簡単にいうと…
電子器とは
電気・電子の流れを加工制御する回路をつくる
技術要素・個体の総称です。
詳しくいうと…
電子のある風景
学校の理科の授業で、電子について学びましたね。原子核の周り回っているとか、どの原子が何価だとか。これは科学の観点からみた電子です。
技術の観点からみた電子は、もっととんでもないことをしています(されています)。
回路の中で増えたり、減って熱になったり、一方通行したり、動き回っているうちに計算に利用されたり、といったドラマが繰り広げられています。
20世紀半ばまで、そんな回路の中心は真空管でした。真空管は電子流の制御すること(増幅・検波・整流・発振など)によって、さながら回路素子というオーケストラを導く指揮者の役割を果たしてきました。
その電子回路の制御役が、トランジスタへ移行すると、電子機器はずっと小型化しました。今日の薄型テレビ、ノートPC、スマートフォン、家電製品など、もし真空管回路のままだったら部屋に入れることすら大きすぎて難しかっただろうありとあらゆる電子機器の回路は、この小さなトランジスタのおかげで統率されているのです。
そんな電子器について見てゆきましょう。
電子器の種類
電子器は、回路そのもの、回路を構成するパーツ、そして回路を組み合わせたマシン(コンピュータ)に応じて、主に以下のように分類可能です:
①電子回路
②回路素子
③計算機
ひとつひとつ概覧してゆきます。
電子回路
電子回路は、供給された電気(電子)を様々な回路素子、様々な通り道にくぐらせています。
それにより、機器が扱いやすいよう電気を加工したり(交流-直流変換・増幅・発振・変調・高周波化など)、その中の電子流のON/OFFを利用して計算する(加算乗算・論理演算など)タイプの電子器です。
アナログ回路としては、電源回路、増幅回路、発振回路、変調回路、高周波回路、フィルタ回路などがあり、主に電気の性質を加工します。
デジタル回路としては、フリップフロップ回路、カウンタ回路、シフトレジスタ回路、位相同期回路、加算器、乗算器、アナログ-デジタル変換回路などがあり、主に電子の性質を利用して演算を行ないます。
回路素子
回路素子は、先述の電子回路内に設置される個々のパーツという電子器です。
受動素子(電気の消費・蓄積・放出)としては、抵抗器、キャパシタ、インダクタ、オイルなどがあります。
能動素子(電気の増幅・整流)としては、トランジスタ、真空管、継電器、オペアンプ、ダイオードなどがあります。
計算機
計算機は、先述の電子回路(回路素子含む)などを複数組み合わせて、複雑な演算処理を、人間が利用しやすい入出力装置とともに実行するタイプの電子器です。
コンピュータ(電子式計算機)、電気機械式計算機などがあります。
つまり…
電子器とは
電気・電子の流れを加工制御する回路をつくる
技術要素・個体の総称なわけです。
歴史のツボっぽくいうと…
【電子回路】
- 1836年変圧器の発明アイルランドの牧師ニコラス・カランが一次コイルと二次コイルからなる誘導コイルを発明し、変圧器として広く用いられる
- 1873年ダイオードの原理の発見イギリスの物理学者フレドリック・ガスリーが、電流が一方向にしか流れないダイオード作用の基本原理を発見する
- 1896年電解コンデンサの発明アメリカのチャールズ・ポラックが、電解コンデンサの特許を取得する
- 1918年フリップフロップ回路の発明イギリスの物理学者フィリップ・エククレスとF.W.ジョーダンが、2つの真空管からなる最初のフリップフロップ回路を発明する
- 1952年集積回路の発案イギリスの工学者ジェフリー・ダマーが、集積回路のアイデアを公表する
- 1958年集積回路の開発アメリカ・ウェスティングハウス社が「Molectronics」という名称の集積回路の概念を発表する
- 1959年集積回路の主要特許アメリカ・インスツルメンツ社のジャック・キルビー、およびフェアチャイルドセミコンダクター社のロバート・ノイス(のちにインテル社を創業)が、それぞれ半導体による集積回路の特許を出願。「キルビー特許紛争」と呼ばれる権益争いの議論が起こる
- 1960年代汎用ロジックICの出現さまざまな種類の電子回路を集積回路によりチップ化した汎用ロジックICが現れる
