この用語のポイント
簡単にいうと…
流体機械とは
流体(液体や気体)の諸エネルギーと、機械の運動エネルギーとの間で、エネルギー変換を行なう装置
という技術個体・技術要素の総称です。
詳しくいうと…
ホモ・サピエンスは、流体とともに生きてきました。
海の水面にボートを、次いで帆舟やスクリューエンジン搭載艦船を浮かべたり、新しい水路を築いてポンプで灌漑し、肥沃な土地をつくります。すでにあった河川に木製水車を設置しますが、やがて人工的な貯水池を山中に造り、そんなダムの麓に近代水力タービンが置かれ、現代わたしたちがそのもとで暮らす電気生活を支えています。産業革命時代には熱せられた水である蒸気エンジンが機関車を駆動しました。
流体は、動きの予測が掴みづらいですが、大きなエネルギーをその運動の内に蓄えており、機械など固体との運動関係が明らかになるにつれ、流体のエネルギーがホモ・サピエンスに恩恵を与えるようになります。
そんな流体機械は、エネルギー(以下E)変換のタイプに応じて、大まかに下記のような分類ができます:
・原動機(流体E→機械E)
・被動機(機械E→流体E)
・伝動機(機械E→流体E→機械E)
(流体E→機械E→流体E)
どんな技術個体が流体機械の上記カテゴリにあてはまるのか、以下に列挙します。
原動機
流体E→機械E
液体を利用するもの
◆水車(水力タービン)
…水流(@河川・水路)の位置Eから生じる圧力E・運動Eを、羽根車経由で回転運動Eへ変換。
◆油圧モーター
…高圧状態にした液体(主に油)の圧力Eを、ローターやピストン、ギア経由で回転運動Eへ変換。
気体を利用するもの
◆風車(風力タービン)
…風の運動Eから、揚力や抗力が生じるよう工夫された羽根車を経由して、回転運動Eへ変換。
◆空圧モーター
…高圧状態にした気体(ガス)の圧力Eを、ローターやピストン、ギア経由で回転運動Eへ変換。
…蒸気に加えられた熱E、蒸気自体の内部Eや圧力Eなどから、羽根車を経由して、回転運動Eへ変換。
…点火・爆発させられる燃焼ガスの圧力Eなどから、羽根車を経由して、回転運動Eへ変換。
被動機
機械E→流体E
◆ポンプ
…羽根車やギア、ピストンなどの回転運動E・往復運動Eを流体に加えることで、流体を高圧状態にする。その圧力Eによって、高い位置や離れた場所へ気体・液体を送流。
◆送風機
…羽根車などの回転運動Eなどによって流体に圧力Eを加えることで、気体を送流。
◆圧縮機
…送風機のパワフルver.。
伝動機
機械E→流体E→機械E
◆流体継手
…入力側羽根車を制御することで、オイルの流量・圧力を調整し、出力側羽根車の回転数・トルクを制御。
◆トルクコンバータ
…入力側羽根車と、オイルを介した出力側羽根車の間の回転差により、トルク増幅効果を生じる。
流体E→機械E→流体E
◆ターボチャージャ
…内燃機関の排気ガス流によって羽根車を回転させ、吸入空気を高密度にする。
◆トルクコンバータ
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油圧モーターについても1節分だけですが説明されています。
目次はこちらのサイトをご覧ください。
つまり…
流体機械とは
流体(液体や気体)の諸エネルギーと、機械の運動エネルギーとの間で、エネルギー変換を行なう装置
という技術個体・要素の総称というわけです。
流体機械のほとんどが羽根車という技術要素を内包しておるんじゃのぅ。やっぱり水やガスに運動を与えたり、そこから運動を得るには、プロペラ/スクリュー形状にかぎるんじゃな!
歴史のツボっぽくいうと…
紀元前3世紀頃 エジプトでアルキメデスがスクリューポンプを考案したとされる。
紀元前2世紀頃 小アジアで動力機関としての開放型水車が発明されたといわれる。
紀元前36世紀頃 エジプトで灌漑用風車が用いられる。
1世紀頃 アレクサンドリアの工学者ヘロンが、
風車を動力とするオルガンを設計する。
中世以降 ヨーロッパで開放型水車が劇的に普及する。
製粉用途のほか、工業用動力としても用いられはじめる。
10世紀頃 ペルシャで製粉用風車が建造され、
その後十字軍やモンゴル帝国を介してヨーロッパや中国へ広まる。
15世紀頃 オランダの干拓地で揚水用風車が多用されはじめる。
1848年 フランスの技術者ジェームズ B.フランシスがフランシス水車を設計する。
1851年 イギリスの技術者ジョン・アポ―ドルが遠心ポンプを開発する。
1887年 イギリスのJ.ブライスが発電用風車を発明する。
<参考文献>(2018/12/13 visited)