輸送機械

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この用語のポイント

・人や貨物を移動させる乗り物だよ

簡単にいうと…

輸送機械とは

 人や貨物を移動させる乗り物

という技術個体の総称です。

詳しくいうと…

わたしたちは日々、”どこかへ行こう”とし、”何かを運ぼう”としています。

コーヒーカップを台所から持ってくるだけなら、手で握り、で持ち運べます。しかし、30km離れた仕事場へ向かうためには、歩くだけで10時間もかかってしまいます。そこで当然のように、自動車に乗り、電車に乗ることを考えます。離れ島へ向かうにはに乗り、ユーラシア大陸へ渡るために旅客機に乗ります。

また、あなたが今日飲んだお茶の葉や、コーヒーの豆は、どうやって日本の、あなたのいる場所まで移動したのでしょうか? コンテナ船貨物航空機トラックがなければ、遠く離れた地方や外国の品物に、あなたが手を触れることは決してなかったでしょう。

ここから、わたしたちの行動が日頃いかに、これら輸送機械に頼っているかがわかります。

 

下図は、この輸送機械の構成・分類を示したものです:

上図で示した輸送機械の構成・分類について、くわしくみてゆきましょう。

 

輸送機械の構成

まず、輸送機械がどのように構成され、移動させるその仕組みを発揮しているかを考えましょう。

 

動力

野球ボールは、手で投げなければ、相手のもとまで届きません。

同様に、何かを移動させるためには、その何かの外部・内部から力を加えてあげる必要があります。これを動力と呼びます。

何かを持ち運ぼうとするとき、真っ先にわたしたちが思い浮かべるアイデアは、自分の手足を使うことです。これはわたしたちホモ・サピエンスが250万年もの間行なってきた、信頼性の高い手段です。

やがて、牧畜社会が一般化すると、同じ畑を耕す行為でも、人間がやるより馬や牛に犂(すき)を牽かせたほうがずっと効率が良く、また人間自身も他の作業にあたれる、というアイデアが広まります。人間の行為(鋤を振るう)を、その結果(畑が耕される)から抽象的に分離させ、動力部分だけを家畜に任せるわけです。

同様にして、それまでオールを漕いで船を前進させてきましたが、よく考えると海にはものすごい風力が働いているのだから、この風の力を受け止めながら前進できるのでは、というアイデアが生まれます。ここから帆船が、人力よりずっと強力な速度で海上を移動するようになりました。

18世紀以降、蒸気の圧力(蒸気エンジン)・燃焼ガスの圧力(内燃エンジン)・電磁界に働く力(電気モーター)が利用されることで、多種多様な原動機が発明されました。原動機が行なうことは、それぞれの仕組みを用いて、軸(シャフト)をクルクル回すことです。ここから得られた回転運動エネルギーの大出力が、車輪の高速回転、プロペラの高速回転を可能にし、街中では今日もこうして多くの輸送機械が飛び交うことになりました。

 

運動器

こうして動力を用意しても、たとえば人や貨物をずるずると引き摺るだけでは、いつまでたっても目的地まで届けられません。何か仕組みが必要です。

たとえば、円盤同士を軸でつないでその上に床板をかぶせれば、上に荷物を載せてスムーズに地上を移動してくれます。これが車輪です。

また、オールで漕ぐよりも、エンジンのクルクル回る出力軸に羽根車をつなげば、海上の船がぐんぐん進みます。スクリュープロペラの登場です。

そして20世紀になり、アメリカの自転車屋の兄弟が、飛行機を初めてフライトしました。固定のが高速の空気中を移動する際、上方向へ浮かび上がる力(揚力)が働くのです。この力には、何百キロにも及ぶ機体や荷物、人を載せてなお浮かび上がる巨大な潜在力のあることが予感されました。

こうして、動力のもたらす運動エネルギーを効果的な移動させる力に変換するための、運動器が探求されてきました。

 

被輸送体

移動させたいものは、数千年の昔から変わりません。わたしたちか、かのどちらかです。

人について、古来より、輸送機械に乗れる人間は一部の限られた者たちでした。王族・貴族、ブルジョワ階級、軍人など。そこから徐々に、市民階級でも乗合馬車や蒸気機関車に乗れるほどには経済的制約が緩やかになり、20世紀に入ると自動車やバイクなど、個人所有の輸送機械が一般化しました。

