この用語のポイント
簡単にいうと…
加熱器とは
熱エネルギーを、他エネルギーから変換等して生成する装置
という技術要素・個体の総称です。
一般的にはバーナーや電熱器を指しますが、
当サイトでは熱Eを生成する装置全般を指して加熱器と呼ぶことにします。
詳しくいうと…
今日一日のあなたの行動をふりかえってみてください。
その舞台の上で、どれだけ温かさに触れたでしょうか?
電車や職場のエアコン、ポケットの中のカイロ、レストランのほかほか料理、家では蛇口から温水が出て、お風呂を沸かし、電気毛布や電気カーペットが足元を暖めてくれます。
工業などでも、熱は非常に重要なファクターです。
鉱物を溶かす溶鉱炉、ごみを焼く焼却炉、焼き物を焼き固める窯、金属同士を繋ぎ合わせる溶接装置、電子基板を作る際のはんだ付けなど、熱を上手く操ることで初めて成り立つ産業が数多くあります。
これらの熱は、地熱で温められた温泉のように、ひとりでに生じたわけではありません。
誰かが発明し、製造し、設置し、そして保守管理している加熱の装置・設備から発しています。
これら加熱器について、その種類をみてみましょう。
加熱の種類
加熱器は、その加熱の仕組みのちがいに応じて、次のように分類できます:
①直火加熱器
②間接加熱器
③摩擦加熱器
④化学加熱器
⑤電気加熱器
-⑤-1 抵抗加熱器
-⑤-2 誘導加熱器
-⑤-3 誘電加熱器
-⑤-4 アーク加熱器
-⑤-5 放射加熱器
-⑤-6 ヒートポンプ加熱器
ひとつひとつ概覧してゆきます。
①直火加熱器(火で温める技術)
直火加熱器は、火で物を温める加熱器です。
家庭用では焜炉(ガスコンロ)、石油ストーブ、ガス給湯器、工業用ではガスバーナーや、それを用いた高炉、ボイラーなどがこのタイプです。
②間接加熱器(間接的に温める技術)
間接加熱器は、別の方法で加熱された物によって間接的に温める加熱器です。
温石/焼石などがこのタイプにあたります。
③摩擦加熱器(熱を運動から換える技術)
摩擦加熱器は、摩擦運動によって直接熱を生む、あるいは火花などを散らせて間接的に火を灯す、加熱器です。
フリント式ライターなどがこのタイプです。
④化学加熱器
化学加熱器は、化学反応(発熱反応)によって化学エネルギーから熱を生む加熱器です。
使い捨てカイロなどが該当します。
⑤電気加熱器(熱を電気から換える技術)
電気加熱器は、電気エネルギーから熱エネルギーを変換する加熱器です。
利用される電磁気作用の種類に応じていくつか種類が分かれます。
⑤-1 抵抗加熱器
抵抗加熱器は、電気抵抗の大きい伝導体に電気を通すことで熱を生じさせる電気加熱器です。
家庭用ではファンと組み合わされるヘアドライヤーや、電気コンロ、工業用では各種の炉・窯や溶接などでこのタイプが用いられます。
⑤-2 誘導加熱器
誘導加熱器とは、電気誘導の作用を利用して抵抗加熱を生じさせる電気加熱器です。
家庭用では電磁調理器や電気ケトル、工業用では各種の炉・窯や溶接などでこのタイプが用いられます。
⑤-3 誘電加熱器
誘電加熱器は、電磁波の高周波作用により、対象物中の分子を強制運動させ熱を生じさせる電気加熱器です。
家庭用では電子レンジが、工業用では溶接などでこのタイプが用いられます。
⑤-4 アーク加熱器
アーク加熱器は、電弧(アーク)放電現象を利用して高熱を生じさせる電気加熱器です。
主に工業用で、アーク溶接装置や電気炉などで用いられます。
⑤-5 放射加熱器
放射加熱器は、電気抵抗の際に放射される赤外線によって人や物を温める加熱器です。
家庭用では電気ストーブや七輪などがこのタイプにあたります。
⑤-6 ヒートポンプ加熱器
ヒートポンプ加熱器は、熱媒と呼ばれる特殊な物質を、装置内/外を巡るパイプ内で電気駆動装置により循環させます。
そして一方の空間で吸熱した熱を他方の空間へ排熱することで、熱をポンプのように汲み上げることのできる電気加熱器です。
熱力学の理論サイクルとしては、逆カルノーサイクルに準じています。
エアコン、エコキュート(電気給湯器の一種)などがこのタイプです。
以上で概覧したように、加熱器は、直火・間接熱・運動(摩擦)エネルギー・化学エネルギー(発熱反応)、そして電気エネルギー(抵抗熱・電磁誘導・電磁波・アーク放電・赤外線輻射・熱力学サイクル)など、多くのエネルギー、自然現象、工学サイクルを利用しながら、今日もわたしたちを暖め、鉱物を溶かし、器を焼き上げているのでした。
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つまり…
加熱器とは
さまざまな自然現象や工学サイクルを利用して、熱エネルギーを他エネルギーから変換し生成する装置
