この用語のポイント
簡単にいうと…
ターボファンエンジンとは
ターボジェットエンジンの前方に回転ファンのついた
技術個体です。後方についてるやつもあるみたいです。
ファンの回転により、燃焼ガスだけでなく空気もたくさん吸気・排気することで、ターボジェットエンジンよりも速度の調整を容易にしています。
詳しくいうと…
旅客機の翼に垂れ下がっているあの円筒がターボファンエンジンです。
あれの中身をのぞいてみましょう。
左図の左側から数えて、
行程①:吸気(ファン)
行程②:圧縮(圧縮機)
行程③:燃焼・膨張(燃焼室・タービン)
行程④:排気(排気ノズル)
という4行程をたどります。
行程①:吸気
まず吸気です。
機体とエンジンの進行方向からやってくる空気流を、回転ファンがたくさん取り込みます。
ファンを通過した空気流はその後二手に分かれます。圧縮機へ送られる部分と、そのまま加速されて外殻内部を通り抜けてゆく部分へのルート分岐です。
以下では、前者の圧縮機へ送られる空気流の行方をしばらく見てゆきます。
行程②:圧縮
次に圧縮行程です。
ファン側からやって来た空気流は、タービン状の圧縮機の、幾重にも連なる回転によって、高圧状態になります。
はい、なりました。
行程③:燃焼・膨張
次は燃焼・膨張の行程です。
ぎゅっと圧縮された熱々の空気流は、気化燃料と混合され、点火プラグのスパークにより燃え上がります。
燃え盛る火炎流は、そのままガスタービンの回転翼を勢いよく回します。
また、このガスタービンの回転運動が前方のファンをひきつづき回転させます。
行程④:排気
最後に、排気です。
車のエンジンなどとは事情が異なり、航空機の排気行程は、機体を前進させる推進力ともなる重要なパートです。
燃焼後のガスが、ノズルを通って後方へと排出されます。
また同時に、ファンからそのまま通り抜けて(バイパスされて)きた空気流が、この燃焼ガス流へと合流し、一緒になってすごい勢いで出てゆきます。図にするとこんな感じです:
→空気流(低温低圧)→
←<推進力> ⇒燃焼ガス(高温高圧)⇒
→空気流(低温低圧)→
この、燃焼ガスと空気流の比率をバイパス比といいます。
バイパス比が高い(バイパス空気流が高比率)構造だと、速度がよく中和され、低速飛行に向いており、
バイパス比が低い(バイパス空気流が低比率)構造だと、高速飛行に向いています。
このターボファンエンジンに対し、ターボジェットエンジンはファンが付いておらず、燃焼ガスのみの推進となるため、大変に高速となり、燃料を大量に消費してしまうデメリットがあります。
このため、ファンが付き、空気流によって速度を比較的低速にできるターボファンエンジンは燃費がよいため、民間航空機で広く普及しています。
推力 = エンジン通過空気の質量 × (排気ガスの速度-機体の速度)
+ (噴出空気の圧力-大気圧)×排気ノズルの面積
このことから、燃焼ガスの噴出速度を、低速の空気流によって中和することで、推進力をほどよく調整できることがわかります。
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つまり…
ターボファンエンジンとは
回転ファンとその空気流(低温低圧)によって、そのまま噴出させると過高速になる燃焼ガス(高温高圧)の速度をうまく調整できる航空機用エンジン
という技術個体です。
一概に速すぎてもだめなんじゃなぁ。
実際、ファンのないターボジェットエンジンのほうでは、燃料の問題だけでなく、音速を超えた場合の空力の変化(音の壁)や大気の断熱圧縮(熱の壁)などさまざまな課題が待ち受けていると聞くが、エンジン出力を低速にすることでそれら課題を回避するのじゃな。
歴史のツボっぽくいうと…
1960年代 ターボファンエンジンが開発される。
<参考文献>(2018/09/05 visited)