簡単にいうと…
治水システムとは
洪水などの水害や土砂災害を防ぐ
社会機関です。
いままさに水の危険を感じている方向けに、実践的な行動も後半にあります。
詳しくいうと…
治水とは?
水害や土砂災害には主に以下の種類があります:
・洪水(原因:河川の氾濫、堤防の決壊、水道の逆流など)
・高潮(原因:低気圧による海面上昇)
・地すべり、土石流(原因:集中豪雨など)
治水システムとは、これら水に関する災害を事前に防いだり、発生時の影響を抑制する機構・施設・装置の総体です。
治水システムの種類
治水システムには主に以下の種類があります:
①河川系(ダム・可動堰・堤防・遊水地・放水路)
②流域系(貯留池・浸透マス)
③排水系(管渠・調節池)
④その他
1つひとつ見てゆきましょう。
① 河川系
河川系は、山間部から沿岸部まで続く河川にまつわる治水システムです。
国土交通省の地方整備局や、自治体が管理(監視・操作・保守)しています。
①-1 ダム
ダムは、河川上流の山間部につくられる人工の湖で、周囲の山からの湧き水(河川の源流)や雨水が集められています。
ダムに雨水を溜め込むことで下流の流量を抑制します(治水)。そのほか水力発電や灌漑などにも用いられます(利水)。
大雨時、ダムの貯水率が100%に近くなると、水を抜くため大規模な放流が行なわれ、下流の河川が急激に水位上昇するため注意が必要ですが、それまでは下流の流量抑制のためふんばってくれます。
①-2 可動堰
可動堰は、河川を横断する形で設置される堰(せき)です。
大雨時はこの水門を開けることで、水流を妨げないようにしています(治水)。
ふだんは水門を閉じることで、上流側を水位上昇させて貯水したり、農業用水向けの取水をしやすくします(利水)。
①-3 堤防
堤防は、河川が大雨時に水位上昇しても氾濫しないよう、河川の両岸に設置される土やコンクリートの堤(つつみ)です。
河川沿岸の住民にとっては最後の砦です。
大雨時、河川の水位が堤防の高さ(計画高水位)を超えると氾濫が生じ、付近の住宅街や田畑、道路へ、堤防を乗り越えた分の河川の水が流れこみ、冠水してしまいます。
最悪のケースとして、堤防が崩れて決壊すると、付近一帯が河川と同じだけの水位にまであっという間に水没してしまいます。多くの犠牲者が生じ、数週間はひとの住めないエリアになります。
①-4 遊水池
遊水池(ゆうすいち)は、大雨時に一定水位以上に増水した河川を引き込み、下流への流量抑制のためにあえて氾濫させるための広い土地です。
ふだんは公園として利用されることも多いですが、大雨時にはその貯水力を発揮します。
①-5 放水路(分水路)
放水路は、大雨時の河川氾濫を防ぐため、地上や地下に水路を掘ることで、他の河川や海へ水流を逃がすための水路です。
②流域系
流域系は、雨水が直接ふりそそぐエリアにまつわる治水システムです。
河川の流域というより、雨水が河川へ集められる流域というニュアンスがあります。
主に自治体の水道局などが管理(監視・操作・保守)しています。
②-1 雨水貯留池(オンサイト貯留)
雨水貯留池は、公園や運動場の地下などに設置された雨水の貯留設備です。
通常あればそのまま下水道とその先の河川へ流れ込む雨水を、いったん溜め込むことで、大雨時の河川増水を抑制する働きがあります。
また、このように降雨地点で貯留するタイプをオンサイト貯留と呼びます。
②-2 雨水浸透マス(浸透トレンチ)
雨水浸透マス(桝)は、孔のたくさん空いたバケツ状の設備です。
そのままだと路面のアスファルトを伝って下水道や河川へ流れてしまう雨水を、この孔を通して地中へ浸透させることで、大雨時の河川水位上昇を抑制する働きなどがあります。
浸透マスをいくつも並べてパイプで連結させたものは浸透トレンチと呼ばれます。
③排水系
排水系は、ひとの住むエリアに降り注いだ雨水を河川や海へ排出する治水システムです。
主に自治体の水道局などが管理(監視・操作・保守)しています。
③-1 管渠
管渠(かんきょ)とは、雨水や汚水、用水を導くパイプや溝のことです。
道路わきにある側溝、用水路などの開渠、地下を巡る暗渠などの種類があります。
大雨時、増水した河川へつながる管渠内で雨水が逆流し、近くのマンホールや側溝などから噴き出して冠水を引き起こすことがあります(バックウォーター現象)。