物について、輸送される貨物は建築用石材や木材、農家の収穫した野菜、鉱山から採掘された鉱石、あるいは引っ越し家財までさまざまです。

 

他方、それら人・物の輸送できる量は、動力のより大きな出力量、そして運動器のより効果的な運動種類によって、どんどん大規模になりました。

たとえば車輪は、紀元前5000~4000年頃の発明当初は、真っ平で丸い木の板で、人間を数人乗せる程度に抑えておかないと壊れてしまう代物でした。それが、スポークによって補強され、また鉄製になることで、大きな機関車を支えるまでに進化します。現代ではより強靭なゴムタイヤのおかげで、10tトラックだって走らせることができています。

同様に、巨大な原動機と効果的な運動器により、小型ボートが巨大コンテナ船に、2人乗りプロペラ飛行機がジャンボ旅客機になりました。

このため今日では、その国の人間全員に行き届くほどの貿易品がやり取りされ、どの市民でも長距離の旅行へ出掛けることができるのです。

 

輸送機械の分類

輸送機械がさまざま動力・運動器・被輸送物から構成されていることを学びました。

次に、そうして構成される輸送機械にどんな種類があるのかをみてゆきましょう。

 

車両

車両は陸上の輸送機械です。

 動力+車輪+被輸送物

などで主に構成されています。

 

車両の下位分類として、

 ├自動車(乗用車、トラック、バス、バイク…)

 ├軽車両(自転車、馬車…)

 └鉄道(電車、機関車、リニアモーターカー)

などがあります。 

車両
車両は、陸上(舗装路・軌道)を車輪の回転などで移動するよ

 

船舶

船舶は海上の輸送機械です。

 動力+オール/帆/スクリュープロペラ+被輸送物

などで主に構成されています。

 

船舶の下位分類として、

 ├商船(旅客船貨物船…)

 ├作業用船(破氷船、海底ケーブル敷設船…)

 └小型船(ボート、水上オートバイ)

などがあります。 

船舶
船舶とは、アルキメデスの原理により浮力を得て水面に浮かんで推進する乗り物だよ

 

航空機

航空機は空中の輸送機械です。

 動力+固定翼/回転翼/ロケットノズル+被輸送物

などで主に構成されています。

 

船舶の下位分類として、

├重航空機 
 ├固定翼機   
 └回転翼機       
├軽航空機
├宇宙航空機
└無人航空機

などがあります。

航空機
航空機とは、大気中を飛行する乗り物だよ

 

 

以上のように、輸送機械には車両・船舶・航空機という分類があり、それぞれ陸上・海上・空中で、今日も貨物やわたしたち自身をあっちへこっちへ運んでいるのでした。

輸送機械の歴史をダイジェストでまとめた動画として、下記も参照ください:
An Animated History of Transportation

 

 

・輸送機械とは、人や貨物を移動させる乗り物だよ
・動力、運動器、被輸送体にはさまざまな組み合わせがあるよ
・陸上では車両が、海上では船舶が、空中では航空機が日々行き交っているよ
 

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つまり…

輸送機械とは

 動力+運動器+被輸送体から構成され、陸上・海上・空中で、人や貨物を移動させる乗り物

という技術個体の総称なわけです。

 

