簡単にいうと…
樹脂とは
樹皮から分泌される樹液が固まった物質、またそれらと性質の似通った物質
という自然加工物です。
詳しくいうと…
樹脂とは、いくつかの有機物質から構成され、水に溶けない一方で油には溶け、多くの場合、加熱すると液体になり常温付近だと固化する、そんな物質のことを指します。
この樹脂には、大別して天然樹脂と合成樹脂があります。1つひとつ見てゆきましょう。
天然樹脂
天然樹脂は、「樹脂」という名前の通り、樹木の分泌物(樹液)が固まった物質です。
あまり身近に感じないかもしれませんが、弦楽器の弦(つる)に塗る塗布材や野球の滑り止めバッグ、テレピン油という油絵具の溶剤などに広く用いられる松脂(まつやに)をはじめ、漆、琥珀、天然ゴム、乳香なども樹脂の一種です。
たとえば松脂は、右図の通り、松の樹皮をはがした幹に、矢状の溝をつけることで採取されています。
また、植物だけでなく動物の分泌物として、似たような性質を備える物質も樹脂と呼ばれることがあります。カイガラムシの殻をつくる分泌物であるシェラックのほか、膠(にかわ)や鼈甲(べっこう)も樹脂の一種と見なされる場合があります。
これに加えて、鉱物の分泌物のうち、植物・動物樹脂に近い性質を持つ物質―アスファルトやタール―も樹脂と呼ばれることがあります。幅広いですね。
合成樹脂
合成樹脂は、化学反応によって作成された、天然樹脂とよく似た性質を示す物質全般のことを指します。多くの場合、おなじく有機物質である原油(とりわけ原油から精製されるナフサ)が主原料です。
合成樹脂は便利なのでたくさんの種類が開発されてきました。一例として、フェノール樹脂やポリウレタン、ポリエチレンやポリ塩化ビニルなどがあります。
たとえばポリエチレンは、原油から抽出されたエチレンガスを、溶剤・触媒と一緒にして重合反応器内で高温・高圧環境下に置かれることで製造されます。
こうした過程により、重合体(ポリマー)と呼ばれる、1単位の分子がたくさん連鎖する高分子物質ができあがります。合成樹脂の多くはこの重合体の構造をとっています。
以上のように樹脂は、樹木・動物・鉱物から分泌されたり、化学反応によって製造される、有機物質の一種を指します。こうした樹脂のうち、前者の天然樹脂は滑り止めや研磨剤、接着剤や漢方薬などに、そして後者の合成樹脂は素材一般として、今日もわたしたちの生活に広く浸透しているのでした。
さらに知りたいなら…
次の一文からはじまるミステリ小説です。興味をもたれたらこちらの書評もお読みください。
「お父さんがおばあちゃんを殺したとき、白い部屋は真っ暗だった。私もその場にいた。カールもいたのに、お父さんもおばあちゃんも全然気づいていなかった。」
つまり…
樹脂とは
樹皮から分泌される樹液が固まった物質、またそれらと性質の似通った物質
という自然加工物なわけです。
「樹脂」とひとことで言っても、かなり範囲が広いのぉ。液体状態下で粘り気をもち、不溶性じゃが油には溶ける、そんな有機物質全般をほとんど指していそうじゃのぅ。
じゃが、天然樹脂と合成樹脂は、そんな性質がたまたま似ているだけで、まったく別種の物質のようじゃがなぁ。後者が樹脂と呼ばれているのは、そのほうが我々にとって馴染みやすいからじゃろうか?
歴史のツボっぽくいうと…
- 紀元前40世紀頃乳香の利用エジプトの墳墓で、香料として用いられる乳香(ムクロジ目カンラン科ボスウェリア属の樹木から取れる樹脂)が発見される
- 紀元前15~13世紀頃没薬の記述旧約聖書『出エジプト記』に、聖書を清めるための香の調合材として、没薬(ムクロジ目カンラン科コンミフォラ属の樹木から取れる樹脂)が記述される
- 1835年合成樹脂の発見ドイツの化学者ユストゥス・フォン・リービッヒとアンリ・ヴィクトル・ルニョーが、有機物の一種で単量体(モノマー)である塩化ビニルを発見する
- 1870年合成樹脂の商業化アメリカの発明家ジョン・ウェズリー・ハイアットが、象牙に代わるビリヤード球の原料として、合成樹脂の一種であるセルロイドを実用化する
<参考文献>(2019/12/07 visited)