簡単にいうと…
構築物とは
ひとの居住・滞在目的ではない全体またはその固着具
という構造物です。
とくに、地面に固定されている構築物は「工作物」とも呼ばれます。
詳しくいうと…
構築物のある風景
ひとの環境世界には、しばらく動かす必要のない物がたくさんあります。
たとえば郵便ポストはひとの流れ(歩道)の特定地点に、信号機は車の流れ(車道)の交差地点に変わらず設置されることになります。
また、灯台は岬の先端に、石油プラットフォームは油田の上に築かれています。
地理的世界や環境世界におけるこうした特異点(交差点、岬の先端、油田の上など)は、それぞれの求めに応じる構築物を配置すべきまさにその点にほかなりません。つまり、他の場所に設置されていると困ったことになる、そうした構築物は、基本的には地面の上に固定されています。
また、固定されているということは、風雪や荷重に耐えるための構造も必要になります。ここから、ネジやコンクリートで構造が安定している、用いられる素材が簡単には折れたり錆たりしない、などの設計が必要とされます。
こうした構築物は、わたしたちの世界のさまざまな場面で機能しています。
構築物の種類
構築物は、まず以下のように大別できます:
・構築部材
・構築体
それぞれ概覧してゆきましょう。
構築部材
構築部材は、パーツ同士ないしパーツと地面を接合させる固着具です。
ネジや釘、生コンクリートなどがあります。
構築体
構築体は、接合されて組みあがった構造物の本体です。
家具・市街・交通(道路、鉄道、港湾、航空)・エネルギー関連設備など、多様な分野それぞれにたくさんの種類があります。
さらに知りたいなら…
各構築物に応じて構造・工法がかなり異なるので、
つまり…
構築物とは
ひとの居住・滞在目的ではない全体またはその固着具
という構造物なわけです。
構築物、とひとくくりに言うが、その用途はあまりにも広いぞぃ。郵便ポストや信号機は情報伝達、電柱や鉄塔はエネルギー伝達、クレーンは物の移動、という具合じゃ。
とはいえ、それらは自重や荷重を支えるために一定の構造要件が求められ、その共通点のためにこうしてひとくくりにできるわけじゃな。
歴史のツボっぽくいうと…
【構築部材】
- 紀元前8~6世紀頃オリーブ圧搾機の登場古代ギリシャでオリーブをプレスする圧搾機(スクリュープレス)が利用される
- 紀元前7世紀頃スクリューの使用アッシリア王国の国王センケナブリの残した楔文字文書に、スクリューの記述が残される
- 1500年頃ダ・ヴィンチとネジイタリアの工学者・芸術家レオナルド・ダ・ヴィンチが、装置制作時の締結用にネジを用いる
- 16世紀中頃ネジの普及ヨーロッパでさまざまな装置にネジが利用され、家内工業としてネジ製造が行なわれる
- 1800年精密なネジの普及イギリスの技術者ヘンリー・モーズリーが、鋼鉄製のネジ切り用旋盤を発明し、精密なネジが量産されることでその後の産業革命に寄与する
【構築体】
- 約30万年前炭の利用日本の約30万年前の遺跡から炭が発見される
- 紀元前4000年頃石造アーチ橋の建造古代メソポタミア文明で石造のアーチ橋が架けられる
- 紀元前2800年頃椅子の発達古代エジプトで装飾の施された椅子が作られる
- 紀元前2750年人類最初のダムエジプトで人類最初のダム「サド・エル・カファラダム(異教徒のダム)」が上水道用途で建造される
- 紀元前2600年頃大規模な舗装路古代エジプトで、ピラミッド建設のため石切場から建設現場までの道が石で舗装される
- 紀元前25~19世紀頃都市水道の敷設インダス文明の都市モヘンジョダロで、井戸から揚水した水が水道管を通して給水される
- 紀元前2200年頃レンガ橋の建造古代都市バビロンでユーフラテス川に全長200mのレンガ橋が架けられる
- 紀元前1900年頃古代ローマ帝国の水道橋古代ローマ帝国の各地で、水道を通すための橋が建造される
- 紀元前1600年頃セメント舗装路の登場古代ギリシャのクレタ島で、セメントやモルタルを基礎部素材にした石の舗装路が造られる
- 紀元前600年頃荷馬車用の溝古代ギリシャのコリントス地方で、馬車が石灰岩の溝の上を走行する
- 紀元前5世紀頃アスファルト舗装路の登場古代メソポタミアの都市バビロンで、アスファルトとモルタルで詰めたレンガ基礎の上を石で舗装した舗装路が造られる
- 紀元前450年クレーンの登場古代ギリシャで、梃子と滑車を利用した人力のクレーンが石造建築のために用いられる
- 紀元前3~紀元後5世紀古代ローマの水道網古代ローマで多数の水道が整備され、1日100万m3以上の給水量を誇る
- 6世紀頃橋建設の支保工古代ローマ帝国・リミラ(現 トルコ南西部)で、支保工を用いた橋(「リミラ近くの橋」)が建設される
- 9世紀~12世紀日本での木炭の普及日本の平安時代に、山林部を中心に炭焼きが広く行なわれる
- 1300年代頃ドイツの古クレーンドイツのハノーヴァー州リューネブルグで、古クレーンと呼ばれる、チェーンを巻き取るドラムを人力で回して吊り下げするピポット型のクレーンが造られる
- 16世紀森林資源の枯渇イギリスで、製鉄用途の木炭需要の高まりにより、森林伐採が深刻化する
- レールに鉄が使用されるイングランドのカンバーランドで、木製基盤上に薄い帯状の鉄を張り付けたレールが造られる
- 1831年現在のレールの原形アメリカの技術者ロバート・スティーブンスが、現在使用されるレールの原形となる平底のレールを発明する
- 1909年最初期の空港アメリカのメリーランド州で、技術者ウィルバー・ライトがカレッジパーク空港を開設する
- 1913年多目的ダムの法律プロイセン(現 ドイツ)で、治水と利水双方の機能を備えた多目的ダムに関する法律「プロイセン水法」が制定される
- 1916年最初のコンクリート舗装の滑走路フランスのクレルモンフェランで、最初のコンクリート舗装された滑走路が造られる
- 1917年アメリカのダム建設アメリカで「洪水防御法」が制定され、ダム建設や河川改修が行なわれる
- 1935年調節可能な鉄柱スイス生まれの技術者ウィリアム・A・デ・ヴィジエが、長さの調節可能な鉄柱を設計し、支保工の柔軟な設置に貢献する
- 1938年世界初の海上石油プラットフォームアメリカのスペリオル石油会社が、メキシコ湾岸の油田上に世界初の石油プラットフォームを建設する
- 1942~1943年海上要塞の建造第二次世界大戦中、イギリスの陸軍・海軍が、テムズ川・マージ―川河口に、海上要塞「マンセル要塞」を建造、その後の石油プラットフォームの構造に影響を与える
<参考文献>(2019/11/09 visited)