この用語のポイント
簡単にいうと…
スターリングエンジンとは
外燃エンジンの一種で、シリンダ外部から加熱・冷却することで、シリンダ容積内を膨張・圧縮する
技術個体です。
「スターリング」とは、発明者であるロバート・スターリングの名にちなんでいます。
静穏性が売りですが、熱効率を維持するには構造の複雑化と大型化が必要で、実装されるケースは稀です。
詳しくいうと…
スターリングエンジンにはいくつか形態がありますが、ここでは「2ピストン型」で図解します。
構造
この2ピストン型スターリングエンジンは、下図のような構造をとります:
・膨張ピストン/シリンダー
…加熱・膨張して下方向へ仕事します。
・圧縮ピストン/シリンダー
…冷却・圧縮して上方向へ仕事します。
…上下方向の仕事により回転しつづけ、シャフトを回します。なお膨張/圧縮の各ピストンは、90℃~120℃の角度分、ずれて配置されています。
・流路
…圧縮シリンダー内の冷えたガスが、膨張シリンダー内へ向かうための経路です。
・放熱ヒレ
…シリンダー内の熱を、放熱面積を広げることで外部へ効率よく放出します。
行程①:加熱
まず、膨張シリンダーが外部から加熱されます。この加熱直後の時点で、ピストンが気体の体積膨張により下方向へ下がりはじめます。
行程②:膨張
次に、膨張がさらにつづくことで、膨張シリンダー内のピストンはさらに下方向へ下がりつづけます。
他方、フライホイール/シャフトの回転も進むことで、連動している圧縮ピストンもここでようやく下方向へ下がりはじめました。
行程③:冷却
続いて、このタイミングで圧縮シリンダーが外部から冷やされます。
この冷却されたガスは、流路をたどって膨張シリンダーにも流れ込みます。
両ピストンは、フライホイール/シャフトの回転運動に沿ってそれぞれ少しずつ移動しているところです。
行程④:圧縮
先ほどの冷却効果が現れ、両ピストンは体積縮小する上方向へと導かれます。
こうしてスターリングエンジンの2つのピストンは、それぞれズレつつフライホイールの回転運動によって上方向や下方向へ移動しながら、(加熱)→体積膨張→(冷却)→体積縮小という行程の循環にしたがい、フライホイールに仕事を与えつづけます。
メリット/デメリット
このスターリングエンジンのメリットとして、他の内燃機関とは異なり爆発を必要としないため、静かに駆動する点が挙げられます。
また、高温・低温でありさえすれば、加熱源・冷却源の種類は問いません。このため、たとえば発電所などで、他エンジンの排熱を利用してスターリングエンジンの加熱源にすることなどが考えられます。
たとえば、熱々のティーカップでスターリングエンジンを動かす下記動画を参照ください(リンク切れてたらすみません):
デメリットとしては、この加熱がシリンダー外部からなされるため、熱が、シリンダー以外の外部空気中にも放出されてしまい、エネルギーがしばしば無駄になる、という点が挙げられます。
このエネルギーロスを抑えるには複雑な構造が必要とされ、装置の大型化を招くという欠点もあります。
現代の実用例としては、冷却源に海水を利用できる船舶(とくに静穏性の求められる潜水艦)ですこし実装されているほか、サイクルを逆にさせたスターリング冷凍機として極低温冷却向けに利用されています。
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スターリングエンジンについてはあまり記載がなさそうではありますが、エンジンの基本をしっかり学びたい方はぜひご覧ください。本の目次はこちらのサイトをご覧ください。
つまり…
スターリングエンジンとは
外部から加熱・冷却することでシリンダー内のピストンを押したり引いたりする
技術個体というわけです。
加熱用・冷却用の2つのピストンを、連動させて駆動するというのは、たいした工夫じゃな!
歴史のツボっぽくいうと…
1816年 スコットランドの牧師ロバート・スターリングが
スターリングエンジンを発明する。
20世紀中頃 オランダのフィリップス社が、スターリングエンジンを研究する。
1995年 スウェーデンの一部潜水艦にスターリングエンジンが実装される。
2003年 日本の一部潜水艦にスターリングエンジンが実装される。
<参考文献>(2018/09/22 visited)