この用語のポイント
簡単にいうと…
熱の技術とは
熱エネルギーの移動を、有用な布置となるようコントロールする
という工夫のことです。
英語ではTechnology of heatと書きます。
詳しくいうと…
熱に満ちた風景
日本では、春は暖か、夏は蒸し暑く、秋は涼しい、そして冬は寒いです。
これは太陽の高さや日照時間が、地球の公転周期に応じて変化するためですね。
この春化秋冬に応じた温度・湿度の変化が、季節風を生み、動植物を冬ごもりさせ、わたしたちのポケットにカイロを忍ばせています。
実際、こうした温度・湿度は、ある空間全体に対して働きかけるため、その空間内にあるすべての物・生物を変調させずにはいられません。
たとえば採れたての鉄鉱石を純粋な鉄へ製錬するには1,000℃以上の超高温が必要ですし、ゴミの焼却にも高温が必要です。
また電熱器(電気抵抗で熱を生み出すパーツ)がなければ、わたしたちの髪や服を乾かすことも、シャツをアイロンがけすることも、ヒーターで暖房をとることもできなくなります。
逆を言えば、熱さえコントロールできれば、鉱石を製錬し、ゴミを焼却し、髪を乾かし、室内を暖かく/涼しくさせることができるというわけです。物を加工し、料理ができ、それぞれの生物にとって快適な空気を作り出すことができます。
そうした工夫のポイントは、大きくわけて3種類あります:
①熱を他Eからどのように変換するか? ⇒加熱器の工夫
②熱をどのように奪うか?
⇒冷却器の工夫
③湿度をいかに増減するか?
⇒調湿器の工夫
①~③の工夫について、一つひとつみてゆきましょう。
加熱器
加熱器は、熱(分子運動の熱運動)を発生・移動させてくるための装置です。
火で直接間接に熱する、摩擦熱、化学的な熱反応、電熱効果などによって加熱します。
たとえば溶鉱炉、ボイラー、鍋、ライター、使い捨てカイロ、溶接装置、電熱器、電子レンジ、エアコン、電気ヒーターなどがあります。
冷却器
冷却器は、空間・物体中の熱を吸い取って奪い、他の空間・物体へ移動させていく装置です。
自然放熱、空気冷却、液体冷却、気化熱、電磁気による冷却などの方法があります。
たとえば、放熱フィン、ファン、復水器、エアコン、冷蔵庫、ペルティエ素子などがあります。
調湿器
調湿器は、空間・物体中の湿気(水分)を奪い去ったり、逆に供給することで、湿度を変化させる装置です。
温風で乾かしたり、蒸発によって水分供給したりします。湿度は熱と密接な関係をもち、そのため調湿器にはしばしば加熱器が用いられます。
たとえば、ヘアドライヤー、衣類乾燥機、穀物乾燥機、除湿器、加湿器、スプレーなどがあります。
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つまり…
熱の技術とは
熱エネルギーの移動を、有用な布置となるようコントロールする
という工夫のことです。
わしらにとって快適な空気、つまり快適な温度・湿度とは、つまり、何も感じない空気のことじゃ。不快な温度・湿度になったときだけ、わしらは違和感を覚え、暖めたり冷やしたり、加湿したり除湿したり、工夫を凝らす。
ここから、”空気調和(Air Conditioning)”という概念が20世紀初頭に生まれたわけじゃな。
歴史のツボっぽくいうと…
- 旧石器時代~新石器時代焼石による料理焼石プレートを使ったパンがつくられる。
- 紀元前1世紀頃世界で最初期の高炉中国で前漢時代に高炉がつくられる。
- 12世紀頃温石の利用日本で平安時代に、温石が用いられはじめる。
- 12~14世紀頃西洋で最初期の高炉
西洋で最初期の高炉がスウェーデンでつくられる。
以降、製鉄地域で、熱源になる木炭の不足が深刻化する。
- 17世紀フリント式銃の発明ヨーロッパでフリントロック式のマスケット銃が発明される。
- 1709年コークスの研究
イギリスの製鉄業者エイブラハム・ダービー1世が
そのままでは不純物の多かった石炭を蒸し焼きにすることでコークスをつくり、
以降、コークスが高炉の新たな熱源になる。
- 1772年フリント式点火器の発明
日本の発明家平賀源内が、
フリントロック式銃の点火装置に似た、刻み煙草用点火器を発明する。
- 1800年電弧放電の発見イギリスの化学者ハンフリー・デービーが