- 1960年代スイッチング電源方式の開発アメリカのMIT(マサチューセッツ工科大学)がNASA向けのアポロ誘導コンピュータに、スイッチング電源方式を採用する
- 1965年ムーアの法則ロバート・ノイスらとともにインテル社を創業したゴードン・ムーアが、「集積回路上の部品数は毎年2倍の割合で増大しており、今後10年間は同様の増加率をたどるであろう」と見解する論文を発表。その後、「集積回路上のトランジスタ数は1.5年ごとに倍になる」というムーアの法則が有名になる
【回路素子】
- 1781年オームの法則の発見イギリスの物理学者ヘンリー・キャヴェンディッシュが、電位差(電圧)とその間に流れる電流および電気抵抗の関係にかんするオームの法則を発見、1879年にマクスウェルが『ヘンリー・キャヴェンディシュ電気学論文集』として編集出版して公表される
1826年には同法則がドイツの物理学者ゲオルク・オームによって再発見される
- 1947年点接触型トランジスタの発明アメリカ・ベル研究所のジョン・バーディーンとウォルター・ブラッテンが、半導体に関する研究の過程で増幅作用を発見、点接触型トランジスタを発明する
1956年にウィリアム・ショックレーを加えた3名はノーベル物理学賞を受賞する
- 1960年代小型ラジオ・テレビの登場真空管に代わってトランジスタを用いた小型のラジオやテレビが販売される
【計算機】
- 1936年コンピュータのモデルイギリスの数学者アラン・チューリングが、テープに格納されたプログラムを実行する計算機を定義する
- 1937年デジタル回路の概念確立アメリカの電気工学者クロード・シャノンが、MITでの修士論文「継電器及び開閉回路の記号的解析」において、電気回路がブール論理の演算に1対1で対応する(スイッチのON/OFFを真理値に対応させた上で)ことを示す
- 1930年代~40年代電子式計算機の登場弾道計算や暗号解読などの軍事用途として、あるいは学問上の解析用途として、Zuse Z3、アタナソフ&ベリー・コンピュータ、Colossus、ENIACといった電子式計算機が、それまでの電気機械式計算機に代わって登場しはじめる
- 1945年コンピュータ構成の原形ハンガリー出身の数学者ジョン・フォン・ノイマンが、最初器の電子式コンピュータEDVACに関する報告書内で、記憶装置んいプログラムとデータの両方を格納するアーキテクチャを定義する
以降、ほぼすべてのコンピュータがこのアーキテクチャを採用する
- 1947年トランジスタの発明アメリカ・ベル研究所のジョン・バーディーンとウォルター・ブラッテンが、半導体に関する研究の過程で増幅作用を発見、点接触型トランジスタを発明する
1950年代以降、コンピュータの素子がそれまでの真空管からトランジスタへ移行する
- 1951年初の商用コンピュータイギリスの外食・ホテル産業J.Lyons&Company社が、傘下のパン屋の毎週の売り上げ集計をコンピュータによって実施する
- 1959年集積回路(IC)の発明アメリカ・インスツルメンツ社のジャック・キルビー、およびフェアチャイルドセミコンダクター社のロバート・ノイス(のちにインテル社を創業)が、それぞれ半導体による集積回路の特許を出願する
以降、コンピュータの制御・演算装置としてCPUが搭載される
- 1965年最初のHDDアメリカ・IBM社の商用コンピュータ「IBM 305 RAMAC」に、直径60cm長ディスク50枚を重ねて4.8MBの記録容量を備え、大型冷蔵庫2台分の体積をもつ、世界最初のHDDが搭載される
- 1969年インターネットの登場アメリカ国防総省が、インターネットの起源となるARPANETを運用開始する
- 1972年パソコンの概念提唱アメリカの計算機科学者アラン・ケイが、講演「Personal Computer for Children of All Ages」において「パーソナルコンピュータ」という用語を提唱する
- 1990年代Microsoft社製品の台頭アメリカ・Microsoft社のWindows OSや業務アプリケーションMicrosoft Officeが、オフィス用ソフトとしてデファクトスタンダードとなりはじめる
- 1998年Apple社製品の台頭アメリカ・Apple社から、「インターネットのための新世代のパーソナルコンピュータ」と銘打たれたiMacが販売、社会現象となる