簡単にいうと…
変圧器とは
電気の電圧を上げたり下げたりする
技術要素です。
変成器、トランスとも呼ばれます。
詳しくいうと…
変圧器は、発電所の高圧電流を、家庭や工場向けに低圧化する際などに用いられます。
ここでは電柱の上によく見かけるバケツのような、柱上変圧器を例に説明します。
ただ、どの変圧器でも仕組みはだいたい同じです。
構造
左図は柱上変圧器の中身です。輪っか状の鉄心の左端には、発電所や変電所から伸びてきた高圧電流の走る電線/コイルが、右端には、これから家庭や工場へ向かうことになるコイル/電線が張られています。
バケツの中は電気を周囲へ漏らさないよう油で満たされており、外周には熱を逃がす放熱フィンが取り付けられています。
仕組み①:片方のコイルに電流が流れると…
まず、左側の電線から高圧の電流が流れ、コイル上を走ります。
すると電磁誘導により、コイルが巻き付いている鉄心上にそのつど磁束(磁界)が生じます。
また、ほとんどの発電所は交流電流を送配電しています。そのため、電線/コイル上の電流および鉄心上の磁束は、その向きがつねに反転し続けます。
仕組み②:もう片方のコイルに電流が流れて…
次に、鉄心の磁束が反転し続けることで、同じく電磁誘導により、今度は低圧側のコイルに誘導電流が生じます。
この際、両端のコイルの巻き数の比にもとづき、誘導電流の電圧が元の電流から変化します。
左図の例では、左側のコイルが巻き数6、右側のコイルが巻き数3のため、$\frac{3}{6}=\frac{1}{2}$となり、電圧は$\frac{1}{2}$へと降圧されます。
仕組み③:電圧が変化する!
この電圧変化についてもうすこし具体的に見てみましょう。
たとえば、高圧側コイルとそこを流れてくる電気、および低圧側コイルの巻き数が左図の条件を取る場合について考えます。
このとき、低圧側コイル/電線に生じる電圧(V:ボルト)は、$\frac{1}{66}$となり、一般家庭でも使える100Vへと降圧されます。
ちなみに上記の想定(低圧側コイル巻き数:1)は説明の便宜上のものです。巻き数がたった1巻きしかないコイルなど実際使われているのでしょうか…?
このようにして変圧器は、2つのコイルと1つの鉄心を用いて電磁誘導を2度行なうことで(電流A→(電磁誘導)→磁束変化→(電磁誘導)→電流B)、両端コイルの巻き数に応じて昇圧したり降圧したりできます。
そして発電所→変電所(変圧器)→家庭・工場という、発電地と消費地の電圧が大きく異なる現代の商用電源網において、変圧器は両者の仲介をなす無くてはならない重要な働きを担っているのでした。
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つまり…
変圧器とは
電磁誘導を利用して、電気の電圧を上げたり下げたりする
技術要素なわけです。
うむ、バケツにしか見えんのぉ。
歴史のツボっぽくいうと…
- 1831年電磁誘導の発見イギリスの物理学者マイケル・ファラデーが、電磁誘導の法則を発見する
- 1836年変圧器の発明アイルランドの牧師ニコラス・カランが一次コイルと二次コイルからなる誘導コイルを発明し、変圧器として広く用いられる
- 1880年代交流電流のメジャー化アメリカの電力事業黎明期に、交流電流の電力システムが主流となる
発電所-電力消費地の全体を同一電圧で設計するエジソン含めた直流支持者に対して、高圧輸送による低い送電損失を掲げるテスラ含めた交流支持者が勝つことにより、高圧輸送後の降圧の必要性から、その後に変圧器の開発が進んでゆく
- 1885年効率的な変圧器の発明ブダペストの技術者ジペルノウスキー、ブラーティおよびデーリが、環状鉄心を含むZBD式の鉄心モデルを開発する
同年、アメリカの実業家ジョージ・ウェスティングハウスが、ZBD式鉄心モデルの特許を購入、商用化させる
<参考文献>(2019/08/23 visited)