の不調和であったりします。
造形芸術の種類
そんな造形を旨とする芸術作品には、一例として、以下の種類があります:
・絵画
…キャンパス上で絵具を塗りたくって造形します。
・漫画
…紙上でインクを走らせて造形します。
・彫刻
…木材・石材・プラスチックなどを削って造形します。
・建築
…木材・石材・レンガ材・鉄材などを組み立てて造形します。
・庭園
…岩・砂・苔・樹木・花などを建物に隣接する地表空間面に配置して造形します。
・生け花
…花瓶内に異なる花を異なる位置に配置して造形します。
・書
…紙上に墨を走らせて象形文字を造形します。
・写真
…光景を光の配列として固着させることで造形します。
・インスタレーション
…人間とサイズ的に同等かそれ以上のオーダの物体や光線を配列して造形します。
以上のように造形芸術は、ある形態を象(かたど)り、ある色彩を浮かび上がらせることで、触発を受けた光景や理念などを表現する芸術作品です。
それによって今日もわたしたちに、日常の正則形とは異なる異形を垣間見させ、子ども時代に返ったような心持ちを取り戻させてくれるのでした。
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つまり…
造形芸術とは
美感的意義をもつ物事のうち、物質の形態・色彩によって視覚表現を行なう物事
という制作物なわけです。
「形の配列」とか「光の配列」と言うが、実際それは、見る者から同心円状に広がる三次元の配列なんじゃろうから、配列というより空間構成というほうがしっくりくるのぅ。
歴史のツボっぽくいうと…
- 紀元前20000年頃ラスコーの洞窟壁画現在のフランスで、クロマニョン人がラスコー洞窟に壁画を描く
- 紀元前2560年頃ピラミッドの建設エジプト王国で、ギザの大ピラミッドが建設される
- 紀元前438年頃パルテノン神殿の建設古代ギリシャで、パルテノン神殿が建設される
- 1504年頃ダヴィデ像の制作イタリアの芸術家ミケランジェロが、彫刻『ダヴィデ像』を制作する
- 1506年頃モナ・リザの制作イタリアの芸術家レオナルド・ダ・ヴィンチが、絵画『モナ・リザ』を制作する
- 1652年頃聖テレジアの法悦の制作イタリアの芸術家ジャン・ロレンツォ・ベルニーニが、彫刻『聖テレジアの法悦』を制作する
- 1827年世界最初期の写真フランスの発明家ジョゼフ・ニセフォール・ニエプスが、世界最初期の写真を撮影する
- 1913年空間における連続性の唯一の形態の制作イタリアの芸術家ウンベルト・ボッチョーニが、彫刻『空間における連続性の唯一の形態』を制作する
<参考文献>(2020/05/09 visited)