簡単にいうと…
合金とは
複数の元素を混ぜ合わせて強力になった金属
という自然加工物です。
詳しくいうと…
合金とは?
わたしたちの生活の多くの部分は、金属によって成り立っています。
鉄がなければ刃物が作れなくて切断作業ができず、鉄骨もないので高層ビルなど建てられません。銅がなければ電線やLANケーブルが作れず、電気供給や通信インフラが維持できなくなります。窓枠、ドアの取っ手、ガスコンロの五徳、チャックのファスナー、ベルトのバックルなどの素材が、金属でなくなって、例えば木材や石材へ逆戻りすることなど、いまでは想像すらできません。
これら身の回りの金属製品のほとんどすべては、純粋な金属元素―鉄(Fe)や銅(Cu)など―ではなく、複数の元素が混ざり合った合金です。
合金の作り方
合金において複数の金属元素・非金属元素は、完全に混ざり合っていたり(固溶体)、互いの微細結晶がそのままに混ざっていたり(共晶)、化学反応によって一部が混ざっていたりします(金属間化合物)。
合金の作り方として、ステンレス鋼を例に挙げてみましょう。
ステンレス鋼を作るには、まず電気炉へ材料を投げ込みます。鉄やスクラップ片(Fe, C)に、フェロクロム(Cr)やフェロムニッケル(Ni)などの金属を加えます。
電気炉の蓋を閉じて、電極から放電させてこれら金属同士を溶かし合います。
再び蓋を開けるときには、鉄やクロム、ニッケルの合金であるステンレス鋼が融解状態になっている、という具合です。
合金化の方法には、この溶融法以外にも、金属粉末をじっくり加熱してベース金属に混ぜ込ませる焼結法、電流を介して金属表面に別の金属元素を化学反応で生み出すメッキ法、異なる金属粉末を単純に混ぜ合わせるメカニカルアロイング法などがあります。
合金化の目的
天然鉱石をそのまま溶かして、あるいはそこから純粋な金属元素を抽出して用いるのではなく、別ルートで採掘・精錬された他の金属とわざわざ混ぜ合わせる目的として、下記が挙げられます:
・強度の改善
・耐食性の向上
・磁性、熱膨張率の制御
・融点の低下
つまり、ある金属元素の欠点を他の金属元素の長所で互いに埋め合わせることで、丈夫で、人間にとって役に立つ性質が高品質で、熱加工が容易になる、というメリットが合金化にはあります。
合金の種類
これまで人間は、有史以来、数多くの合金を研究・開発してきました。
合金の一般名称は、基本的にはベースになる金属名称が用いられます。たとえば鉄が主体で、他の元素が数%~数十%くらい添加される合金なら「鉄合金」と呼ばれる、といった具合です。また、ベース金属+添加元素を両方用いて、「鉄-マンガン合金」などと呼ばれるケースもあります。
前者の表現に従うと、代表的な合金の種類として以下が挙げられます:
・鉄合金
・合金鋼
・銅合金
・アルミ合金
・ニッケル合金
・マグネシウム合金
・コバルト合金
このうち、鋼はこうした名称分類の中では少々曖昧な位置にいます。鋼はもともと、鉄(Fe)に数%の炭素(C)を加えて耐久性を増した鉄合金で、紀元前の文明の昔から人類にとって最も重要な金属と見なされてきました。
ただ、その歴史的な特異性と重要性のゆえに、たんなる鉄合金というより「鋼」というひとつの金属カテゴリーへと格上げされており、このため鋼(鉄合金)に別の元素を混ぜ合わせたものは、鉄合金ではなく「合金鋼(ごうきんこう)」ないし特殊鋼と呼ばれるに至っています。
ちなみに先ほど図示したステンレス鋼も、この合金鋼の一種で、鋼(Fe, C)にクロム(Cr)やニッケル(Ni)を添加した合金です。
以上のように合金は、複数の元素を混ぜ合わせることで性質を強化することで、今日もわたしたちの生活を支えてくれているのでした。
さらに知りたいなら…
つまり…
合金とは
複数の元素を混ぜ合わせて強力になった金属
という自然加工物なわけです。
金属加工の歴史における重要なステップとして、(1)天然鉱石を高温加熱して純粋な金属元素を抽出する(精錬)、(2)こうして得られた純粋金属に別の元素を添加して強化する(合金化)、という点が挙げられるぞぃ。
歴史のツボっぽくいうと…
- 紀元前8700年前頃金属の利用メソポタミア地方で、紀元前8700年前頃の純銅製ペンダントが出土される
- 紀元前5500年前頃精錬の開始ペルシャで、銅鉱石を加熱して銅元素を抽出する精錬が行なわれる
- 紀元前3600年前頃銅合金の発明メソポタミア地方で、銅-錫合金(青銅)が発明される
- 紀元前2500年前頃製鉄の普及アナトリア半島(現在のトルコ周辺地域)で製鉄技術が普及する
- 紀元前1400年前頃鉄合金の発明ヒッタイト帝国(現在のトルコ周辺地域)で、鉄に炭を添加した鉄合金(鋼)が発明される
<参考文献>(2019/12/01 visited)