この用語のポイント
簡単にいうと…
ピストンとは
シリンダー(円筒)内で往復動する
技術要素です。
エンジンをはじめ、注射器や管楽器、水洗便器などで利用されている、わたしたちにとって身近な技術要素のひとつです。
ここではエンジン内のピストンを説明します。
詳しくいうと…
レシプロエンジンの内部では、このピストンがシリンダー(円筒)内を激しく上下運動することで、車のタイヤなどを回転させています。
「激しく」と書きましたが、なんと1秒間に100回以上往復します。目視しても残像しか見えないほどの高速運動です。もし木製ピストンがあったら1秒ももたずに自壊してしまうほどの勢いです。
こんな激しい上下運動を日夜繰り返しているピストン、その秘密をみてゆきましょう。
構造
ピストンの構造は左図のとおりです。
シリンダーに囲まれているピストンの、上部をピストンヘッド、下部をピストンスカートと呼びます。
ピストンは、コネクティングロッドという棒を経由してクランクシャフト(軸)につながっています。
なかでも重要なのは、ピストンリングと呼ばれる、ピストン外周を取り巻く輪っかです。
このピストンリングは、コンプレッションリング(上がトップリング、下がセカンドリングの二重巻き巻き)とオイルリングから構成されます。
大事な部分ですので、拡大図でじっくりみてみましょう。
右図はピストン断面図です。
紫色部分がコンプレッションリング、橙色部分がオイルリングとなります。いずれも溝に半分埋まっていますね。
このリングは外周方向へ張力が働いていて、シリンダー壁にぴったりくっつこうとします。
シリンダー壁と接触しているのは、じつはピストンの本体ではなく、このリングなわけです。ピストン本体がじかに壁に接触すると摩擦が大きすぎて上下運動にロスが生じるため、リングに接触を委託しています。
また、上下にカチカチに固定されていないため、ピストンが上下運動するのに応じて、これらリングも柔軟に上下へ揺れます。
これらピストンリングは、ピストンの主要な機能を担っています。さらに詳しくリングの機能を確認してみましょう。
機能①:ガスシール
ピストンリングの最初の機能は、シリンダー内の燃焼ガスをシリンダー/ピストン空間から外へ漏れ出させないことです。
これをガスシール機能といいます。
コンプレッションリング(とくに上側のトップリング)がこの役目を果たします。
機能②:熱伝導
ピストンリングの二番目の機能は、シリンダー/ピストン空間内で生じる燃焼の高熱を、ピストン経由でシリンダー壁へ逃がすことです。
これを熱伝導機能といいます。
機能③:オイルコントロール
ピストンリングの最後の機能は、シリンダー壁に給油される潤滑油(エンジンオイル)を適度な厚さに保つことです。
これをオイルコントロール機能といいます。
オイルリングが余分な潤滑油をすくい出し、ピストン内部へ排出してあげます。
以上がピストンと、その主要部分であるピストンリングのお話でした。
ピストンは、シリンダーとともに、レシプロエンジンをはじめ、多くの機械・器械の中枢を担っています。
ピストン/シリンダー空間内の密封性を保ちつつ、かつ高速で上下運動できるという、一見矛盾した機能を、ピストンは見事に両立しているといえます。
さらに知りたいなら…
つまり…
ピストンとは
シリンダー内で往復運動し、燃焼ガスの密封、燃焼後の放熱、潤滑油の厚さ管理を行なう
技術要素というわけです。
ピストンって、あの鋼鉄の塊じゃよな? シリンダーにじかに接触しているわけではないんじゃな! ピストンリングか、覚えておくぞ。
あと、ネットで調べてみたら、このピストンリング、日本企業が世界シェアをかなり担っているようじゃ。知らんかった。
歴史のツボっぽくいうと…
1854年 イギリスの技師ジョン・ラムズボトムが
このパッキング技術により、内燃機関が可能になる。
<参考文献>