瞬間的な電弧放電の現象を発見する
- 1802年持続的な電弧放電ロシアの物理学者ヴァシーリー・ウラジーミル・ペトロフが
持続的な電弧放電の現象を発見する
- 1854年日本で最初期の高炉日本初の近代高炉が、薩摩藩の集成館事業により鹿児島市に建設される。
- 明治時代カイロ灰の利用日本で、炭粉を携帯容器内で燃焼反応させるカイロ灰が利用される
- 1881年アーク溶接の開発①フランスで発明家ニコライ・ベナルドスがアーク溶接法を実演する
- 1881年アーク溶接の開発②フランスの発明家オーギュスト・ド・メリタンスが
蓄電池の鉛板の接合に炭素アーク熱を利用する
- 1890年シート型ヘアドライヤーフランスの美容師アレクサンダー・ゴッドフロイが
自身の美容院用にガスストーブ式シート型ヘアドライヤーを発明する。
- 1900年代電磁調理器の特許取得
- 1903年フリント石の改良
オーストリアの化学者カール・ヴェルスバッハが
セリウム70%鉄30%の高効率フリント石(フェロセリウム)の特許を取得する。
- 1905年ニクロム線の開発アメリカの技術者アルバート・マーシュが
ニッケルとクロムの合金で電気抵抗・耐熱性の高い、ニクロム線を開発する
- 1911年ヘアドライヤーの特許アメリカの発明家ガブリエル・カザンジアンが
送風式ドライヤーの特許を取得する。
- 1913年フリント式ライターの販売アメリカのロンソン社が、現代のライターの原形となるものを販売する。
- 1915年頃ヘアドライヤーが一般販売
アメリカのNational Stamping & Electricworks社が
一般消費者向けのヘアードライヤーを販売。過熱・漏電等が問題化する。
- 1923年ベンジンカイロの利用日本の実業家 的場仁市が、白金の触媒作用により気化したベンジンをゆっくり酸化・発熱させるベンジンカイロを開発する
- 1933年オイルライターの販売
アメリカのジョージ・ブレイスデル社がオイルライター(ジッポー)を販売する。
- 1945年電子レンジの発明
アメリカの軍需メーカー、レイセオン社の技術者パーシー・スペンサーが
マグネトロンを利用した電子レンジを発明、特許を取得する。
- 1947年電子レンジの発売レイセオン社が電子レンジを一般販売する。当時は高さ1.8m、重さ340kg、消費電力3000W。他社メーカーもこれに参入。
- 1950年代電磁調理器のデモ展示アメリカのジェネラル・モーターズ社が電磁調理器を展示する
- 1959年日本で国産電子レンジ開発東京芝浦電気(現東芝)が電子レンジを開発する。
- 1971年電磁調理器の販売アメリカのウエスティングハウス・エレクトリック社が電磁調理器Cool Top 2 Induction rangesを販売する
- 1970年電子レンジ搭載自販機日本万国博覧会の周辺で、電子レンジを搭載したハンバーガー自動販売機が登場、話題を集める。
- 1975~76年批判的まなざし
雑誌『暮らしの手帳』が特集「電子レンジ―この奇妙にして愚劣なる商品」を掲載、酷評する。
- 1975年使い捨てカイロの開発日本の旭化成社が、アメリカ陸軍が使用していたフットウォーマーを参考に、鉄粉を酸化反応させた熱を利用する使い捨てカイロを開発、鍼灸院などで販売される
- 1978年使い捨てカイロの普及日本のロッテ電子工業社が日本純水素社と共同開発した使い捨てカイロ「ホカロン」が販売され、全国に普及する
- 1556年鉱山換気用ファンの記述
ドイツの鉱山学者ゲオルク・アグリコラが著書『デ・レ・メタリカ』で、鉱山換気用のファンについて記述する。
- 1748年気化熱の発見イギリスの化学者カレンが気化熱を発見。
- 1758年気化熱の実験
蒸発時に生まれる熱移動(気化熱)を利用して物体を冷却する実験をフランクリンらが行なう。
- 1769年復水器付き蒸気エンジン
イギリスの技術者ジェームズ・ワットが、ニューコメンの蒸気エンジンの改良型(復水器付き)を製作する。
- 1803年初期冷蔵庫の発明
アメリカの豪農ムーアが、氷を利用して冷蔵する道具を作成し、これに「refrigerator(冷蔵庫)」と名付ける。
