簡単にいうと…
宗教機関とは
信仰を同じくする人々からなる組織
という社会機関です。
信仰は、その共感の連鎖という性質のために、また生活様式・倫理・冠婚葬祭といった社会生活にも深くかかわるために、半ば必然的に集合的性質を伴い、機関化されます。
詳しくいうと…
宗教とは何か?
「宗教」とは、狭義には、世界にまつわるある説明体系に対する、そしてこの説明体系の中へ自己を位置付けることに対する、信仰です。
世界ではキリスト教・イスラム教・ユダヤ教などの一神教や、土着の自然信仰が、
日本では神道/仏教が大勢を占めています。
これら宗教を「たんなる物語じゃないか」と現代人が言ってしまうのは簡単ですが、しかしそれは、あまりにわたしたちの生活様式へ食い込みすぎた物語です。
たとえば、食事の前に手を合わせて「頂きます」と言うとき、結婚式で契りの言葉を述べるとき、死者を追悼するため読経が読まれるとき、わたしたちはそれぞれの思いを込めてそのようにするのですが、もし宗教がなくなれば、これらの思いを表現する体系をわたしたちは失ってしまうことになるでしょう。
ここから、宗教の説明体系とは、それに対する信仰という側面だけでなく、わたしたちの実践的な行動様式の体系をも、数千年かけて形成してきたわけです。
宗教の組織とは何か?
こうして、はじめは各地に点在していた教義が、やがてネットワーク状にある地域・国家を覆うように広まります。儀式や布教の場となる建物が全国各地に造られ、支部が組織され、さらにそれら下部組織を束ねる上位組織が設置されます。
主な宗教の組織関係
以下では、主な宗教のそうした組織関係を、ごく簡単に眺めてみましょう:
神道の組織
神道は、神社という機関を単位として組織されています。
本社で祀っている神を、分霊によって全国各地の分社でも祀るようにすることで、日本全国にネットワークを築いています。
下記例のような約8万近くある全国の神社(本社・分社)は、各都道府県ごとの神社庁によって管理され、さらに上位組織として神社本庁が東京・代々木に置かれています(神社庁・神社本庁はともに宗教法人です)。
主な祭神 | 本社 | 全国の主な分社名 |
天照大御神 | 伊勢神宮(内宮) | 〇〇神明神社 |
八幡神(応神天皇) | 宇佐神宮 | 〇〇八幡宮 |
素戔嗚尊(スサノオノミコト) | 八坂神社・津島神社・氷川神社 | 〇〇八坂神社・〇〇津島神社・〇〇氷川神社 |
建御名方(タケミナカタ) | 諏訪大社 | 〇〇諏訪神社 |
木花咲耶姫(コノハヤサクヤヒメ) | 富士山本宮浅間大社 | 〇〇浅間神社 |
宇迦之御魂(ウカノミタマ)など | 伏見稲荷大社 | 〇〇稲荷神社 |
それぞれの神社には、神主(かんぬし)さんがいて、日々地域の儀式を執り行ったり、神社の管理運営を行なっています。
仏教の組織
仏教は、寺院という機関を単位として組織されています。
全国各地に約7万5000ほどの寺院があり、それぞれの宗派によって教義内容は若干異なります。
宗派ごとに総本山/大本山といった中心寺院はありますが、全宗派を束ねるような上位組織は見当たりません(他方、仏教の普及活動体としては(財)全日本仏教会があります)。
主な宗派 | 主な総本山/大本山 | 全国の寺院名 |
華厳宗 | 東大寺 | 〇〇寺 〇〇院 〇〇山 など
|
法相宗 | 薬師寺、興福寺 | |
律宗 | 唐招提寺 | |
真言宗 | 金剛峯寺、東寺、仁和寺など(真言宗十八本山) | |
天台宗 | 延暦寺 | |
日蓮宗 | 久遠寺など | |
浄土宗 | 知恩院など | |
浄土真宗 | 西本願寺、東本願寺など | |
融通念仏宗 | 大念仏寺 | |
時宗 | 清浄光寺 | |
曹洞宗 | 永平寺、總持寺 | |
臨済宗 | 妙心寺、円覚寺、南禅寺、天龍寺、大徳寺など | |
黄檗宗 | 萬福寺 |
キリスト教の組織
キリスト教は、教会という機関を単位にして組織されています。
23億人という、世界人口の1/3を占めるキリスト教ですが、日本でのキリスト教徒は100万人前後、日本での教会数は5000ほどです。
主なグループ | 主な教派 | 日本での主な教会名 |
西方教会 | カトリック教会 | カトリック〇〇教会、など |
ルター派教会(プロテスタント) | 〇〇ルーテル教会、など | |
アナバプテスト(プロテスタント) | 〇〇バプテスト教会、など | |
聖公会 | 〇〇聖公会、など多様 | |
東方教会 | 正教会 | 〇〇ハリストス正教会、など |
非カルケドン派 | (NO DATA) | |
アッシリア東方教会 | (NO DATA) | |
東方典礼カトリック | (NO DATA) |
キリスト教の教派には、大きく分けて西方教会と東方教会、さらに前者にはカトリックやプロテスタント系の教派が、後者には正教会などの教派があります。
イスラム教の組織
イスラム教は、モスクという機関を単位にして組織されています。
16億人の信徒を抱えるイスラム教ですが、日本では5万人~数十万人程度とみられています。
各都市の各街区や、各村ごとに設けられるモスクでは、礼拝だけでなく、政府の布告を通達する役所、イスラーム法に則る裁判所、読み書きを教える初等学校、近所のひとびとのお悩み相談所、など多様な機能を兼ね備えています。
イスラム教にはおおきく分けて、スンナ派とシーア派という2つの宗派があり、それぞれの中にもさらに別々の宗派に分かれています。
主な宗派 | 日本での主な教会名 | |
スンナ派 | ハンバル学派 | 〇〇モスク |
シャーフィイー学派 | ||
マーリク学派 | ||
ハナフィー学派 | ||
シーア派 | ジャアファル法学派 | |
十二イマーム派 | ||
イスマーイール派 | ||
ザイド派 |
イスラム教には代表的な宗教会議がなく、その教義も国や宗派によってかなり異なるのが特徴です。
以上のように宗教機関は、宗教ごとにおおきく様相は異なるものの、おおむね祭祀や礼拝の場を世界各地に持ち、そこで人々が交流することで、信仰を維持している機関なわけでした。
さらに知りたいなら…
つまり…
宗教機関とは
信仰を同じくする人々からなる組織
という社会機関なわけです。
歴史のツボっぽくいうと…
- ?世紀頃神社の普及古代の日本で、神社や祠が建てられる
- 2世紀頃キリスト教の普及古代ローマ帝国で、キリスト教の組織が普及する
- 6世紀頃仏教の伝来日本の飛鳥時代に、仏教が伝来し、聖徳太子の働きもあり日本全国に普及、以降多くの寺院が各地に建てられる
- 622年最初のモスク現在のサウジアラビアで、ムハンマドらイスラム共同体による最初のモスク「預言者のモスク」が建設され、以降イスラム教の普及とともに各地でモスクが建てられる
- 927年日本全国の神社リスト日本の平安時代に、全国の神社の一覧(2810社)である「延喜式 神明帳」が『延喜式』第九・十巻に収録される
<参考文献>(2020/08/04 visited)