という技術要素・個体の総称なわけです。
熱はたんにわしらを暖めるだけじゃなく、物の加工そのものを司っておる。料理はその代表じゃな。
歴史のツボっぽくいうと…
- 旧石器時代~新石器時代焼石による料理焼石プレートを使ったパンがつくられる。
- 紀元前1世紀頃世界で最初期の高炉中国で前漢時代に高炉がつくられる。
- 12世紀頃温石の利用日本で平安時代に、温石が用いられはじめる。
- 12~14世紀頃西洋で最初期の高炉
西洋で最初期の高炉がスウェーデンでつくられる。
以降、製鉄地域で、熱源になる木炭の不足が深刻化する。
- 17世紀フリント式銃の発明ヨーロッパでフリントロック式のマスケット銃が発明される。
- 1709年コークスの研究
イギリスの製鉄業者エイブラハム・ダービー1世が
そのままでは不純物の多かった石炭を蒸し焼きにすることでコークスをつくり、
以降、コークスが高炉の新たな熱源になる。
- 1772年フリント式点火器の発明
日本の発明家平賀源内が、
フリントロック式銃の点火装置に似た、刻み煙草用点火器を発明する。
- 1800年電弧放電の発見イギリスの化学者ハンフリー・デービーが
瞬間的な電弧放電の現象を発見する
- 1802年持続的な電弧放電ロシアの物理学者ヴァシーリー・ウラジーミル・ペトロフが
持続的な電弧放電の現象を発見する
- 1854年日本で最初期の高炉日本初の近代高炉が、薩摩藩の集成館事業により鹿児島市に建設される。
- 明治時代カイロ灰の利用日本で、炭粉を携帯容器内で燃焼反応させるカイロ灰が利用される
- 1881年アーク溶接の開発①フランスで発明家ニコライ・ベナルドスがアーク溶接法を実演する
- 1881年アーク溶接の開発②フランスの発明家オーギュスト・ド・メリタンスが
蓄電池の鉛板の接合に炭素アーク熱を利用する
- 1890年シート型ヘアドライヤーフランスの美容師アレクサンダー・ゴッドフロイが
自身の美容院用にガスストーブ式シート型ヘアドライヤーを発明する。
- 1900年代電磁調理器の特許取得
- 1903年フリント石の改良
オーストリアの化学者カール・ヴェルスバッハが
セリウム70%鉄30%の高効率フリント石(フェロセリウム)の特許を取得する。
- 1905年ニクロム線の開発アメリカの技術者アルバート・マーシュが
ニッケルとクロムの合金で電気抵抗・耐熱性の高い、ニクロム線を開発する
- 1911年ヘアドライヤーの特許アメリカの発明家ガブリエル・カザンジアンが
送風式ドライヤーの特許を取得する。
- 1913年フリント式ライターの販売アメリカのロンソン社が、現代のライターの原形となるものを販売する。
- 1915年頃ヘアドライヤーが一般販売
アメリカのNational Stamping & Electricworks社が
一般消費者向けのヘアードライヤーを販売。過熱・漏電等が問題化する。
- 1923年ベンジンカイロの利用日本の実業家 的場仁市が、白金の触媒作用により気化したベンジンをゆっくり酸化・発熱させるベンジンカイロを開発する
- 1933年オイルライターの販売
アメリカのジョージ・ブレイスデル社がオイルライター(ジッポー)を販売する。
- 1945年電子レンジの発明
アメリカの軍需メーカー、レイセオン社の技術者パーシー・スペンサーが
マグネトロンを利用した電子レンジを発明、特許を取得する。
- 1947年電子レンジの発売レイセオン社が電子レンジを一般販売する。当時は高さ1.8m、重さ340kg、消費電力3000W。他社メーカーもこれに参入。
- 1950年代電磁調理器のデモ展示アメリカのジェネラル・モーターズ社が電磁調理器を展示する
- 1959年日本で国産電子レンジ開発東京芝浦電気(現東芝)が電子レンジを開発する。
- 1971年電磁調理器の販売アメリカのウエスティングハウス・エレクトリック社が電磁調理器Cool Top 2 Induction rangesを販売する
- 1970年電子レンジ搭載自販機日本万国博覧会の周辺で、電子レンジを搭載したハンバーガー自動販売機が登場、話題を集める。
- 1975~76年批判的まなざし
雑誌『暮らしの手帳』が特集「電子レンジ―この奇妙にして愚劣なる商品」を掲載、酷評する。
- 1975年使い捨てカイロの開発日本の旭化成社が、アメリカ陸軍が使用していたフットウォーマーを参考に、鉄粉を酸化反応させた熱を利用する使い捨てカイロを開発、鍼灸院などで販売される
- 1978年使い捨てカイロの普及日本のロッテ電子工業社が日本純水素社と共同開発した使い捨てカイロ「ホカロン」が販売され、全国に普及する