簡単にいうと…
材料とは
加工品を主に構成する物質
という自然加工物です。
詳しくいうと…
材料のある風景
わたしたちが子どもの頃、身近にはいろんな物がありました。
車や人形のおもちゃ、幼稚園の制服やバッグ、ゲーム機の筐体、布団のさらさらしたシーツ。わたしたちはいまでもその肌触りや色合いを思い出すことができます。
けれども、当時のわたしたちは、それら個々の物が果たす機能を理解し、機能とともに遊んでいたにもかかわらず、それらを構成している物質にはあまり目を留めていませんでした。
(呼び声や人間関係、概念など)無形のまま機能する一部の例をのぞいて、何かあるものが機能するには、物質がその空間内に広がりをもっている必要があります。
機能はしばしば、それを構成する物質の種類から本質的な影響を受けています。
たとえば、あなたがいま居る建物の壁のことを考えてみましょう。
<壁>という機能は自明です。ただしこの<壁>機能を果たすべき物質はさまざまで、たとえばそれが「木材」であれば、柔軟ゆえ地震に強く、湿度調整もしてくれる一方、可燃性ゆえ火があっという間に燃え広がります。
他方、「レンガ」であれば火災には強いですが、地震がくるとあっさりと崩れてしまう……という具合です。
こうして、光を遮り風雨をしのがせてくれる<壁>も、細部の機能を見ると、かなり多様性のあることがわかります。これは構造物にかぎらず、製造物や制作物の構成物質についても同様です。
機能がその構成物質を選ぶのと同様、物質のほうも遂行できる機能を選ぶわけです。
このような物質それぞれに特異な性質としては、頑丈さ、柔軟さ、粘り気、弾力性、耐水性、吸水性、耐食性、耐熱性、熱伝導性、電導性、磁方性など多岐にわたります。
こうしたわけで、何かを作るうえで、その作るべき何かの形態や機能を考えるのと同じくらい、材料選びは大変重要な位置を占めるのです。
材料の種類
材料を大きく区分するなら、まずは物それ自体である素材、次いでこれら物同士を接着する接着剤に分けられます。
素材
素材とは、内外からの応力に対して一定の耐久力を備えた材料です。
無機物の素材(無機素材)としては、粘土・合金・コンクリート・ガラスなどがあり、これらは土・岩石・鉱石を原料としています。
有機物の素材(有機素材)としては、植物材・樹脂・繊維・皮革・羽毛・液晶などがあり、これらは植物・動物・原油を原料としています。
接着剤
接着剤とは、物同士をくっつける材料です。
無機物の接着剤(無機系接着剤)としては、モルタルやはんだ、水ガラスやシリカ系接着剤などがあります。
有機物の接着剤(有機系接着剤)としては、漆(うるし)や膠(にかわ)、でんぷん系接着剤や合成樹脂系接着剤などがあります。糊やテープもこの仲間です。
以上のように材料は、わたしたちが日頃触れて見ることのできる構造物・製造物・制作物の全般にわたって、その物質的側面を支えてくれているのでした。
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つまり…
材料とは
加工品を主に構成する物質
という自然加工物なわけです。
かつて古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、「物質に形態を与える」ことが技術だとする技術観を持っておった。
じゃが今日、その物性研究が進むにつれますます、わしらは物質のミクロな分子構造がもつ特異な性質・機能を目の当たりにしておる。「物質こそが可能な形態を決める」と言えそうじゃわぃ。
歴史のツボっぽくいうと…
【素材】
- 紀元前8700年前頃金属の利用メソポタミア地方で、紀元前8700年前頃の純銅製ペンダントが出土される
- 8000年前~6500年前頃織物の発明西南アジアやエジプトで、麻や綿などの植物繊維を用いた織物が発明される
- 5000年前頃毛織物の発明メソポタミア地方で、羊毛を用いた毛織物が発明される
- 4000年前頃絹織物の発明中国で、蚕の分泌物である絹を用いた絹織物が発明される
- 紀元前40世紀頃乳香の利用エジプトの墳墓で、香料として用いられる乳香(ムクロジ目カンラン科ボスウェリア属の樹木から取れる樹脂)が発見される
- 紀元前15~13世紀頃没薬の記述旧約聖書『出エジプト記』に、聖書を清めるための香の調合材として、没薬(ムクロジ目カンラン科コンミフォラ属の樹木から取れる樹脂)が記述される
- 紀元前5500年前頃精錬の開始ペルシャで、銅鉱石を加熱して銅元素を抽出する精錬が行なわれる
- 紀元前3600年前頃銅合金の発明メソポタミア地方で、銅-錫合金(青銅)が発明される
- 紀元前2500年前頃製鉄の普及アナトリア半島(現在のトルコ周辺地域)で製鉄技術が普及する
- 紀元前2250年前頃ガラスの製造メソポタミア地方(現在のシリア)で、本格的なアルカリ石灰ガラスが製造される
- 紀元前1400年前頃鉄合金の発明ヒッタイト帝国(現在のトルコ周辺地域)で、鉄に炭を添加した鉄合金(鋼)が発明される
- 紀元前8~紀元後5世紀古代ローマでのコンクリート利用古代ローマ帝国で、水道や橋、ドームや公衆浴場などにコンクリートが用いられる。
古代ローマ帝国崩壊後、その製法の多くは産業革命時代まで失われたとされる。
- 紀元前1世紀頃吹きガラス製法の確立メソポタミア地方(現在のシリア)で、吹きガラス製法が確立する
- 1670~1690年頃カリグラスの製造ボヘミア地方でカリグラスが製造される。
- 1678年クリスタルガラスの製造イギリスでラベンズクロフトが、鉛クリスタルガラスの特許を取得する
- 1756年コンクリートの再考案イギリスの技術者ジョン・スミートンが、水で固まる石灰を使用したコンクリートを考案する。
- 1824年ポルトランドセメントの発明イギリスの技術者ジョセフ・アスプディンが、今日の代表的なセメントであるポルトランドセメントを発明し、1840年代に実用化する。
- 1835年合成樹脂の発見ドイツの化学者ユストゥス・フォン・リービッヒとアンリ・ヴィクトル・ルニョーが、有機物の一種で単量体(モノマー)である塩化ビニルを発見する
- 1867年鉄筋コンクリートの発明フランスの庭師ジョセフ・モニエが、鉄筋によって補強したコンクリート製の植木鉢について特許を取得する
- 1870年合成樹脂の商業化アメリカの発明家ジョン・ウェズリー・ハイアットが、象牙に代わるビリヤード球の原料として、合成樹脂の一種であるセルロイドを実用化する
- 1935年化学繊維の発明アメリカの化学者ウォーレス・カロザースが、世界初の合成繊維であるナイロンを発明する
【接着剤】
- 紀元前4000年前頃膠の接着剤古代中国で、膠が接着剤として利用される
- 紀元前3800年前頃アスファルトの接着剤古代メソポタミアで、天然アスファルトが接着剤として利用される
- 1872年合成樹脂接着剤の発明ベルギー生まれの化学者レオ・ヘンドリック・ベークライトが、接着剤として利用できる合成樹脂「ベークライト」を発見する