簡単にいうと…
人工呼吸器とは
ガス圧を肺へ送りこむことで、呼吸運動を補助する装置
という技術個体です。
単純にベンチレータ(ventilator=換気装置)とも呼ばれます。
装置と肺を接続する方法には、気管挿管(口・鼻にチューブを入れる)、気管切開(喉を切開してチューブを入れる)などがありますが、ここでは非侵襲的な、マスク方式を例に説明します。
詳しくいうと…
ひとは、呼吸不全に陥ることがあります。
呼吸不全は、肺炎や、肺に体液が溜まってしまうことなどで生じます。
これにより、肺が空気から酸素を取り込む能力が低下してしまいます。肺の元気がなくなるわけです。
そこで、人体外部の装置から、ガス(空気)を機械的に圧し込んであげることで、何とか肺に酸素を送り届けようとする工夫が、この人工呼吸器にあたります。
構造
そんな人工呼吸器は構造は、だいたい以下の通りです:
・アウトレット
…医療ガス(酸素・空気・笑気など)を供給する接続口です。病院各所の壁に設置されており、病院内の機械室のボンベとつながっています。
・酸素ブレンダ&圧流量制御ユニット
…人工呼吸器の内部で、アウトレットから供給された酸素・空気を一定比率で混ぜ合わせ、そのガス圧や流量を制御する装置ユニットです。
・電磁弁
…先の制御ユニットからの電子的指令を受けて、ガスの流量を実際に調整する弁です。
・マスク
…マスクです。Yピースを介して、吸気ホース/呼気ホースに接続されています。
・ディスプレイ
…ガスの圧力や酸素濃度、呼吸の状態を把握するための表示装置です。
仕組み
人工呼吸器の仕組みを、順々に追いかけてみましょう:
Step.1 ガスの供給
まず、アウトレットから酸素・圧縮空気が、ホース経由で人工呼吸器へと供給されます。
一度ホースにつなげば、アウトレット側のガス圧により、自動的にやってきます。
なお、自宅設置型などの場合には、アウトレットの代わりにボンベが直接、ホースと接続します。
Step.2 ガスの調整
供給されたガス(酸素・空気)は、まず酸素ブレンダによって一定比率で混ぜられます。
次いで、電磁弁の助けなどを借りて、適切な圧力/流量へと調整されます。
こうして、吸入ガスの準備ができました。
Step.3 吸気の送圧
続いて、この吸入ガスを送り出しましょう。
吸気ホース、マスクを介して、呼吸不全に陥ったホモ・サピエンスの肺にこのガスが、一定圧力を維持したまま送り込まれます。
ちなみにこの際、吸気ホースの途中に加湿器やネブライザ(噴霧器)が設置され、ガスに対して湿気や薬剤が添加されます。
こうして圧力の助けを借りて吸入されたガスは、肺を大きく膨らませます。
このとき、肺の中の肺胞が、酸素分子をたくさん取り込み、それら酸素を血管を通して体全体にまで行き渡らせることができています。
Step.4 呼気の排出
最後に息を吐きましょう。
肺へと取り込まれたガスは、一瞬肺の中に留まったあと、その圧力ゆえにすぐまた呼気として排出されます。
呼気ホース、そして人工呼吸器筐体の排気口を通して、この呼気は空気中へと排出されてゆきます。
なお上記Step.1~4の間、人工呼吸器のディスプレイには、ガスの圧力・酸素濃度、呼吸の回数や換気量などが、センサを介して計測され、表示されています。
異常値を計測すると、アラームが鳴って知らせてくれる仕組みです。
以上のように人工呼吸器は、ガスの圧力によって、肺を強制的に呼吸運動させることができます。それにより、呼吸困難なひとびとがそれでも酸素を取り込めるよう、サポートしてくれているわけなのでした。
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臨床工学技士さん向けの内容でもあるので、
人工呼吸器の構造まで図解されています。
メカニズムを知りたい方はぜひどうぞ。
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人工呼吸器の、使い方にフォーカスした書籍です。
マンガ形式になっており読みやすいですね。
つまり…
つまり…
人工呼吸器とは
ガス圧を肺へ送りこむことで、呼吸運動を補助する装置
という技術個体なわけです。
2020年4月のいま、新型コロナウィルス(COVID-19)の世界的流行が起こっておる。多くの肺炎重症者に対して、この人工呼吸器が彼らの命を日々つなぎとめておるわけじゃな。わしら自身がいつこの人工呼吸器のお世話にあずかるか分からぬ、切迫した状況じゃわぃ。
歴史のツボっぽくいうと…
- 1928年陰圧型の人工呼吸器アメリカの衛生学者フィリップ・ドリンカーと生理学者ルイス・A・ショーが、人体を収容しその筐体内を陰圧(1気圧以下)とすることで、筐体内の肺が強制的に空気を取り込めるようにした人工呼吸器(通常「鉄の肺」)を実用化する。
- 1952年陽圧型の人工呼吸器デンマークでポリオが流行、数千人が呼吸麻痺に陥る。鉄の肺だけでは数が足りなくなり、従来手術室のみで行なわれていた気管挿管+手押しゴムバッグの人工呼吸器による即席対処が実施される。
以降、現在見られる陽圧型の人工呼吸器が普及するきっかけとなる。
<参考文献>(2020/04/03 visited)
・https://www.pmda.go.jp/files/000144877.pdf
・https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsao1972/18/4/18_4_1467/_pdf