この用語のポイント
簡単にいうと…
二段燃焼サイクルとは
液体燃料ロケットエンジン内で、液体燃料・酸化剤を送り出すターボポンプを、副燃焼によるタービン回転によって稼働させる
技術原理です。
詳しくいうと…
下図は、液体燃料ロケットです。
でっぷり太ってます。
このうち、二段燃焼サイクルを実装したエンジンには下記要素が含まれています:
・ターボポンプ …燃料・酸化剤を主燃焼室などへ送り出す。
・タービン …シャフトを通じてターボポンプと連動する。
・副燃焼室 …タービン回転のための燃焼室。
・主燃焼室 …推進力を得るための燃焼室。
これら要素からなる二段燃焼サイクルについて、順を追ってみてゆきましょう。
①液体燃料・酸化剤のタンク→主/副燃焼室へ
まず、二つあるタンクから、液体燃料と酸化剤それぞれを少量引き出します。
そして左図のように、それらが主燃焼室と副燃焼室へ送られます。
次に、後者の副燃焼室から先のプロセスをみてみましょう。
②副燃焼室→タービン→主燃焼室へ
送られた液化燃料と酸化剤は、副燃焼室というところで、早くも燃焼反応を起こします。
このとき生じた燃焼ガス流が、タービンを通り抜けます。タービンはくるくると高速回転しはじめます。
なお、副燃焼室・タービン通過後の燃焼ガスは、そのまま主燃焼室へ入ってゆき、メインの燃焼用に再利用されます。
③タービン(シャフト)→ターボポンプへ
さてこのタービン、シャフト(軸)を通じて両脇のターボポンプと連動していました。
さきほどタービンが回りはじめましたが、この回転運動がシャフトを回し、シャフトがターボポンプ×2台にもその運動を伝えます。
ターボポンプは、やってきたこの回転運動を利用して、左図のように、二つのタンクから液体燃料と酸化剤をたくさん汲み出すことができるようになります。このときはじめてポンプとして稼働するわけです。
この副燃焼室-タービン-シャフト-ターボポンプの連携プレーにより、主燃焼室で、たくさん送り出された液体燃料と酸化剤が膨大な燃焼反応を起こすことができるようになり、ロケットは無事飛ぶことができます。
バッテリー電源だけでまかなうには(たぶん)ちと多い運動量なので、この二段燃焼サイクルのような、ポンプ稼働のためのひと工夫が求められるのだと思われます。
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二段燃焼サイクルについてはあまり記載がなさそうではありますが、エンジンの基本をしっかり学びたい方はぜひご覧ください。本の目次はこちらのサイトをご覧ください。
つまり…
二段燃焼サイクルとは
液体燃料ロケットエンジン内で、副燃焼室での燃焼ガス流(そのあと主燃焼室で再利用される)を利用してターボポンプを稼働させる
技術原理というわけです。
副燃焼室と主燃焼室の二段構えだから、「二段」燃焼サイクルというわけじゃな。副燃焼室でのガスが再利用されるのは上手い工夫じゃのう。
歴史のツボっぽくいうと…
1949年 ソ連の技術者イザレフが、
はじめて二段燃焼サイクルのロケットエンジンを開発する。
<参考文献>(2018/09/15 visited)