簡単にいうと…
電磁気の技術とは
電気エネルギー、磁気エネルギー、および両者の相互作用を導いて有用な効果を得る
工夫のことです。
英語ではTechnology of electromagnetismと書きます。
詳しくいうと…
電磁気のある風景
皆さんの部屋から、電気を使った製品を一つひとつ消していってみましょう。
まず、いまこのページを眺めるのに使っているパソコンやスマートフォンが姿を消します。冷蔵庫、テレビ、電子レンジ、エアコン、スピーカーなど、壁のコンセントから電力供給を受けているものはもちろんダメです。また、電気給湯器、天井の電灯、電池の入った置時計や、着火用に電池を用いていたガスコンロもいなくなりました。
すると、残ったものはベッド、机、本棚、機械式腕時計、カバンなどだけです。それも、真っ暗な部屋の中で。
これでも十分生きていけます。が、いかに自分が電化製品・電子製品のある生活に慣れきって、そこでの便利さ、そこにしかない行動の可能性を享受していたのか、それが如実に分かりますね。
ここまで電気のある物で溢れかえるようになった要因は、電気が、他エネルギー(E)と変換される際のロスが少なく、またその伝送がきわめて微細で高速であること、そのため小型な製品化が可能であること、などが挙げられます。
そんな電気と、それから電気に密接に関わりのある磁気にまつわる技術を見てゆきましょう。ただし、あまりに多すぎるので、ここではその物の最終効果が電気エネルギー体である物に限定しています(たとえば電気モーターは、インプットは電気Eですがアウトプットが運動Eなのでここでは扱いません)。
電気と磁気にまつわる工夫のポイントは、大きくわけて3種類あります:
①電気を他Eからどのように変換し、輸送・放出するか?
⇒電力器の工夫
②電気をどのように加工し、演算処理に利用するか?
⇒電子器の工夫
③磁気をいかに電気との相互作用内などで利用するか?
⇒磁器の工夫
①~③の工夫について、一つひとつみてゆきましょう。
電力器
電力器は、発電、送配電、放電などを行なう装置です。
発電器には交流発電機やソーラーパネルなどが、送配電器には電線や変圧器が、そして放電器には点火プラグや放電加工機などがあります。
電子器
電子器は、電気や電子の流れを加工制御する回路、回路構成素子および複数の回路から構成される計算機です。
電子回路には電源回路やフリップフロップ回路などが、回路素子には抵抗器やトランジスタなどが、そして計算機には電子式計算機などがあります。
磁器
磁器は、磁場を発生させる物質つまり磁石や、磁場を利用する磁性器からなります。
磁石としては永久磁石と電磁石が、磁場を利用する磁性器としてはハードディスクドライブやMRI装置などがあります。
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つまり…
電磁気の技術とは
電気エネルギー、磁気エネルギー、および両者の相互作用を導いて有用な効果を得る
工夫のことです。
そのエネルギーで特筆すべきは、何と言っても変換ロスの少なさと扱いやすさじゃろうな。それでいて、電界と磁界の相互作用にかかれば、電気モーター内の重いローターもあっという間に回転するほどのパワフルさじゃ。ほかのエネルギーではこうはいかんぞ。
歴史のツボっぽくいうと…
【電力器】
- 1744年電線というアイデアドイツの科学者ヨハン・ハインリッヒ・ウィンクラーが、感応(静電)発電期を改良して放電火花を遠距離に成功、電気輸送について「絶縁された導体を用いると世界の果てまでも送ることができるだろう」と述べる。
- 1777年火花着火の提唱イタリアの物理学者アレッサンドロ・ボルタが、スパークによる燃料への着火を提唱する
- 1791年生体電気の発見イタリアの医師ルイージ・ガルヴァーニが、カエルの足の両端にメスを当てると痙攣する現象を著書で発表、生体電気研究の端緒となる
- 1800年ボルタ電池の発明イタリアの物理学者アレッサンドロ・ボルタが、ガルヴァーニの発見を一般化し、亜鉛と銅の電極および電解液を用いて世界初の電池を発明する
- 1800年蓄電池における電線の利用イタリアの物理学教師アレキサンドル・ボルタが、ボルタ電池の両端を金属線で繋ぐと内部で電流が生じることを発見する。
- 1807年点火プラグの原形スイスのドゥ・リヴァが、ボルタのアイデアを内燃機関向けに提唱し、これがスパーク・イグニッション・エンジンの原形となる
- 1821年ゼーベック効果の発見エストニアの物理学者トーマス・ゼーベックが、金属棒の内部に温度勾配があるとき両端間に電圧および電流が発生するゼーベック効果を発見する。
