この用語のポイント
簡単にいうと…
風車とは
風の勢いを回転運動へ変換する
技術個体です。
風力原動機ともいいます。
詳しくいうと…
風車それ自体は羽根車やそれを支える構造体の部分を指しますが、
羽根車の回転運動を利用する目的や別の器械に応じて、下記のような広い分類がされます。
・製粉用風車
・揚水用風車
・発電用風車
・風向計
一つひとつみてゆきましょう。
製粉用風車
最初の製粉用風車は、風車―回転碾き臼(ひきうす)のセットです。
風の勢いでくるくる回る羽根車の回転運動が、シャフト(軸)や歯車といった伝達機構を経由して、碾き臼をぐるぐる回します。
この回転碾き臼に小麦を入れると、内部ですりつぶされて、隙間から小麦粉がぱらぱら落ちてくるというわけです。
工場のオートメーション化の影響で、現在では観光用の遺物を除いて実用にはほぼ用いられていないようです。
揚水用風車
次に、揚水用(灌漑用)風車です。こちらは風車―ポンプのセットになります。
風の勢いでくるくる回る羽根車と一緒に、クランクシャフト(凸状の軸)のコの字型に曲がった部分が回転し、これに連結されたコネクティングロッド(連接棒)が上下に動きます。
この上下運動を受け取る下部のほうにはポンプがあり、手押しポンプの要領で一方から水を吸い取り、他方へ排水します。
こうすることで、たとえば低地に貯まった雨水や川からの洪水を排水したり(オランダ)、井戸水を田んぼへ供給(灌漑)する(戦前の日本)など、距離や高低差を気にせずに水を容易に移動させることができます。
現在では、ガソリンエンジン駆動ポンプなどの普及で見る機会は稀になりました。
発電用風車
21世紀初頭の現在、もっとも身近な風車はこちら、発電用風車です。
この発電用風車は、羽根車(ブレード)―発電機のセットです。内部構造を詳しくみてみましょう。
発電用風車の内部は主に下記要素から構成されています:
・ブレード
・可変ピッチ機構
…風の勢いに応じてブレードの向きを変え、適正な回転速度を保つ。
・増速器
…ブレードの回転運動の速度を数十倍に増幅するギヤボックス。
・発電機
…発電機。
・風向風力計
…風向きや風力を検知する測定器。
・方位制御機構
…風向計の情報をもとに、風車の向きを垂直軸(ヨー軸)にて回転させる機構。
まずは基本的な機能から説明します。
水平方向からやってくる風の勢いで、ブレードに揚力が生じ、それが風に対して直角方向へ働くようになります。この回転運動が増速器を通じて発電機へと伝えられます。
発電機内部では、この回転運動によって磁石が回り、起電力が生じて、電気がケーブルを通じて取り出されます。
次は、機械的な制御機構について説明します。
風の勢いが強すぎたり、弱すぎたりした場合に、風速計がそれを検知します。可変ピッチ機構が各ブレードの向きを変えます。
この向き変えによって、発生する揚力や回転運動の強弱を細かく制御することができます。
また、風向きというは時々刻々変わるため、風車自体が風向きに応じてその機体の向きを変えることもできます。
風向きは風向計が検知し、その情報をもとに方位制御機構が風車の頭部分をぐるりと回すことがあるのです。よくできていますね。
風速計
さきほどの発電用風車に設置されていたのが、風速計です。
この風速計自体もじつは風車の一種で、左記のお椀型をしたパドル風車などが代表的です。風を受け止めるお椀型羽根車の回転速度に応じて風力を計測します。
このパドル風車の場合、揚力によって回転するこれまでの羽根車やブレードとは異なり、風の勢いをそのお椀の中へ直接受け止めるタイプです。前者を揚力型の風車、後者を抗力型の風車と呼びます。
さらに知りたいなら…
つまり…
風車とは
風の勢いを回転運動へ変換して、それを碾き臼の回転、ポンプを駆動する上下運動、発電機の磁石の回転などに利用する
技術個体というわけです。
発電用風車は、製粉用や揚水用に比べると、隔世の感があるのぉ。それだけ風車の歴史の長さを感じさせてくれるわぃ。
歴史のツボっぽくいうと…
紀元前36世紀頃 エジプトで灌漑用風車が用いられる。
1世紀頃 アレクサンドリアの工学者ヘロンが、
風車を動力とするオルガンを設計する。
10世紀頃 ペルシャで製粉用風車が建造され、
その後十字軍やモンゴル帝国を介してヨーロッパや中国へ広まる。
15世紀頃 オランダの干拓地で揚水用風車が多用されはじめる。
1887年 イギリスのJ.ブライスが発電用風車を発明する。
20世紀前半 日本各地で地下水の揚水用、田んぼへの灌漑用に風車が利用される。
<参考文献>(2018/11/08 visited)