この用語のポイント
簡単にいうと…
光の技術とは
光エネルギーを発生させ、またはその光線を屈折・増幅させて有用な効果を得る
工夫のことです。
英語ではTechnology of lightと書きます。
詳しくいうと…
光に満ちた風景
多くの動物は、明るい時間帯に行動し、暗くなると巣で休息をとります。
これは、視界が利く時間帯に必要な行動をやってしまおうとする適応の結果であり、既存の光を取り集める傾向の一種と考えられます。
太陽光に頼りっきりにならず、自分たちの思うままに光を生み出せたなら、夜だって本が読めますね。最初は火が、次いで電気が、光へと変換されてきました。
また光は、視界を与えてくれるだけでなく、視界に映る像そのものの形をも伝達してくれます。そこで、レンズやプリズムを用いて適切な屈折を介在させれば、小さな星々や微生物も大きく見えることができます。
赤や青や黄のカラーフィルターを光源の前に差し込めば、たくさんの色も表現できます。現実風景の再現もこうして可能になりました。
つまり光とは、行動の空間であり、形の伝達であり、色彩でもあるのです。
逆をいえば、光を上手く発生・操作できたなら、わたしたちは行動の空間を生み出し、形を任意に伝達し、思うままの色彩を表現できます。そして現にそうしてきました。
そうした工夫のポイントは、大きくわけて2つに絞られます:
①光をいかに屈折・検知・記録するか?
⇒集光器の工夫
②光を他E(エネルギー)からいかに変換し、増幅・表示させるか?
⇒輻射器の工夫
①~②の工夫について、一つひとつみてゆきましょう。
集光器
集光器とは、光を屈折・検知・撮影するための素子または装置です。
屈折にはレンズやプリズムが、検知にはフォトダイオードなどが用いられ、その両者を組み合わせて撮影が可能になります。
望遠鏡、顕微鏡、分光器、光ファイバー、カメラなどがこのタイプです。
輻射器
輻射器は、光を他Eから変換する照明、またこの光源を用いて表示・映写・レーダー発振を行なう素子または装置です。
たとえば発光ダイオード(LED)、蛍光灯、白熱電球のほか、液晶ディスプレイ、DLPプロジェクタ、レーダー発振器などがあります。
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つまり…
光の技術とは
光エネルギーを発生させ、またはその光線を屈折・増幅させて有用な効果を得る
工夫のことなのでした。
ちなみに、光エネルギーの物理的な強さ(光子の振動数)が、ホモ・サピエンスの眼球構造にとっての明るさ(ルクス)とは別個の独立した領域であることを理解する必要があるのぅ。
光エネルギーが強いからといって、必ずしもそれが「より明るい」というわけではないんじゃから、そもそも光って何じゃったっけ?と考えてしまうわぃ。
歴史のツボっぽくいうと…
集光器
- 1021年カメラ・オブスキュラの記述イラクの科学者イブン・アル=ハイサムが『光学の書』で、孔・レンズを通して風景を内部のスクリーン上へ投影する装置カメラ・オブスキュラについて記述を残す。
- 1608年ガリレオ式望遠鏡の発明オランダの眼鏡師ハンス・リッペルスハイが、凸レンズ(対物レンズ)と凹レンズ(接眼レンズ)を組み合わせた望遠鏡(オランダ式ないしガリレオ式)を発明する。
- 1609年ガリレオの天文観測イタリアの物理学者・天文学者ガリレオ・ガリレイが、当初軍事用に利用されはじめた望遠鏡(倍率3倍)を夜空に向け、月のクレーターや土星の環、木星周囲の衛星などを観測する。
- 1611年ケプラー式望遠鏡の発明ドイツの天文学者ヨハネス・ケプラーが、対物・接眼レンズ両方に凸レンズを用いた屈折式望遠鏡を発明する。
- 1621年スネルの法則オランダの天文学者・数学者ヴィレブロルト・スネルが、光の屈折に関するスネルの法則を発見した。
- 1656年ホイヘンスの巨大望遠鏡オランダの物理学者・数学者・天文学者クリスティアーン・ホイヘンスが、長さ37mの巨大な空気望遠鏡(筒構造ではなくレンズが他の支持物で固定されたタイプ)を覗いて、土星の衛星タイタンや、火星を観察する。
- 1663年反射式望遠鏡の原理スコットランドの数学者ジェームス・グレゴリーが、2枚の凹レンズを用いた反射式望遠鏡の原理を発表する。
- 1668年反射式望遠鏡の実機イングランドの数学者・物理学者アイザック・ニュートンが、反射式望遠鏡の試作機を発明する。
- 1729年色収差の改善イギリスの法律家・発明チェスター・ムーア・ホールが、屈折率の異なる2種類のガラス材から対物レンズを作成。色収差(屈折時の色ズレ)を改善する。
- 1824年頃写真機の発明フランスの発明家ジョゼフ・ニセフォール・ニエプスが、鉛と錫の合金板を用いた世界初の写真機を撮影する。
- 1836年実用的写真機の発明フランスの写真家ルイ・ジャック・マンデ・ダゲールとニエプスが、銅板を銀で被覆し、感度を上げるためヨウ素蒸気に晒したプレートを用いて、実用的な写真機を発明する。
- 1839年光起電力効果の発見フランスの物理学者ベクレルが、薄い塩化銀で覆われた白銀の電極を電解液に浸したものに、光を照射すると、電流が生じる現象を発見する。