③-2 雨水調整池(オフサイト貯留)
雨水調整池は、公園やスポーツ施設の地下などに設置された、広大な貯水施設です。
大雨時、管渠を通じて取り集めた雨水を溜め込むことで、放水先である河川の水位上昇を抑制する働きがあります。
④ その他
その他の治水システムとして、高潮を防ぐ防潮堤や、土砂崩れを防ぐ擁壁(ようへき)などがあります。
水の危険を感じたら…
大雨や台風の際、もし水害のおそれを感じたら、次のことをチェックしてみましょう。
①河川の近くにいる方は…
・自治体HP(ホームページ)で、浸水ハザードマップをチェック
…堤防の氾濫や決壊によって、お住まいの住所がどれほど浸水するかを知りましょう。家・マンションの2階や3階にお住まいであっても危険な場合があります。
浸水エリア内 or 付近にお住まいの場合は、下記もチェックしてみましょう。
・河川事務所などのHPで、近隣河川の水位計をチェック
…河川のカメラ画像のほか、水位に応じた警戒レベル(氾濫注意・避難判断・氾濫危険など)を知ることができます。避難する際の重要な判断材料になります。
・ダム放水計画をチェック
…近隣河川の上流に位置するダムを調べて、管轄する河川事務所が放水計画を予定しているかを知りましょう。放水された場合、近隣河川の水位が急激に上昇する危険があります。
・避難所/高所へ移動
…気象の状況や、自治体からの避難情報、近隣河川の水位などを総合的に判断して、すこしでも危険と感じたら避難所や高台などへ避難しましょう。
②低地の近くにいる方は…
河川から離れたところにいる方も、堤防決壊時は低地へ濁流が流れ込むおそれがあるため、河川近くの方同様にハザードマップや河川水位計をチェックしてみましょう。
③山や崖の近くにいる方は…
土砂崩れの危険があるため、必要に応じて避難所へ行くか、家屋2階の、山や崖とは反対側の部屋で待機しましょう。
④それ以外の方も…
「近くに河川や山のまったくないエリアに住んでるから自分は大丈夫」と思っている方も、注意が必要です。
たとえば地下を流れる管渠が詰まったり、逆流することで、近所のマンホールや側溝から雨水が逆流して、付近一帯が冠水することがあります。
油断をせず、何か異常の兆候があればすぐに高い所へ避難しましょう。
以上のように治水システムは、河川系・流域系・排水系それぞれの設備が管轄機構を介して協調しあうことで、大雨時の雨水流量のコントロールを行なっているのでした。
さらに知りたいなら…
つまり…
治水システムとは
洪水などの水害や土砂災害を、河川系・流域系・排水系の観点から防ぐ
社会機関なわけです。
2019年10月の台風19号で、うちの近所の多摩川も氾濫しかけとったぞ。台風や集中豪雨の際はとくに気を付けなくちゃいかんのぅ。
歴史のツボっぽくいうと…
- 紀元前31世紀頃管渠の整備インダス文明(現 パキスタンおよびインド北部)で上下水道が整備され、主要な通りの地下に暗渠が設置される
- 紀元前2750年人類最初のダムエジプトで人類最初のダム「サド・エル・カファラダム(異教徒のダム)」が上水道用途で建造される
- 紀元前18世紀頃運河網
- 1913年多目的ダムの法律プロイセン(現 ドイツ)で、治水と利水双方の機能を備えた多目的ダムに関する法律「プロイセン水法」が制定される
- 1917年アメリカのダム建設アメリカで「洪水防御法」が制定され、ダム建設や河川改修が行なわれる
<参考文献>(2019/10/15 visited)
http://arsit.or.jp/wp/wp-content/uploads/2015/04/%E6%96%87%E6%9B%B8%E5%90%8D-_%E6%B5%81%E5%9F%9F%E8%B2%AF%E7%95%99%E6%B5%B8%E9%80%8F%E6%96%BD%E8%A8%AD%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%95_2..pdf
https://www.nishi.or.jp/kurashi/suido/saigaitaisaku/usuitaisaku-map.files/map12Shinkawa.pdf
http://www.tokyo-sougou-chisui.jp/shishin/shishin.pdf