この用語のポイント
簡単にいうと…
高炉とは
鉄鉱石から鉄(銑鉄)を抽出する炉
という技術環境です。
一度にたくさん銑鉄が得られるよう、背丈が100m前後にも及ぶため、「高」炉と呼ばれます。「鉄溶鉱炉」とも呼ばれます。
日本では、全国各地の14カ所で、25基の高炉が稼働しています(2017年時点)。
詳しくいうと…
高炉とは、鉱山から採掘された鉄鉱石+αをその中に入れて、熱々に加熱させ、ドロドロに溶かして、純度の高い鉄(銑鉄)を抽出する設備です。
銑鉄は、高炉の次の転炉を経ることで、鋼鉄へと変化したり、そのまま鋳物用の鉄として工場の鋳型へ流し込まれたりします。
また、高炉には外部熱源として送風炉がセットで付いています。
ではその製銑プロセスをみてゆきましょう。
①装入・蓄熱
まず、高炉の中に鉄鉱石を、ただし採掘直後の状態ではなく塊鉱石・焼結鉱へと加工してから投げ込みます。
この際、ほかにも
・コークス(熱源用)
・石灰(不純物除去用)
も併せて投げ込みましょう。
高炉の準備が整ったら、次は送風炉を準備します。
送風炉の中には、チェッカー煉瓦と呼ばれる、ハチの巣状のレンガが大量に積まれています。
事前にバーナーでこのレンガを炙ることで、大量の熱を蓄えた蓄熱体となります。
高炉に必要鉱物を投げ入れ、送風炉の蓄熱体も準備OKです。
では、次にいよいよ溶かすプロセスです。
②融解
ここでは、まず先ほど熱しておいた送風炉の蓄熱体に、大量の冷風を送りこみます。
すると、冷風は1,000℃以上の熱風となり、高炉のほうへ流れ込みます。
高炉の内部では、この熱風により様々な化学反応が生じます。
まずコークス(元は石炭)が、鉄(塊鉱石・焼結鉱)から酸素を奪うことで、高炉内部の蓄熱体となって熱々状態を保ちます。
次に鉄(塊鉱石・焼結鉱)の内、純度の高い成分(銑鉄)が、この熱々状態に耐えきれずドロドロに溶けだして、底のほうへ溜まってゆきます。
あとは、底に空いた穴からこの液体状態の銑鉄だけかすめ取ればOKです。
このように、手の込んだ仕方で鉄鉱石を純化させることで、使用に耐えうる頑丈な鉄が得られるわけです。
送風機の歴史
ちなみに、送風炉の仕組みが完成する以前は、ふいごが世界各地での主要な送風装置でした。
多くは人力でこのふいごをギッコンバッタンしていましたが、河川に恵まれた近世ヨーロッパでは、水車を使ってこのふいごを稼働させていました。
複雑にみえる送風炉も、歴史を紐解けば、わたしたちにも直感的に理解できる簡易な構造がその祖先になっている、という例ですね。
今回の場合、送風炉とは「風を送る」存在です。”うちわ”に代えてもいいわけです。そうすると、高炉は構造物なので”七輪”、鉄鉱石は溶かす対象なので”餅”、コークスは熱源なので”木炭”と置けば、最低限のイメージが掴めますね。
あとは、この最低限のイメージの上に、複雑な装置や化学反応作用を、あなたの予備知識や興味の分だけ乗っけてあげましょう。高炉-送風炉イメージの完成です。
以上のように高炉は、送風炉とセットになることで、鉄鉱石を熱してドロドロに溶かし、純度の高い銑鉄を得ることができる設備です。
これにより、わたしたちの暮らす建物の鉄骨・鉄筋や、鍋・包丁、自動車・鉄道レール、水道・ガスのパイプその他ありとあらゆる場所や物の頑丈さが、この高炉で練り上げられているわけです。
さらに知りたいなら…
つまり…
高炉とは
送風炉からの酸素を得て、コークス・石灰と化学反応を起こしながら、鉄鉱石から鉄(銑鉄)を抽出する炉
という技術環境なわけです。
「鉄は国家なり」と誰かが言っておった。19世紀デンマークの考古学者クリスチャン・トムセンは、石器時代・青銅器時代に次ぐ時代区分として鉄器時代を提唱しておったが、それだけ現在のわしらの生活を一変させたのが、高炉に代表されるこの冶金技術じゃったわけじゃな。
歴史のツボっぽくいうと…
- 紀元前1世紀頃世界で最初期の高炉中国で前漢時代に高炉がつくられる。
- 12~14世紀頃西洋で最初期の高炉
西洋で最初期の高炉がスウェーデンでつくられる。
以降、製鉄地域で、熱源になる木炭の不足が深刻化する。
- 1709年コークスの研究
イギリスの製鉄業者エイブラハム・ダービー1世が
そのままでは不純物の多かった石炭を蒸し焼きにすることでコークスをつくり、
以降、コークスが高炉の新たな熱源になる。
- 1854年日本で最初期の高炉日本初の近代高炉が、薩摩藩の集成館事業により鹿児島市に建設される。
<参考文献>(2019/03/02 visited)
https://www.jase-w.eccj.or.jp/technologies-j/pdf/iron_steel/S-14.pdf
https://www.eng.nssmc.com/company/r_and_d/reports/pdf/vol04_03.pdf