この用語のポイント
簡単にいうと…
インジェクタとは
エンジンのパイプや気筒内へ、燃料を霧状に噴射する
技術要素、ないし技術個体です。
名前の由来は英語の「inject(注入する)」からきており、日本語だと付属装置も含めて「燃料噴射装置」と呼ばれることがあります。
なお、同様の噴射機能をもつ技術要素として、より歴史の古いキャブレター(気化器)があります。
詳しくいうと…
エンジン、たとえばレシプロエンジンでは、パイプや気筒(シリンダー)の中の吸入空気に、ガソリンなどの燃料を混ぜて、燃焼を起こしています。
この燃焼時のパワーで、ピストンが上下運動し、クランクシャフト(軸)が回り、車のタイヤが回ります。
その際、燃料を空気中へ散布するのがインジェクタの機能です。
おおよそ左図のような形をしています。
エンジン内の燃焼1回あたり、5回ほど噴射が行なわれます。超高速で噴射をしたり止めたりを繰り返す必要のあることから、現在ではほとんど電子制御化されています。
くわしい構造をみてみましょう。
構造
インジェクタには下図のような部品が詰まっています:
・電磁石(ソレノイドコイル)
…電気信号に応じてアウターバルブを動かします。
・アウターバルブ
…電磁石によって制御される弁です。
・コマンドピストン
…ノズルニードルと連結しています。
・ノズルニードル
…燃料が噴射される先端箇所を開閉します。
意外といろいろな部品が詰まっていますね。
では、各部品がどのように稼働して燃料を噴射させるのか、仕組みをみてゆきます。
噴射しないとき(電磁弁:開)
左図は噴射していない状態です。
左側から液体燃料が入り込んでいます(赤色部分)。が、アウターバルブが閉まっているため、燃料は行き場を失くして留まっているところです。
このとき、コマンドピストンは滞留した燃料の圧力によって下方向へ押されています。連接しているノズルニードルもやはり閉まった状態です。
ノズルニードル側から上方向へ押し上げる圧力もありますが、いまは小さな力ゆえ、コマンドピストン側からの圧力に打ち勝つことができません。
噴射するとき(電磁弁:閉)
左図は噴射する状態を示しています。
電子情報がやってきて、電磁石を作動させます。すると、アウターバルブが磁力の力で、その電磁石の方へと引き寄せられ、弁が開きます。
そうなると、コマンドピストンを上から下へ圧していた液体燃料の圧力が弱まります。
その結果、ノズルニードル側から上方向へ働く圧力のほうが、コマンドピストン側圧力に打ち勝ち、コマンドピストン/ノズルニードルが上方向へ移動します。
これにより、ノズルニードルがふさいでいた隙間から、液体燃料が噴き出すことができました。
インジェクタではこのように、電磁石の制御と、液体燃料の圧力差をうまく利用して、エンジン内に燃料を噴射したりしなかったりを高速で繰り返すことが可能になります。
さらに知りたいなら…
つまり…
インジェクタとは
電磁石の制御と、液体燃料の圧力差を利用して、燃料を噴射するための隙間を開閉する
技術要素、ないし技術個体というわけです。
ちっこい姿なのに、いろんな工夫が詰まっているんじゃなあ。
歴史のツボっぽくいうと…
1908年 ドイツの技術者プロスパー・ロランジュが、Deutz社とともに
ディーゼルエンジン向けの精密な噴射ノズル/ポンプを開発。
1967年 ドイツのボッシュ社が開発した電子制御式噴射装置を
搭載した乗用車が販売される。
<参考文献>(2018/09/24 visited)