この用語のポイント
簡単にいうと…
電動機(リニアモーター)の電磁作用で推進・制動あるいは浮上する鉄道車両
という技術個体です。
車輪を接地したまま走行する鉄輪式と、浮上して走行する浮上式があります。
ここでは、2027年に日本で開業予定のリニア中央新幹線と同じ、磁気浮上式リニアモーターカーについて説明します。
詳しくいうと…
リニアモーターという電動機(電気モーター)があります。
これは、永久磁石や電磁者のN極/S極同士がひっつきあい、同極同士が反発するという磁気作用にもとづいて、電磁石の磁極を制御しつつ、物体を推進・制動します。工作機械など精密さが求められる分野で実装されています。
ここでは、そんなリニアモーターを鉄道車両の原動機として搭載した、リニアモーターカーについてみてゆきます。
レールの電磁石
走行の仕組みを見る前に、リニアモーターカーのレール構造について触れましょう。
レール両側の側壁には、以下のコイル(電磁石)が二重に内蔵されてます:
●浮上・案内コイル
…車両を浮上させ、両幅を一定に保つための電磁石
●推進コイル
…車両を推進・制動するための電磁石
浮上・案内
つぎに、車両が浮上する仕組みをみてゆきます。
車両の側面には、超電導磁石と呼ばれる強力な磁石が搭載されてます。
この超電導磁石が、先ほど触れたレール側壁の浮上・案内コイルと、同極同士が反発&異極同士が吸引する磁気作用により、浮き上がります(浮上)。
また、側壁側の磁力制御により、車両はレールの中央にくるよう横幅が調整されます(案内)。
そのため、つねに浮上しているわけではなく、駅からの発進時、車輪はまだレール上に接地しています。発進してしばらくは車輪で走行し、やがて側壁の電磁石の働きで浮上走行するわけです。
走行
浮き上がったら、つぎは走行です。
走行は、車両側の超電導磁石と、レール側壁の推進コイルの磁極との吸引・反発により行なわれます。
車両の少し前の推進コイルへの吸引、および車両の少し後ろの推進コイルとの反発により、推進力が生じて前進します。
上図から一瞬後の様子が左図です。推進コイルの磁極が変化していますね。
外部から磁性制御を受けるため、車両の位置に応じてレール側壁の磁性はつねに変化します。この制御により、車両は前進しつづけることが可能になるのです。
ブレーキ
最後にブレーキの仕組みです。
ブレーキの仕組みは単純で、先ほど見た走行時のレール側磁性制御を、ちょっと止めてみます。
すると、車両前方の推進コイルとの磁極反発により、車両は推進力を削がれ、止まることができます。
以上で概観したリニアモーターカーは、最高時速500km(1時間で東京~大阪間を移動できる速さ)というスピードで、将来の長距離高速鉄道を担うことが期待されています。
つまり…
リニアモーターカーとは
電動機(リニアモーター)の電磁作用で推進・制動あるいは浮上する鉄道車両
という技術個体なわけです。
歴史のツボっぽくいうと…
1911年 イギリスのエミール・バチェレットが
磁気浮上リニアモーターに関する特許を取得する。
1934年 ドイツの技術者ヘルマン・ケンペルが磁気浮上鉄道に関する特許を取得する。
1940年代~1970年代 イギリスの工学者エリック・レイスウェイトが
リニアモーターの研究開発を行なう。
1971年 ドイツのメッサ―シュミット・ベルコウ・ブローム社が
初の有人磁気浮上鉄道を開発する。
<参考文献>(2019/01/04 visited)