この用語のポイント
簡単にいうと…
開放型水車とは
河川落差の水流で、露出した羽根車を回し、その回転運動エネルギーでいろんなことをする古典的な水車
という技術個体です。
かつては揚水や脱穀に、現代では地域のモニュメントとして、あるいは発電機と接続させて小水力発電用途に用いられます。
他の近代的な水車(水力タービン)と異なり、効率を高める外殻(ケージング)に覆われていないため、開放型と呼ばれます。
また、水路を流れる水の重さ(質量+重力)を利用するため、他の反動水車・衝撃水車と並んで、重力水車と呼ばれることがあります。
詳しくいうと…
開放型水車は、もっともスタンダードな水車として、有史以来、アジア・イスラム圏・ヨーロッパなど幅広い地域で利用されてきました。
たとえば揚水(灌漑)用としては、ポンプが利用される以前、右図のように、この開放型水車に水筒を取り付けて、河川から、より位置の高い水道へ水を汲み上げることができます。
こうすることで、より低位置にある町や田んぼへ、位置エネルギーを利用して水を送ることができます(水は基本的に、高位置→低位置の落差があってはじめて水流となり移動できます)。
こうした揚水のほか、その回転運動エネルギーは脱穀や製粉などにも利用されてきました。
そんな長い歴史をもつ開放型水車には、大きくわけて2種類の仕組みがあります。
上掛け水車
上掛け水車は、文字通り、羽根車に対して水流を上側から掛けることで、羽根車を回転させるタイプです。
この場合、羽根車の直径よりも高い落差が必要になります。他方、水流の勢いを受け止めやすいため、必要な流量は次でみる下掛け水車よりも少なくて済みます。
下掛け水車
次に、下掛け水車は、既存の水路にそのまま羽根車を設置するタイプです。羽根車の下側で水流が羽根車を回転させるため、こう呼ばれています。
先ほどみた上掛け水車と比べて、それほど落差のない水路でも利用できます。
上掛け水車は、流量0.2~1.2m3/s、落差2.5~5.5mの環境で、
下掛け水車は、流量1.0~5.0m3/s、落差1.0~2.0mの環境で、
それぞれ設置されることが多いです。
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水車は人類史のなかで大きな役目を果たしつづけてきました。
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つまり…
開放型水車とは
河川落差の水流を、露出した羽根車の上側や下側に当てて回し、その回転運動エネルギーで揚水・脱穀・製粉・小水力発電などを行なう古典的な水車
という技術個体というわけです。
この手の古典的水車を見かけると、牧歌的だと感じるのぅ。つまり、効率面では近代水車に見劣りするが、象徴的なイメージという価値がこの古典的水車には備わっているというわけじゃな。
歴史のツボっぽくいうと…
紀元前2世紀頃 小アジアで発明されたといわれる。
中世以降 ヨーロッパで劇的に普及する。
製粉用途のほか、工業用動力としても用いられはじめる。
19世紀以降 近代的な反動水車・衝動水車に取って代わられる。
<参考文献>(2018/12/08 visited)