この用語のポイント
簡単にいうと…
整流子モーターとは
回転したりする電磁石の電流方向を回転角度に応じてスイッチする、整流子を備えた電気モーター
という技術個体です。
ブラシ付きモーターとも呼ばれます。
小型タイプだと携帯電話のバイブレータとして、大型タイプだと電車やエレベーターの動力として幅広く用いられています。
詳しくいうと…
構造
左図は整流子モーターの模式図です。
まんなかの棒が何やらグルグル回っていますね。何でしょうか?
この回転体の正体は電磁石です。鉄心に電線(銅線など)が巻かれています。この電磁石が、永久磁石のN極/S極間を磁力の関係でグルグル回っていたようです。
この電磁石の軸部分には、整流子と呼ばれる金属板が2枚ぺたっと軸に貼られています。これが電磁石のN極/S極を切り替えるスイッチになります。
それ以外には、電池から電磁石の電線へ通電するためのブラシと呼ばれる物体が介在しています。刷毛ではないです。
おおまかな登場人物は以上となります。
つぎに、仕組みについてみてゆきましょう。
仕組み
左図は、この整流子モーターを正面(軸方向)から眺めた様子です。
さきほど出てきた構成要素がここでも登場していることを確認できます。
電池の+極から-極へ電流が走りますが、このとき電流の経由地点としては、電池(+極)→整流子(左側:L)→電磁石の電線→整流子(右側:R)→電池(-極)となります。
Step.1
この状態で通電がスタートすると、電磁石が磁力を帯びます。
すると、左側の永久磁石(N極)と反発し、かつS極へ吸引されることで、電磁石は時計回りに回転をはじめます。
Step.2
先ほどのStep.1の磁力関係がまだ続いています。電磁石は慣性の力で引き続き時計回りに回転し続けているようです。
Step.3
電磁石の回転がある程度進むと、整流子の側に異変が起こります。
それまで電流の入力側だった整流子が、L側からR側へと切り替わるのです(整流子も、電磁石と一緒に回転していたため)。
これにより、電磁石に巻かれた電線内を流れる電流の向きが、先ほどのStep.1&2とは逆方向になりました(見比べてみてください)。
すると、電磁石のN極/S極も、先ほどとは逆になります。図の右側をみると、さっきまでN極だった電磁石がS極へとスイッチされることで、永久磁石(S極)との反発が突然生じ、かつ永久磁石(N極)への吸引が起きて、こうしてひきつづき時計回りに回転しつづけることが可能になるのです。
以上のStep.1~3を繰り返しながら、整流子のスイッチ機能のおかげで整流子モーターは延々と回転し続け、電池の電気エネルギーから回転運動エネルギーへの変換を行ない続けてくれるのです。
種類
整流子モーターは、その構成に応じていくつかヴァリエーションが存在します。
└整流子モーター
├①永久磁石界磁形(直流)
├(鉄心あり) …ex.おもちゃ、教材
└(鉄心なし) …ex.携帯電話のバイブレータ
└②電磁石界磁形(直流・交流)
├(直巻) …ex.電気鉄道
├(分巻) …ex.ディーゼル機関車、エレベーター
└(複巻) …ex.電気鉄道
先ほどのStep.1~3で登場したのは、界磁(固定子)に永久磁石を用いる、①永久磁石界磁形の整流子モーター(鉄心あり)でした。鉄心のない小型タイプだと、携帯電話のバイブレータなどに用いられます。
他方、②電磁石界磁形の整流子モーターは、大型で業務用になります。先ほどの二極式(回転子の凸部の数)だけでなく三極式など、構成も複雑です。
これは、電機子だけでなく、界磁(固定子)にも電線の巻かれた電磁石を用いるタイプで、電機子・界磁の巻線(電磁石の電線)が直列に1本で構成されているか(直巻:始動時の力が強く、回転速度範囲が広い)、並列で別線にて構成されているか(分巻:回転数による回転力のブレが小さい)、あるいは直巻と分巻を併用しているか(複巻:直巻・分巻の中間的特徴をもつ)によってさらにタイプ分けされます。
界磁(固定子)も電磁石となるので、N極/S極間切替はこの界磁側でも行なわれます。
これら様々な整流子モーターが、N極/S極を切り替えながら回転し、携帯電話や電車やエレベーターなど、幅広い分野でわたしたちの生活を支えています。
さらに知りたいなら…
つまり…
整流子モーターとは
電機子(回転子)や界磁(固定子)である電磁石の電流方向を、回転角度に応じてスイッチする、整流子を備えた電気モーター
という技術個体です。
整流子の素材自体は、シンプルな複数枚の金属板じゃ。しかし、回転する電磁石の働きのなかへと統合されることで、その存在がこうも際立つとはのぅ!
歴史のツボっぽくいうと…
1832年 イギリスの科学者ウィリアム・スタージャンが、
整流子式直流モーターを発明する。
<参考文献>(2018/12/15 visited)