- 1887年一般的な光電効果の発見ドイツの物理学者ヘルツが、紫外線の照射により、帯電した物体がその電荷を容易に失うという光電効果を発見する。
- 1880年音声を光に乗せてスコットランド生まれの工学者グラハム・ベルが、音声を可視光線の信号に乗せて通信するPhoto-Phone実験を行なう。
- 1888年一般向け写真機の販売アメリカの発明家ジョージ・イーストマンが、安価な写真機「No.1コダック」を販売する。
- 1905年光電効果の理論的説明物理学者アインシュタインが、論文「光の発生と変換に関する1つの発見的な見地について」において光量子仮説を発表し、光子と電子の相互作用という説明によって光電効果が理論づけられる。
- 1925年画像を光に乗せてスコットランドの電気技術者ジョン・ロジー・ベアードが、画像をパイプ/ロッド内の光伝送路を介して通信する特許を出願する。
- 1930年光ファイバーの試みドイツのハインリッヒ・ラムが、ガラス繊維の束の中に光を導く実験を行なう。
- 1932年天体からの電波を発見アメリカ・ベル研究所の物理学者・無線技術者カール・ジャンスキーが、天体が電波を発することを発見する。
- 1940年電波望遠鏡の発明アメリカの天文学者グロート・レーバーが、自宅の庭に世界初となる電波望遠鏡を建造する。
- 1954年太陽電池の開発アメリカ・ベル研究所のダリル・シャピン、カルビン・フラー、ゲラルド・ピアーソンが、pn接合を用いた太陽電池を開発、現在の太陽電池の原形となる。
- 1958年光ファイバーの確立インド生まれの物理学者ナリンダ―・シン・カパニーが、異なる屈折率のガラス(コア/クラッド)を用いた光伝送媒体を考案、光ファイバーの基礎を確立するとともに、このとき初めて「光ファイバー(Optical Fiber)」と名付けられる。
- 1965年実用化への提言上海生まれの物理学者チャールズ・K・カオが、ガラスの不純物濃度を下げれば光の損失が低減でき実用化できる旨の論文を発表する。
- 1970年実用化への第一歩アメリカのコーニング社が、カオの提言通りの損失率内を達成する光ファイバーの特許を取得する。
- 1975年デジタルカメラの発明イーストマン・コダック社の技術者スティーブ・サッソンが、世界初のデジタルカメラを発明する。
- 1985年日本での実用化日本で北海道-鹿児島間をつなぐ日本縦貫光ファイバーケーブル網がISDN構想のなかで整備される。
輻射器
- 1888年液晶物質の発見オーストリアの植物学者F.ライニッツァーらが、コレステロールと安息香酸のエステル化合物である結晶を加熱すると液体状になること(サーモトロピック液晶)を発見する。
- 1906年LEDの予感イギリスの工学者ヘンリー・ジョセフ・ラウンドが、炭化ケイ素(SiC)の塊に電流を流すと黄色く発光することを確認する。
- 1917年レーザー理論の確立ドイツ生まれの物理学者アルベルト・アインシュタインが、論文「放射の量子論について」を発表、レーザーの理論的基礎を確立する。
- 1950年光ポンピング法の提案フランスの物理学者アルフレッド・カストレルが、原子・電子を励起状態にする光ポンピング法を提案する。
- 1958年レーザーの特許出願アメリカ・ベル研究所の物理学者チャールズ・タウンとアーサー・ショウロウが、レーザー(当時は光学メーザーと呼ばれていた)を研究し、特許を出願する。
- 1959年「レーザー」の登場コロンビア大学の大学院生ゴードン・グールドが、論文「レーザー―輻射の誘導放出による光の増幅―」を発表、レーザーという言葉を公で初めて用いる。
- 1960年レーザー発振器の開発アメリカ・ヒューズ研究所の物理学者セオドア・メイマンが、最初のレーザー発生装置を開発する。
- 1962年動的散乱効果の特許アメリカRCA社のウィリアムズが、電圧をかけると液晶が光を散乱する現象(動的散乱効果)にかんする特許を出願する。
- 1962年LEDの開発アメリカのゼネラル・エレクトリック社の研究者ニック・ホロニアックが、赤色LEDを開発する。翌年、同氏は「LEDがトーマス・エジソンの白熱電球を置き換えるだろう」と予言。
- 1968年動的散乱効果の実用化アメリカRCA社のハイルマイアーが、動的散乱効果を利用して、室温下でも安定的に存在できるネマティック液晶を用いたディスプレイを試作する。
- 1970年代各色LEDが登場赤・黄・橙・黄緑などの各色LEDが開発される。
- 1973年液晶電卓の登場日本のシャープ社が、液晶表示装置を搭載した電池駆動式電卓EL-805を開発する。
- 1984年液晶テレビの登場日本のエプソン社が、液晶カラーテレビET-10を販売する。
- 1986年高輝度青色LEDの先駆け日本の工学者 赤崎勇、天野浩らが、青色発光に必要な窒素ガリウム(GaN)の単結晶化に成功する。
- 1987年DMDの発明アメリカのテキサス・インスツルメンツ社のラリー・ホーンベックがDMDを発明する。
- 1993年高輝度青色LEDの開発日本の工学者 中村修二が高輝度青色LEDを開発する。
- 2000年代携帯端末の発展携帯電話、PDA(携帯情報端末)、携帯音楽プレイヤーなど小型電子機器で幅広く液晶ディスプレイが搭載される。
<参考文献>(2019/08/14 visited)