この用語のポイント
簡単にいうと…
車輪/タイヤとは
軸に取り付けられ地面との摩擦で回転移動する、円形の物体
という技術要素です。
詳しくいうと…
重い荷物を、人力や畜力に頼らず移動させるには、荷物を抱えた車体と、地面とのあいだに、車体をスムーズに水平移動させる何らかの仕組みを挟み込む必要があります。
このうち車輪/タイヤは、地面との摩擦により回転することで車体を水平移動させる、代表的な仕組みです。
木製車輪
紀元前5千年ほど前の中東エリアで、車輪は発明されました。
そのきっかけになったのは、コロという、重い建築石材を移動させるために下へ敷き詰める丸太。それから、陶芸で使われる丸い轆轤(ろくろ)台でした。
車輪は、当初は木の板を継ぎ合わせただけの、強度の弱い木製車輪でしたが、それでも人間が引き摺るのに比べて、重い荷物を素早く移動させるのに大変な威力を発揮します。
なお、車輪が地面と接する部分(トレッドといいます)に、獣の皮革を釘で打ち付け、地面との摩擦をより強めて、動力の運動エネルギーを少ないロスで車輪の回転運動へ伝えようとする工夫が、当時すでにみられます。
鉄製車輪
紀元前2千年前にはスポークが、そして紀元前8世紀以降の古代ローマ帝国では道路の舗装(ローマへの道)と併せて鉄製車輪が登場します。
車輪のトレッド部分に鉄がはめ込まれ、スポークが軸とトレッドとを結ぶことで、より高い強度が得られます。
また、車輪の潜在能力は、人力などよりもずっと強力な、馬・牛などの畜力によって発揮されますが、高速で使用されても自己破壊してしまわないよう、鉄製車輪はその鉄の覆いによって保護されているのです。
ゴムタイヤ
19世紀に入ると、それまで地面との摩擦を支えていたトレッド部分が、皮革や鉄ではなく、ゴムによって覆われるようになります。
そして次第に、空気入りゴムタイヤが登場します。
それまでの車輪では、せいぜい時速30km/hしか出せませんでした。空気式ではないゴムタイヤが用いられた第一次大戦時の戦車でさえ、それ以上の速度を出すとタイヤが焼け焦げてしまうほどです。
空気入りゴムタイヤは、高圧空気を地面とのクッションにすることで、耐久性・安定性・乗り心地がそれまでの車輪/タイヤと比べて大変良く、19世紀末の時点では時速60km/hが限界だったのが、次第に100km/hや200km/hなどの高速で走れるようになりました。21世紀初頭現在、車輪はほとんど用いられず、この空気入りゴムタイヤが普及しています。
上記のように、車輪/タイヤの歴史は、ホモ・サピエンスの移動・輸送能力と共に展開し、わたしたちの日頃の陸上輸送を、地面とのその摩擦折衝によって支えているわけです。
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つまり…
車輪/タイヤとは
軸に取り付けられ地面との摩擦で回転移動する、円形の物体
という技術要素なわけです。
当たり前の部品すぎて、それの無かった時代のことなど思いもよらんのぉ。というか、空気入りゴムタイヤが発明される19世紀末まで、自動車は時速30km/hの速度までしか出せんかったのか……時速60km/hの馬のほうが速いわい。
歴史のツボっぽくいうと…
紀元前5000年頃 古代メソポタミアで車輪が用いられたとされる。
紀元前2500年頃 古代メソポタミアで、ロバに牽かせた車輪付き戦車が用いられる。
紀元前2000年頃 中央アジア地方で、スポーク付き車輪が用いられる。
1845年 イギリスの発明家ロバート・ウィリアム・トムソンが
空気入りゴムタイヤの特許を取得する。
1867年 車輪の外周(トレッド)がゴムで覆われ始める。
1888年 イングランドの獣医師ジョン・ボイド・ダンロップが
自転車用の空気入りゴムタイヤを発明する。
1895年 フランスのミシュラン兄弟が
自動車用の空気入りゴムタイヤを発明し、競技レースに出場する。
<参考文献>