この用語のポイント
簡単にいうと…
自動車とは
原動機の回転運動でタイヤを回し、路上を走る乗り物
という技術個体、あるいはそれらの総称です。
一般に「自動車」は、乗用車・バイク・トラック・バスなどを広く指します。
ここでは、そのうち乗用車(ガソリンエンジン搭載・後輪駆動)について説明します。
詳しくいうと…
18世紀に蒸気エンジンが発明されると、その得られた高速回転の運動エネルギーをどう利用しようか、ヨーロッパで試行錯誤が始まりました。
そのうち、馬車を馬ではなくこの蒸気エンジンで牽(ひ)かせて、人を乗せて走らせてはどうか、という発想に至ります。これが今日の自動車です。
21世紀の現在、わたしたちが運転したり乗ったりする自動車の、動力は、蒸気エンジン(外燃機関)からレシプロエンジンであるガソリンエンジン・ディーゼルエンジン(内燃機関)、あるいは電気モーターへと変化しました。
しかし、仕組みは200年前と変わりません。動力の運動エネルギーをタイヤへ伝えて、それで走るのです。
とはいえ自動車は、たんにタイヤを回すだけでなく、左右に曲がったり、ギアチェンジしたり、止まったりします。
ここではそんな自動車の駆動・制動の仕組みについてみてゆきます。
構造と仕組み
右図は、自動車を上から見た模式図です。いろんなパーツがありますね。
走行する際の以下の機能ごとに、これらパーツの仕組みを一つひとつみてゆきましょう。
①タイヤが回る
②ギアが変わる
③左右に曲がる
④タイヤが止まる
①タイヤが回る(駆動)
まずは、自動車に乗り込んで、キーを回しましょう。エンジンが稼働します。
エンジン(ガソリンエンジン)は、燃料タンクのガソリンを気化させて、シリンダー(円筒)内で着火・爆発させることで、回転運動エネルギーを得る原動機です。
クランクシャフトと呼ばれる凹凸状の軸に、いくつものシリンダー/ピストンが往復運動をして、回転させています。
このエンジン、車のだいたい前部に置いてあります。
エンジンが稼働すると、その回転運動が色々なシャフト(軸)やギア(歯車)へ伝わって、最終的に後部のタイヤを回します(このとき、前輪タイヤにエンジン動力は直接伝わっていません)。
ここでアクセルペダルを踏みこむと、エンジンのシリンダー入口にある弁(バルブ)が緩み、吸入される空気量=燃焼程度=回転数が多く/大きくなり、早く走ることができます。
こうして、車が動き出したようです。
②ギアが替わる(ギアチェンジ)
しばらく車を走行させていると、上り坂が見えました。
ローギア(1速)へギアチェンジをしましょう。
まず、クラッチペダルを踏み、クラッチディスクをフライホイールから少し離します。これにより、エンジン動力がタイヤへ一時的に伝わらなくなります。
その隙に、シフトレバーを操作して、1速へ入れます。
このとき、左図中央の手動変速装置がギア(歯車)ごと位置移動して、先ほどまでと異なる大きさのギア同士が噛み合うことになりました。
このギアチェンジ操作を終えたらクラッチペダルを離して、エンジン動力がタイヤへ伝動するようにします。
先ほどとは異なり、エンジン側の小さなギアで、タイヤ側の大きなギアを回すことで、ローギアに入ったことがわかります。低回転ですがパワーがあり、上り坂には最適です。
③左右に曲がる(ハンドル操作)
坂を登り終えると、今度は左折カーブが待ち受けていました。
曲がりましょう。でも、どうやって?