毎日当たり前のように車や船、飛行機を眺めておるが、それぞれの長い歴史があって今があるんじゃよなぁ。決して当たり前の風景ではないのぉ。

歴史のツボっぽくいうと…

【車両】

1769年 フランスの軍事技術者ニコラ=ジョゼフ・キュニョーが

     大砲牽引用の蒸気エンジン式三輪自動車を開発する。

1802年 イギリスの技術者リチャード・トレビシックが

     蒸気エンジンを台車に搭載した蒸気機関車を開発する。

1814年 イギリスの技術者ジョージ・スティーブンソンが

     石炭輸送用の実用的な蒸気機関車を開発する。

1830年代 スコットランドの発明家ロバート・アンダーソンが

      電気自動車を開発する。

1837年 イギリスのロバート・デビットソンが

     ガルバーニ電池を搭載した電気機関車を開発する。

1865年 イギリスで赤旗法が成立。当時普及しつつあった蒸気自動車が、

     道路を傷め馬を驚かせると敵視され、

     走行時に赤い旗を持った人物が先導するよう義務化される。

1879年 ドイツのヴェルナー・フォン・ジーメンスが

     実用的な電気機関車を開発する。

1879年 ドイツの工学者ジーメンスが、工業博覧会で電気機関車を披露する。

1881年 ドイツ・ベルリンで路面電車が開業する。

1885年 ドイツのゴットリープ・ダイムラーとカール・ベンツが

     それぞれ独自にガソリンエンジン式自動車を開発する。

1887年 フランスの技術者レオン・セルポレーが蒸気エンジン式気動車を開発する。

1895年 日本・京都で、琵琶湖疎水にある蹴上発電所の電力を用いた電車が開業する。

1908年 アメリカのフォード車が、大量生産方式により安価となったガソリン自動車、

     フォード・T型を販売。自動車の大衆普及のさきがけとなる。

20世紀  世界各地でモータリゼーションが起こり、自動車が生活必需品になる。

1911年 イギリスのエミール・バチェレットが

     磁気浮上リニアモーターに関する特許を取得する。

1921年 日本でガソリンエンジン式気動車が営業開始される。

1924年 ロシア鉄道向けにディーゼル機関車が開発される。

1934年 イギリスのGreat Western鉄道がディーゼルエンジン式気動車を導入する。

1934年 ドイツの技術者ヘルマン・ケンペルが磁気浮上鉄道に関する特許を取得する。

1936年 イタリアで長距離高速列車が製造される。

1940年代~1970年代 イギリスの工学者エリック・レイスウェイトが

           リニアモーターの研究開発を行なう。

1970年代 スイスでカーシェアリングが行なわれる。

1971年 ドイツのメッサ―シュミット・ベルコウ・ブローム社が

     初の有人磁気浮上鉄道を開発する。

 

【船舶】

紀元前4千年前 エジプトやメソポタミア地方で、帆船が使用される。

1807年 アメリカの技術者ロバート・フルトンが外輪蒸気船を製造する。

1858年 イギリスの技術者アイザム・K・ブルーネルが

     スクリュープロペラを備えた外洋客船を製造する。

 

【航空機】

4世紀頃 中国で竹トンボについて記述した書物が書かれる。

10世紀頃 中国で、火槍や火箭(かせん)など、現在でいうロケット花火が使用される。

1505年頃 イギリスのレオナルド=ダ・ヴィンチが

     『鳥の飛翔に関する手稿』でヘリコプターのスケッチを残す。

1901年 アメリカの技術者グスターヴ・ホワイトヘッドが

    飛行機の有人飛行を成功させたといわれる。

1901年  ドイツの工学者ヘルマン・ガンズヴィントが

      ヘリコプターによって15秒間の浮上を成功させる。

1903年 アメリカの自転車屋ライト兄弟が、飛行機の有人飛行を成功させる。

1903年 ロシア帝国の物理学者・数学者ツィオルコフスキーが、

     液体燃料ロケットエンジンを構想する論文を発表する。

1914年 アメリカの飛行機ベノイストXⅣが

     タンパ湾両岸35kmを横断する初の定期旅客飛行便となる。

1915年 ドイツの飛行機フォッカーE.Ⅲが

    プロペラ内面から機関銃を掃射する初の量産戦闘機となる。

1926年 アメリカのロバート・ゴタートが

     はじめて液体燃料ロケットエンジンの飛行を成功させる。

1936年  ドイツの技術者ハリンリヒ・フォッケらが

      安定飛行のできる初の量産型ヘリコプターの飛行に成功する。

1942年 ドイツが液体燃料ロケットエンジンを用いた

     V2ロケットミサイルの発射に成功する。

     宇宙空間へ到達したはじめての人工物体となる。

1944年 アメリカがドイツのミサイル発射施設向けの無人爆撃機BQ-7を開発試行する。

1947年 アメリカの飛行機ベルX-1が、ロケットエンジンを搭載して

     飛行機として初めて音速を超える。

1949年 イギリスの飛行機コメットが世界初のジェット旅客機となる。

1958年 ソ連が液体燃料ロケットエンジンを用いた

     スプートニクロケットの発射に成功する。

1987年 日本のヤマハ発動機社が、産業用無人ヘリを開発する。

1995年 アメリカで無人偵察機プレデターが配備、軍事作戦に投入される。

 

 

<参考文献>(2019/01/14 visited)

乗り物 - Wikipedia
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