簡単にいうと…
薬品とは
化学物質のうち、物性、組み合わせによる反応、生物に対する反応が、人間の役に立つもの
という自然加工物です。
詳しくいうと…
薬品のある風景
薬品とは、何かある物について、その物体の基盤を構成するほどではなくとも、その物体に散布・添加されることで、ホモ・サピエンスにとって何らかのメリットになる化学物質のことです。
たとえば薬品は、その物性を活かして、物体に色をつけたり(染料・顔料)、汚れを落としたりします(洗剤)。
また、生物の治癒能力を促進したり(医薬品)人間の肌を綺麗に保たせたり(化粧品)、農作物の害虫を死滅させたりしてくれます(農薬)。
これら薬品自体もまた、もともとは別々だった自然物・薬品が調合された複合体です。そうした薬品同士を組み合わせて化学反応を起こす薬品もまた存在します(工業薬品)。この組み合わせによって物体の材質を補強したり、化学反応を促進したり、香りづけしたりできるようになるのです。
こうしてみると、わたしたちの生活は薬品に満ち溢れていることがわかります。
お皿や体を洗う洗剤、おめかしするための化粧品、風邪をひいたときに飲む医薬品、衣類やタオルを色付けする染料、合成樹脂製のパーツを色付けする顔料、農薬によって綺麗な形を保った穀物・野菜・果物、工業薬品によって丈夫になった車のゴムタイヤやトイレの芳香剤など……枚挙に暇がありません。
薬品の種類
薬品は、定義によっていろんな分類が可能ですが、
たとえば以下のような分類ができます:
・工業薬品
■物性を活かした薬品
・染料
・顔料
・洗剤
■生物への反応を活かした薬品
・医薬品
・化粧品
・農薬
1つひとつ概観してゆきましょう。
工業薬品
工業薬品は、素材や他の薬品と組み合わせた際の化学反応を得るための薬品です。
触媒、溶剤、充填剤、滑剤、芳香剤などたくさんの種類があります。
医薬品
医薬品は、生物の治癒能力を高めるために用いられる薬品です。
生物の器官に応じてたくさんの種類がありますが、おおむね、細胞の生理反応を加速させる作動薬、抑制する拮抗薬に分類できます。
化粧品
化粧品は、ホモ・サピエンスの肌を綺麗に保ったり着色したりして、見栄えをよくするための薬品です。
基礎化粧品と仕上げ化粧品に大別されます。
農薬
農薬は、農作物の害虫を死滅させたり、農作物の成長を調整したりする薬品です。
殺虫剤、殺菌剤、除草剤、殺鼠剤、あるいは植物成長調整剤などの種類があります。
染料
染料は、着色するための薬品のうち、液体形状をしたものです。
動植物から抽出した天然染料と、化学合成物を利用した合成染料の種類があります。
顔料
顔料は、着色するための薬品のうち、粉末形状をしたものです。
鉱物などから抽出される無機顔料、化学合成物や動植物から得られる有機顔料、染料を粉末化させたレーキ顔料などの種類があります。
洗剤
洗剤は、油分を含んだ汚れを洗い落とすための薬品です。
その主成分に応じて、石鹸と合成洗剤に大別されます。
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つまり…
薬品とは
化学物質のうち、物性、組み合わせによる反応、生物に対する反応が、人間の役に立つもの
という自然加工物なわけです。
こうして俯瞰すると、人間たちは多様な薬品に頼って生活を送っておることが分かるのぉ。
物理的な素材であれ、人間含めた動植物であれ、薬品と同じく化学物質で構成されておるからこそ、こうしてお互い反応しあい、そのうち役に立つ薬品だけが特化され今に至っておるのじゃろうなあ。
歴史のツボっぽくいうと…
【工業薬品】
- 1823年触媒の発見ドイツの化学者ヨハン・デーベライナーが、白金が空気中の酸素と水素を反応させる触媒であることを発見する
【医薬品】
- 紀元前4000年頃薬用植物の記述メソポタミア文明で、薬用植物の名を記した粘土板が記される
- 1~2世紀頃薬物書の登場古代中国で、薬物書の古典『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』が記される
- 1~2世紀頃薬学書の登場古代ギリシャの薬物学者ペダニウス・ディオスコリデスが、系統的な薬学誌『マテリア・メディカ』を記す
- 1804年近代薬学の幕あけ①ドイツの薬剤師F.W.セルチュナーが、鎮痛作用のある薬剤モルヒネを、阿片から抽出する
- 1897年近代薬学の幕あけ②ドイツの化学者F.ホフマンが、解熱・消炎・鎮痛作用のある薬剤アスピリン(アセチルサリチル酸)を合成する
【化粧品】