(電気冷蔵庫以降、ムーアのこの道具は「icebox」と再命名される)
- 1820年アンモニア冷却の発見イギリスのファラデーが、液化アンモニアによる冷却を発見。
- 1820年アンモニアの気化熱実験加圧により生まれる液化アンモニアの蒸発時に周囲の空気が冷却する実験をファラデーが行なう。
- 1834年エーテル製氷機の発明
アメリカの発明家パーキンスが、エーテル(有機化合物)を用いた圧縮型の製氷機を作成。
- 1834年ペルティエ効果の観察フランスの物理学者ジャン=シャルル・ペルティエが、異なる2種類の金属に電流を流すと熱も輸送する現象を観察する。
- 1840年頃表面復水器の試作表面復水器の試作機が登場する。
- 1842年氷で病室が冷房される医師ジョン・ゴリーが、圧縮技術で氷を作って患者のために病室を冷やした。その後、都市の空調集中制御を構想した。
- 1856年エーテル冷蔵庫の開発
オーストラリアのハリソンが、実用的な圧縮型エーテル冷蔵庫を開発。ビール業界・食肉加工業界で利用される。
- 1902年電気エアコンの製造アメリカのウィリス・キャリアが電気式エアコンを製作、印刷工場の温度・湿度を調整した。
- 1902年自然冷却の自動車エンジンアメリカのフランクリン社が空冷自動車エンジンを開発する。
- 1906年空気調和の概念登場
アメリカのクラマーが、織物工場内の加湿機に「エア・コンディショニング(空気調和)」と名付ける。(”water conditioning”という織物製造過程からの着想)
以降、”人間や製造物を囲む大気環境の調節”という発想が普及。
- 1927年電気冷蔵の普及
アメリカのGE社が製造した家庭用の電気冷蔵庫、100万台以上を生産し一般に広く使われる。
同年、日本の日立製作所が電気冷蔵庫の試作に成功。
- 1928年フロンの発明
アメリカの化学者トマス・ミジリ―が、人体に無害な冷媒「フロン」をアンモニアの代替物として発明。
- 1928年フロンの発明
アメリカの化学者トマス・ミジリ―が、人体に無害な冷媒「フロン」をアンモニアの代替物として発明。
- 1950年代エアコンの普及アメリカで家庭用エアコンが普及。
- 1950年代日本で冷蔵庫が普及日本で、電気冷蔵庫が急速に普及。三種の神器のひとつと呼ばれる。
- 1974年オゾン層破壊の警鐘
アメリカのローランド&モリーナが、フロンなど塩素原子が成層圏で活性化しオゾンを分解すると発表。
- 2008年ヒートポンプ技術の重要性
国際エネルギー機関(IAEA)が、『エネルギー技術展望2008』のなかでヒートポンプ技術を含む17の主要エネルギー技術をとりあげる。
- 1890年シート型ヘアドライヤーフランスの美容師アレクサンダー・ゴッドフロイが
自身の美容院用にガスストーブ式シート型ヘアドライヤーを発明する。
- 1902年電気エアコンの製造アメリカのウィリス・キャリアが電気式エアコンを製作、印刷工場の温度・湿度を調整した。
- 1905年ニクロム線
アメリカの技術者アルバート・マーシュが
電気抵抗が大きく電熱器に利用可能なニクロム線を開発する。
- 1906年空気調和の概念登場
アメリカのクラマーが、織物工場内の加湿機に「エア・コンディショニング(空気調和)」と名付ける。(”water conditioning”という織物製造過程からの着想)
以降、”人間や製造物を囲む大気環境の調節”という発想が普及。
- 1911年ヘアドライヤーの特許アメリカの発明家ガブリエル・カザンジアンが
送風式ドライヤーの特許を取得する。
- 1915年頃ヘアドライヤーが一般販売
アメリカのNational Stamping & Electricworks社が
一般消費者向けのヘアードライヤーを販売。過熱・漏電等が問題化する。
- 1926年蒸気式加湿器の発明アメリカのマックス・カッツマンが、息子の病気治療のため、室内湿度を高めようとヤカンに火をかけていたところ爆発。これをキッカケに電気供給による蒸気式加湿器を開発、加湿器メーカーKaz社を創設する。
- 1928年フロンの発明
アメリカの化学者トマス・ミジリ―が、人体に無害な冷媒「フロン」をアンモニアの代替物として発明。
<参考文献>(2019/03/21 visited)