- 1831年電磁誘導の発見と発電機の発明イギリスの物理学者マイケル・ファラデーが電磁誘導の法則を発見、翌年に同法則を利用した電磁式発電機(ファラデーの円盤)を発明する。
- 1831年電磁誘導の発見イギリスの物理学者マイケル・ファラデーが、電磁誘導の法則を発見する
- 1836年変圧器の発明アイルランドの牧師ニコラス・カランが一次コイルと二次コイルからなる誘導コイルを発明し、変圧器として広く用いられる
- 1839年光起電力効果の発見フランスの物理学者ベクレルが、薄い塩化銀で覆われた白銀の電極を電解液に浸したものに、光を照射すると、電流が生じる現象を発見する。
- 1866年頃乾電池の発明フランスの技術者ジョルジュ・ルクランシュが、現在のマンガン乾電池の原形であるルクランシェ電池を発明する
- 1880年代交流電流のメジャー化アメリカの電力事業黎明期に、交流電流の電力システムが主流となる
発電所-電力消費地の全体を同一電圧で設計するエジソン含めた直流支持者に対して、高圧輸送による低い送電損失を掲げるテスラ含めた交流支持者が勝つことにより、高圧輸送後の降圧の必要性から、その後に変圧器の開発が進んでゆく
- 1885年効率的な変圧器の発明ブダペストの技術者ジペルノウスキー、ブラーティおよびデーリが、環状鉄心を含むZBD式の鉄心モデルを開発する
同年、アメリカの実業家ジョージ・ウェスティングハウスが、ZBD式鉄心モデルの特許を購入、商用化させる
- 1887年一般的な光電効果の発見ドイツの物理学者ヘルツが、紫外線の照射により、帯電した物体がその電荷を容易に失うという光電効果を発見する。
- 1899年ニカド電池の発明スウェーデンの発明家ヴァルデマール・ユングナーが、ニカド電池(ニッケル・カドミウム蓄電池)を発明する
- 1900年ニッケル・鉛蓄電池の発明アメリカの発明家トーマスエジソンが、ニッケル・鉛蓄電池を発明する
- 1902年高電圧プラグドイツのボッシュ社が、高電圧スパークプラグを開発する
- 1905年光電効果の理論的説明物理学者アインシュタインが、論文「光の発生と変換に関する1つの発見的な見地について」において光量子仮説を発表し、光子と電子の相互作用という説明によって光電効果が理論づけられる。
- 1954年太陽電池の開発アメリカ・ベル研究所のダリル・シャピン、カルビン・フラー、ゲラルド・ピアーソンが、pn接合を用いた太陽電池を開発、現在の太陽電池の原形となる。
- 1959年アルカリ乾電池の開発アメリカのエナジャイザー社がアルカリ乾電池を開発する
- 1976年リチウムイオン収納反応の発見ドイツ・ミュンヘン工科大学のベーゼンハルトが、黒鉛内のリチウムイオンの可逆的な収納反応(インターカレーション)および負極の酸化物への収納反応を発見、リチウム電池での応用を提案する
- 1977年ニッケル水素電池の開発アメリカ海軍の航法衛星「NTS-2」向けにニッケル水素電池が開発・使用される
- 1986年
【電子器】
- 1781年オームの法則の発見イギリスの物理学者ヘンリー・キャヴェンディッシュが、電位差(電圧)とその間に流れる電流および電気抵抗の関係にかんするオームの法則を発見、1879年にマクスウェルが『ヘンリー・キャヴェンディシュ電気学論文集』として編集出版して公表される
1826年には同法則がドイツの物理学者ゲオルク・オームによって再発見される
- 1836年変圧器の発明アイルランドの牧師ニコラス・カランが一次コイルと二次コイルからなる誘導コイルを発明し、変圧器として広く用いられる
- 1873年ダイオードの原理の発見イギリスの物理学者フレドリック・ガスリーが、電流が一方向にしか流れないダイオード作用の基本原理を発見する
- 1896年電解コンデンサの発明アメリカのチャールズ・ポラックが、電解コンデンサの特許を取得する
- 1918年フリップフロップ回路の発明イギリスの物理学者フィリップ・エククレスとF.W.ジョーダンが、2つの真空管からなる最初のフリップフロップ回路を発明する
- 1936年
- 1937年デジタル回路の概念確立アメリカの電気工学者クロード・シャノンが、MITでの修士論文「継電器及び開閉回路の記号的解析」において、電気回路がブール論理の演算に1対1で対応する(スイッチのON/OFFを真理値に対応させた上で)ことを示す