ハンドルを左へ回すと、連動して、ピニオンギアと呼ばれる歯車も回転します。
このピニオンギアが回ると、そこに接しているラックと呼ばれるギザギザ部品が左右に移動し、ステアリングアームとともにタイヤを斜めへ動かすことができます。
自転車と同様に、後輪で車体を駆動させ、前輪は方向調整の役目を果たすわけです。
しかし、上図をよく見ると、左右のタイヤは別軸になっており、その中央には差動装置(ディファレンシャルギア)が介在しています。差動装置は、カーブ時に内側タイヤの回転数が落ちると、その差分だけ、外側タイヤの回転数を上げる仕組みです。
詳しい原理は以下リンクをご参照ください(リンク切れてたらごめんなさい):
https://www.youtube.com/watch?v=fg9qHLd_Zio
④タイヤが止まる(ブレーキ)
ドライブを終えて、家に帰ってきました。
車を駐車しようと、ブレーキペダルを踏み込みます。
すると、前輪部分では、ブレーキパッドと呼ばれる凹状のパーツが、タイヤの一部(ディスクローター)をぎゅっと握ります。ぎゅっと。
こうして無理やりタイヤの回転を止めさせます。
後輪でも同様に、シューと呼ばれる部品を、タイヤの内側に押し付けて、無理やりタイヤを止めます。けっこう力業ですね。
以上の仕組みで、わたしたちは自動車を運転することができているのでした。
電気自動車
搭載する原動機が、エンジン(熱機関)ではなく電気モーター(電動機)の自動車を、とくに電気自動車と呼びます。
駆動の仕組みは先ほど説明したガソリンエンジン車とほぼ同様ですが、電気自動車の場合は専用バッテリー(電池)を積み、ガソリン給油の代わりに充電する必要があります。
電気自動車のメリットとして、静音性・走行時CO2(二酸化炭素)無排出・脱-石油輸入依存などが挙げられる一方、充電時間の長さなどデメリットも現状あります。
また、ガソリンエンジンと電気モーターの両方を搭載して、用途に応じて動力を使い分ける、ハイブリッドカーも登場しています。無駄のすくない動力活用により、ハイブリッドカーは比較的高燃費となっています。
19世紀末~20世紀初頭にかけて、自動車の原動機として当時、蒸気エンジン・電気モーター・ガソリンエンジンが競っていました。
21世紀の現在、ふたたび「ガソリンエンジン・ディーゼルエンジンか、それとも電気自動車か」という岐路に、自動車産業やドライバーは立っています。
自動運転技術
主に高速道路で、前方車との車間距離をセンサーを用いて一定に保ちながら自動走行するAdaptive Cruise Control(ACC)機能搭載車が各メーカーから販売されています(2019年1月現在)。
このACCは、アメリカ運輸省の自動運転レベル定義によると「レベル2」に相当します。
レベル3~5の、ドライバーが長時間ハンドルから手を離していても走行可能な自動運転技術は、2025年実現を目標に、目下研究開発や法整備が進んでいます。
なお、一般道以外の敷地内では、一部軍隊や鉱山などで、決められたルートを巡回する無人車両がすでに導入されつつあります。
さらに知りたいなら…
自動車のしくみ パーフェクト辞典(2013年)
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車に興味がある、あるいはすでにバイクを運転しているけれど基礎知識を固めたい、という方におススメです。
つまり…
自動車とは
原動機(エンジン・モーター)の回転運動でタイヤを回し、路上を走る乗り物
という技術個体、あるいはそれらの総称なわけです。
タイヤの付いた棒をエンジンの出力軸に、単純にくっつけてるだけではなかったんじゃの。そして差動装置の解説を省いたのはなぜじゃ!
歴史のツボっぽくいうと…
1769年 フランスの軍事技術者ニコラ=ジョゼフ・キュニョーが
大砲牽引用の蒸気エンジン式三輪自動車を開発する。
1830年代 スコットランドの発明家ロバート・アンダーソンが
電気自動車を開発する。
1865年 イギリスで赤旗法が成立。当時普及しつつあった蒸気自動車が、
道路を傷め馬を驚かせると敵視され、
走行時に赤い旗を持った人物が先導するよう義務化される。
1885年 ドイツのゴットリープ・ダイムラーとカール・ベンツが
それぞれ独自にガソリンエンジン式自動車を開発する。
1908年 アメリカのフォード車が、大量生産方式により安価となったガソリン自動車、
フォード・T型を販売。自動車の大衆普及のさきがけとなる。
20世紀 世界各地でモータリゼーションが起こり、自動車が生活必需品になる。
1970年代 スイスでカーシェアリングが行なわれる。
<参考文献>(2019/01/01(気付けばもう元旦!) visited)