この用語のポイント
簡単にいうと…
ランキンサイクルとは
蒸気エンジンの理論的な熱機関サイクルを示す
技術原理です。
ちなみにランキンとは、この熱機関サイクルの理論を確立した、19世紀イギリスのウィリアム・ランキンの名にちなんでいます。
主にタービン型蒸気エンジンのサイクルとして用いられ、以下の説明でもタービン型をモデルに説明しますが、レシプロ型蒸気エンジンにも適用されます。
詳しくいうと…
(タービン型)蒸気エンジンの構成はだいたい左図の通りです。
この蒸気エンジンの理論的な熱機関サイクルであるランキンサイクルについてみてゆきます。
圧力と体積に応じた水蒸気の状態変化
ランキンサイクルは、通常T-s線図(温度-エントロピー線図)によってしばしば示されますが、説明の簡易のため、ここではP-V線図(圧力-体積線図)を使って説明します。
まず、左図のように、水蒸気(水)について、縦軸に圧力を、横軸に体積をとったグラフを用意します。
圧力と体積(あと本当は温度がありますがここでは見えません)のとる位置に応じて、水が水蒸気になりはじめたり(飽和水蒸気)、液体がほとんど残っていない熱々の水蒸気になったりする地点がわかります(過熱水蒸気)。
サイクルの流れ
さて、この水⇔飽和水蒸気⇔過熱水蒸気の境界線を前提にして、(タービン型)蒸気エンジンの熱機関サイクルをみてゆきます。
左図において、蒸気は、以下の各装置間をぐるっと循環します。
…水が沸かされて蒸気になります。体積が膨張します。
②蒸気タービン
…この蒸気が膨張しつつ、タービンの羽根車をぐるぐる回転させながら力を失い、やがてその圧力を低下させます。
③復水器
…その後、蒸気は復水器のなかで冷やされ、ぎゅっと凝縮して体積を縮めながら、水へと戻ります。
④ポンプ
…水になったので、ポンプが使えます。ここで高圧をかけつつボイラー/過熱器へと送り出し、①につづきます。
このサイクルにおいて、①ボイラー/過熱器のなかで熱が水(蒸気)に与えられます(左図の熱量(in))。
そして②復水器のなかで熱が水(蒸気)から放出されます左図の熱量(out))。
このサイクル内に与えられた熱量(in引くout)を使って、果たされた正味の仕事量が、左図の黄色面積部分にあたります。蒸気の高圧力(縦軸の高さ)と体積膨張(横軸の幅)が利用され、タービンをくるくる回転させました。
熱効率について
このランキンサイクルの熱効率は以下の考え方で求められます:
$熱効率 = \frac{正味の仕事量}{熱量(in)}$
$= \frac{熱量(in)-熱量(out)}{熱量(in)}$
$= \frac{(ボイラーに入る前のエントロピー-出た後のエントロピー)-(復水器に入る前のエントロピー-出た後のエントロピー)}{(ボイラーに入る前のエントロピー-出た後のエントロピー)}$
つまり、正味の仕事量(先図の黄色面積)を果たすために、どれだけの熱量(先図の熱量(in))を与えなくてはならなかったのか、というのが熱効率です。
ここでエントロピーとは、移動した熱量を温度で割った値を示す概念($\frac{熱量}{温度}$)なのですが、先の図では出てこないうえに、いまこの用語説明を書いている時点で、この概念を質的にうまく説明できません。ごめんなさい。
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つまり…
ランキンサイクルとは
蒸気エンジンの理論的な熱機関サイクルで、水⇔蒸気の位相変化や、温度・圧力・体積の変化が1サイクルごとにくるっと一巡することで、どれだけ仕事量が得られるのかを表す
技術原理というわけです。
で、エントロピーって結局なんなんじゃ?
歴史のツボっぽくいうと…
19世紀 イギリスの物理学者・工学者ウィリアム・ランキンが、
凝縮器(復水器)付き蒸気エンジンの理論サイクルを研究する。
<参考文献>(2018/09/17 visited)