- 紀元前1200年代絵画の中の化粧古代エジプトで、人々が目や唇に化粧をしている絵画が残される
ツタンカーメンの黄金のマスクでは、ラピスラズリを原料とするアイラインが目の周囲に描かれている
- 紀元2世紀クリームの開発ギリシャの医師ガレノスが、コールドクリームの原形を開発する
- 紀元16世紀頃白粉の流行中世ヨーロッパで、虚飾を罪と考えるキリスト教教会の権力が弱まった宗教革命の時期に、顔に蜜蝋を塗り、その上に白粉をはたくという化粧法が流行する
- 1899年無毒な白粉の開発白粉の原料として従来用いられてきた、有毒の鉛白や水銀に代わり、人体に無害な酸化亜鉛を用いた白粉が開発される
【農薬】
- 紀元前頃農薬の利用古代ギリシャや古代ローマで、殺虫成分のあるさまざまな植物を煮出した液体やワインに、播種前の種子が漬けられる
- 1800年代新たな農薬の登場ロシア近辺のコーカサス地方で、除虫菊やデリス根の殺虫成分が知られるようになる
- 1873年ボルドー液の登場フランス・ボルドー大学のミヤルデ教授が、べと病にかかったブドウに硫酸銅と石灰を混ぜた混合物に殺菌作用があることを発見、ボルドー液と呼ばれる
- 1938年化学農薬の登場スイス・ガイギー社の化学者パウル・ヘルマン・ミュラーが、有機塩素系のDDTに殺虫作用があることを発見、大量に生産可能な有機化合物を殺虫剤として実用化した最初の例となる
- 1962年沈黙の春アメリカの生物学者レイチェル・カーソンが、DDTをはじめとする農薬など化学物質の危険性について告発する著作『沈黙の春』を刊行、その後の農薬規制の運動に大きな影響を与える
【染料】
- 7世紀頃アカネによる染色日本の奈良時代に、アカネ科の多年草アカネが鮮やかな赤色(茜色)の染料材料として用いられる。
のちの17世紀、昆虫学者ジャン・アンリ・ファーブルが、このアカネ染色法で特許を取得する。
- 1856年ドイツ合成染料の登場①ドイツの化学者ウィリアム・パーキンが、ニクロム酸カリウムで酸化させたアニリンの紫色素(モーヴ)で絹や羊毛を染色できることを発見する
- 1869年ドイツ合成染料の登場②ドイツの化学者カール・グレーベとカール・リーバーマンらが、アカネ色素のアニザリンを合成する
- 1880年ドイツ合成染料の登場③ドイツの化学者アドルフ・フォン・バイヤーが、アイの青色色素インディゴを合成する
【顔料】
- 40万年前頃顔料の利用黄土や酸化鉄などの顔料が、身体への装飾目的で利用される
- 紀元前1200年頃貝紫の利用地中海近辺のフェニキア人が、アッキガイ科の巻貝の粘液から貝紫(紫色)の顔料を抽出する
- 15世紀頃画家たちの顔料探求ヨーロッパの画家たちの用いる青色絵具として、高価だったラピスラズリ原料に代わり、アズライト(藍銅鉱)やインディゴ(コマツナギ属の植物)が利用される
- 1856年ドイツ合成染料の登場①ドイツの化学者ウィリアム・パーキンが、ニクロム酸カリウムで酸化させたアニリンの紫色素(モーヴ)で絹や羊毛を染色できることを発見する
- 1869年ドイツ合成染料の登場②ドイツの化学者カール・グレーベとカール・リーバーマンらが、アカネ色素のアニザリンを合成する
- 1880年ドイツ合成染料の登場③ドイツの化学者アドルフ・フォン・バイヤーが、アイの青色色素インディゴを合成する
【洗剤】
- 紀元前3000年代頃石鹸の利用動物の肉を焼く際にしたたり落ちた脂肪と、薪の灰の混合物に雨が降り、アルカリ成分による油脂の鹸化が生じて、石鹸が発見されたと考えられる
- 1世紀頃『博物誌』での石鹸古代ローマの博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスが、その著作『博物誌』において、ゲルマン人とガリア人が石鹸を用いていることを記述する
- 12世紀頃カリ石鹸からソーダ石鹸へ地中海沿岸を中心に、生石灰を用いる従来のカリ石鹸に代わり、オリーブ油を用いるソーダ石鹸が広まる
- 1847年手洗いの有効性オーストリアの医師ゼンメルワイスらが、医療従事者の手と院内感染との関連を示す。
アメリカ疾病予防センターはこれを受けて、「病原体の拡散を防ぐのに最も重要な方法は有効な手洗いであることが示された」と報告する
- 18世紀末石鹸の大量生産産業革命に伴いアルカリ剤が多く供給され、石鹸の大量生産が可能になる
- 1916年合成洗剤の開発ドイツで合成洗剤が開発される
- 1933年家庭用合成洗剤の発売アメリカで家庭用の合成洗剤が発売される
<参考文献>(2019/12/20 visited)