製造物
└運動の技術
└原動機
└熱機関(エンジン)
└内燃機関
└ジェットエンジン
├ターボジェットエンジン
├ターボプロップエンジン
├ターボファンエンジン
├ターボシャフトエンジン
├ラムジェットエンジン
└パルスジェットエンジン
この用語のポイント
簡単にいうと…
ジェットエンジンとは
外から取り込んだ空気を噴出(ジェット)するときの反作用でジェット推進を可能にする航空用の内燃エンジンな
技術個体の総称です。
上記のジェット推進の定義に加え、類似構造をもつプロペラ推進型エンジンも、広義のジェットエンジンに含まれる場合があります。今回はこの広義のジェットエンジンについても説明します。
なおジェットエンジンは、構造的にはガスタービンエンジンが内部に用いられることが多く、その点ではガスタービンエンジンの一種といえますが、航空という独自の課題・開発経緯をもつ分野で利用されることから、ジェットエンジンという総称で呼ばれます。
詳しくいうと…
ジェットエンジンは、航空分野のエンジンです。
空を飛ぶための推進力を提供してくれる、欠かせない重要パーツになっています。
ジェットエンジンの構造
ジェットエンジンに含まれる各エンジンの多くは、左図のような構造をしています。
このうち、①吸気・②圧縮行程に関する部位はコールド・セクション、③燃焼・膨張・④排気行程に関する部位はホット・セクションと呼び分けられます。
熱機関としての理論サイクルは、ブレイトンサイクルに該当ないし近似し、
行程はガソリンエンジンと同様、下記4つのプロセスを踏みます:
行程①:吸気
…外部からの空気流の取込み(たくさん吸い込むと出力アップ)
行程②:圧縮
…空気流の圧縮(高温高圧ガスになって燃効率アップ)
行程③:燃焼・膨張
…空気流の燃焼(この燃焼ガス流の勢いでタービンや圧縮機を回す)
行程④:排気
…燃焼ガス流の排気(この排気の勢いで機体の推進力を得る)
ジェットエンジンの種類
ジェットエンジンに属するものには、
狭義のもの(ジェット推進によるもの)と
広義のもの(プロペラ推進によるもの)があります。
ガスを勢いよく噴出(ジェット)させて前進するか、プロペラの回転で前進するかのちがいです。
①狭義のジェットエンジン(ジェット推進)
・ターボジェットエンジン
…ジェットエンジンの基本タイプ。ただし超音速になるため利用は限定的。
・ターボファンエンジン
…ターボジェットより低速だが燃費もよく、最も普及している航空機エンジン。
・ラムジェットエンジン
…空気抵抗(ラム圧)を利用して空気流を圧縮する。用途はミサイルなど。
・パルスジェットエンジン
…シャッター開閉による間欠燃焼タイプ。かつてV1ロケットなどに搭載。
②広義のジェットエンジン(プロペラ推進)
・ターボプロップエンジン
…プロペラ推進&ジェット推進の両方で飛ぶ。小型航空機向け。
・ターボシャフトエンジン
…プロペラ推進のみ。ヘリコプターに広く搭載。
ジェットエンジンの開発史
ごく単純化して書くとこうなります:
1903~ レシプロエンジン@プロペラ推進
| 課題:高速飛行時、プロペラ回転が速すぎると推進効率が悪化。
↓ 解決:プロペラ推進に頼らない方法を模索しよう。
1939~ ターボジェットエンジン@ジェット推進
| 課題:速すぎる。燃料があっという間に消費されてしまう。
↓ 解決:遅くしよう。プロペラ推進を一部復活させよう。
1945~ ターボプロップエンジン@プロペラ推進(大)+ジェット推進(小)
| 課題:高速飛行時、やっぱりプロペラ回転が速すぎて推進効率わるい。
↓ 解決:プロペラやめよう。燃焼ガス流(高速)に
空気流(低速)混ぜて、低速のジェットエンジンにできない?
1960’s~ターボファンエンジン@ジェット推進 ←Now
以降、民間旅客機向けとしては、ターボジェットエンジンを低速化したターボファンエンジンが、最も普及するジェットエンジンになりました。20世紀後半での性能アップにより、大型機のみならず小型機にも搭載されています。
別の開発思想の系譜として、高速のターボジェットエンジンをそのまま民間旅客機向けに搭載できないか、試行錯誤が続いていますが、極端な燃費のわるさや、長い滑走路を必要とすること、収容乗客数が低人数であることなどから、上手く行っていません。このため2003年に超音速旅客機コンコルドは全機退役しました。
研究開発自体は続いているようなので、そのうち第二のコンコルドが現れるかもしれませんが、まだしばらくは、ターボファンエンジンが、引き続き民間向けのメジャーな航空用エンジンになると思われます。
なお、軍事向けとしては、燃費や採算性を度外視できる場合があるため、戦闘機やミサイル用としてターボジェットエンジンは今も現役です。
ジェットエンジンの推力
ジェット推進もプロペラ推進も、空気を加速させて後方へ流す際の、反作用で、前進します。
その推力の計算を単純化すると下記のように考えられます:
$推力 = 吸い込んだ空気流量 × (排気速度 - 機体速度)$
つまり、速く(遅く)飛びたい場合、
吸気量を増やす(減らす)か、排気速度を速く(遅く)するか、という解決策が考えられます。
このため、プロペラ機を高速化したいのなら吸気面積であるプロペラを単純に大きくすればよく、
ジェット機を低速化したいなら、燃焼ガス流の排気速度を、吸入空気流と混ぜて遅くすればよいことになります(ターボファンエンジンの場合)。
さらに知りたいなら…
つまり…
ジェットエンジンとは
排気流を後方噴射して前進の推力を得るジェット推進を用いる航空用の内燃エンジンで、そこにプロペラ推進などが加わったりすることもある
技術個体の総称というわけです。
歴史のツボっぽくいうと…
1903年 アメリカのライト兄弟が、レシプロエンジン搭載プロペラ機(
ライトフライヤー号)を開発、世界初の有人動力飛行を成功させたとされる。
1939年 ドイツのハインケル社が、世界初のターボジェットエンジン搭載の
航空機He178を初飛行させる。
1945年 イギリスのロールス・ロイス社が、
初めてターボプロップエンジン単独搭載航空機の飛行を成功させる。
1947年 フランスのチュルボメカ社が、最初の実用的なターボシャフトエンジンを
開発する。当初は航空機の補助動力装置として開発されたが、
1950年代になってヘリコプターの動力として利用されはじめる。
1960年代 ターボファンエンジンが開発される。
<参考文献>(2018/09/09 visited)