- 1930年代~40年代電子式計算機の登場弾道計算や暗号解読などの軍事用途として、あるいは学問上の解析用途として、Zuse Z3、アタナソフ&ベリー・コンピュータ、Colossus、ENIACといった電子式計算機が、それまでの電気機械式計算機に代わって登場しはじめる
- 1945年コンピュータ構成の原形ハンガリー出身の数学者ジョン・フォン・ノイマンが、最初器の電子式コンピュータEDVACに関する報告書内で、記憶装置んいプログラムとデータの両方を格納するアーキテクチャを定義する
以降、ほぼすべてのコンピュータがこのアーキテクチャを採用する
- 1947年トランジスタの発明アメリカ・ベル研究所のジョン・バーディーンとウォルター・ブラッテンが、半導体に関する研究の過程で増幅作用を発見、点接触型トランジスタを発明する
1950年代以降、コンピュータの素子がそれまでの真空管からトランジスタへ移行する
- 1951年初の商用コンピュータイギリスの外食・ホテル産業J.Lyons&Company社が、傘下のパン屋の毎週の売り上げ集計をコンピュータによって実施する
- 1952年集積回路の発案イギリスの工学者ジェフリー・ダマーが、集積回路のアイデアを公表する
- 1958年集積回路の開発アメリカ・ウェスティングハウス社が「Molectronics」という名称の集積回路の概念を発表する
- 1959年集積回路の主要特許アメリカ・インスツルメンツ社のジャック・キルビー、およびフェアチャイルドセミコンダクター社のロバート・ノイス(のちにインテル社を創業)が、それぞれ半導体による集積回路の特許を出願。「キルビー特許紛争」と呼ばれる権益争いの議論が起こる
- 1960年代汎用ロジックICの出現さまざまな種類の電子回路を集積回路によりチップ化した汎用ロジックICが現れる
- 1960年代スイッチング電源方式の開発アメリカのMIT(マサチューセッツ工科大学)がNASA向けのアポロ誘導コンピュータに、スイッチング電源方式を採用する
- 1965年ムーアの法則ロバート・ノイスらとともにインテル社を創業したゴードン・ムーアが、「集積回路上の部品数は毎年2倍の割合で増大しており、今後10年間は同様の増加率をたどるであろう」と見解する論文を発表。その後、「集積回路上のトランジスタ数は1.5年ごとに倍になる」というムーアの法則が有名になる
- 1965年最初のHDDアメリカ・IBM社の商用コンピュータ「IBM 305 RAMAC」に、直径60cm長ディスク50枚を重ねて4.8MBの記録容量を備え、大型冷蔵庫2台分の体積をもつ、世界最初のHDDが搭載される
- 1960年代小型ラジオ・テレビの登場真空管に代わってトランジスタを用いた小型のラジオやテレビが販売される
- 1969年インターネットの登場アメリカ国防総省が、インターネットの起源となるARPANETを運用開始する
- 1972年パソコンの概念提唱アメリカの計算機科学者アラン・ケイが、講演「Personal Computer for Children of All Ages」において「パーソナルコンピュータ」という用語を提唱する
- 1990年代Microsoft社製品の台頭アメリカ・Microsoft社のWindows OSや業務アプリケーションMicrosoft Officeが、オフィス用ソフトとしてデファクトスタンダードとなりはじめる
- 1998年Apple社製品の台頭アメリカ・Apple社から、「インターネットのための新世代のパーソナルコンピュータ」と銘打たれたiMacが販売、社会現象となる
【磁器】
- 紀元前4世紀磁石への言及①古代ギリシャの哲学者プラトンが、著書『イオン』において磁性を帯びた「マグネシア(現トルコ西部)の石」について言及する
- 紀元前3世紀磁石への言及②古代中国の書物『呂氏春秋』において、鉄を引き寄せる「慈石」について言及される
- 1600年磁力の研究イギリスの医師・物理学者ウィリアム・ギルバートが、『磁石及び磁性体ならびに大磁石としての地球の生理』を出版、その後の電磁気学や電気工学に大きな影響を与える
- 1917年KS鋼の発明日本の物理学者 本田光太郎らが、KS鋼を発明する
- 1937年フェライト磁石の発明日本の化学者 加藤与五郎、武井武が、フェライト磁石を発明する
- 1965年最初のHDDアメリカ・IBM社の商用コンピュータ「IBM 305 RAMAC」に、直径60cm長ディスク50枚を重ねて4.8MBの記録容量を備え、大型冷蔵庫2台分の体積をもつ、世界最初のHDDが搭載される
- 1982年ネオジム磁石の発明日本・住友特殊金属社(現 日立金属NEOMAX社)の佐川眞人が、ネオジム磁石を発明する