この用語のポイント
簡単にいうと…
固体燃料を用いた燃焼時の高温高圧ガスを噴射することで、反作用によって推進力を得る
技術個体です。
その名の通りロケットや、ミサイルの推進機関として用いられています。
詳しくいうと…
ここにロケットがあります。
中を覗いてみましょう。
構造
上部から順に下記要素が実装されています:
・ペイロード
…宇宙へ運ぶ荷物。人工衛星、探査機など。
・点火装置
…電気スパークにより燃料へ着火する。
・固体燃料
…酸化反応(燃焼)させる酸化剤も含む。
・燃焼室
…固体燃料に覆われた空洞。ここで燃焼ガス流が流れる。
なお、最後の燃焼室は、たとえば右図のように星形になっていることがあります。
これは燃焼面積を広くして、より大きな燃焼エネルギー=推進力を短時間で得るためです。
いつ、どのくらい大きな推進力を得たいかに応じて、この燃焼室の形状が設計されます。
さて、そうこうするうち、
ロケットがそろそろ飛ぶようです。スリー、ツー、ワン…
離陸・飛翔
はい、飛び立ちました。
点火装置の電気スパークが、はじめ燃料に着火し、酸化反応が次々と連鎖して、燃焼室内は熱々です。
この高温高圧の燃焼ガス流が、下部のノズルを通ることで勢いよく噴き出します。
たとえば壁を手で押すと、壁ではなく押している体のほうが壁から離れてゆくように、
何十トンもある機体が、反作用の力によって徐々に宙に浮き、やがて、空へ向かって駆け上りました。
さてこのとき、燃焼室内は数千℃以上の超高温になっています。
硬くて溶けにくい(融点が高い)どんな金属も、バターのように溶けてしまいます。
ふつうなら、ロケットはこの超高温によって自壊してしまうわけですが、もちろんそうはなりません。燃焼源となっている当の固体燃料それ自体が、この超高温からロケット外殻が溶けないよう守っているからです。
というのも、固体燃料が燃焼されガスへと蒸発する際の気化熱により、こっそり熱が吸収され続けているのです。固体燃料は、耐熱壁でもあるわけですね。
ところで、ロケットの場合、多くが多段式になっています。左図でいうと、一番下の一段目ロケットがその燃料を使い果たしたら、空中で切り離されます。
今度は軽くなった二段目ロケットが燃焼ガスを噴射させて飛び続け、その燃料もなくなると最後は三段目ロケットが…という具合です。身軽になりながら効率よく宇宙まで飛んでゆくのですね。
固体燃料のメリット
固体燃料ロケットエンジンの特徴は、その名の通り、燃料が液体ではなく固体であるという点にあります。
既製の固体燃料は、長期間の保存ができます。また、液体燃料のような常時メンテや特殊な充填作業が必要ないため、発射前になればすぐ装填できます。常温では蒸発しないため、毒性への留意も少なくて済みます。つまり、扱いやすいわけです。
また、この固体燃料を装填するロケット自体も構造を簡易化できるため、開発コスト全体を低く抑えられる点も大きな魅力です。
他方、一度点火したら途中で制御がむつかしく、液体燃料ほどには燃焼量を調節できないため、ぶっきらぼうなところもあります。
なお、こうした即応性や構造の簡易さという利点から、ロケット以外でも、あるいはロケット以前では、ミサイルの推進機関として広く用いられています。
さらに知りたいなら…
つまり…
固体燃料ロケットエンジンとは
固体燃料を燃焼させたときの反作用によって推進力を得る
技術固体というわけです。
つまり、ロケット花火と仕組みはおなじというわけじゃな。
日本の固体燃料ロケットといえば、いまではイプシロンが有名じゃ。この前も飛んでおったぞ。
歴史のツボっぽくいうと…
10世紀頃 中国で、火槍や火箭(かせん)など、現在でいうロケット花火が使用される。
1804年 イギリスのウィリアム・コングリーヴが、インドのマイソール王国の
使用したロケットを元に、コングリーブ・ロケットを開発する。
1903年 ロシア帝国の物理学者・数学者ツィオルコフスキーが、
宇宙ロケットを構想する論文を発表する。
1970年 日本が固体燃料ロケットL-4Sにより
人工衛星「おおすみ」を打ち上げ成功させる。
<参考文献>(2018/09/13 visited)