簡単にいうと…
制作物とは
歴史的に手作業で作られてきた物事
という生産された技術です。
直観的にわかりやすい定義なのですが、その反面、かなり曖昧です。「工場で大量生産されづらい物」とか、「生物の創意工夫が反映されやすい被造物」という含意が込められています。
詳しくいうと…
制作物の成り立ち
石器に木の棒を結わえ付けて固定し、斧をつくります。
あるいは、近所で採れた粘土を成形して焼き固め、土器をつくります。
こうすることで、ホモ・サピエンスは、腕の運動エネルギーの延長体を見出し、また、液体の重力エネルギーを支えてくれる形態を手に入れます。道具の登場です。
道具は、生物がたえず置かれているエネルギー環境に対して、変節を加え、生存を容易にしてくれました。そうやって次々に新しい道具をホモ・サピエンスは身に纏いはじめます。
他方、この道具の展開ラインと並行して、表現のラインも走ってきました。旱魃や洪水など、自然エネルギーのもたらす途方もなさに対して人間たちは畏敬の念を抱き、次第に自然エネルギーを神々という人称形で崇めはじめます。
こうして、自然エネルギーの諸力、神々の視点での自分たちの狩りや戦(いくさ)の姿、そしてときには神々自体の形象を、壁画へ描き出すようになり、次いで道具にも彫ったり描いたりするようになります。線や色で装飾された道具は、それ自体が呪力をもっているかのようです。
制作物とは、このような道具と表現のことです。
両者はいずれも、自然エネルギーに関わってきました。つまり、道具は身体とともにエネルギー連関のなかである機能を果たし、表現は自然エネルギー(生物含む)の、媒体を介した似姿から出発しています。
制作物の種類
そんな制作物には、大きく分けて実用品と芸術品があります:
実用品
実用品とは、身体動作に連関する物、という制作物です。
芸術品
芸術品とは、美感的意義をもつ物事、という制作物です。
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つまり…
制作物とは
歴史的に手作業で作られてきた物事
という生産された技術なわけです。
手による被造物が「制作物」で、工場生産物が「製造物」、という従来の区分は多分に曖昧じゃのぅ。手を無条件に特権視するのはアリストテレス以来の伝統じゃが、では、手に代わる新たな人造器官によって作られた被造物は、今後何と呼ばれるんじゃろうな?
歴史のツボっぽくいうと…
【実用品】
- 約100万年前加熱調理のはじまり食材を火に直接かけたり、焼石で間接的に加熱する調理が行なわれる
- 30万~3万年前木材の利用ネアンデルタール人たちが石器を用いて木から槍や舟などを作り出す
- 約3万年前パン製造の痕跡すりつぶした植物の根を、水に混ぜて焼き上げた、一種のパンがつくられる
- 紀元前8700年前頃金属の利用メソポタミア地方で、紀元前8700年前頃の純銅製ペンダントが出土される
- 8000年前~6500年前頃
- 紀元前5500年前頃精錬の開始ペルシャで、銅鉱石を加熱して銅元素を抽出する精錬が行なわれる
- 5000年前頃毛織物の発明メソポタミア地方で、羊毛を用いた毛織物が発明される
- 5000年前木造の建築日本の集落で木を骨組みにした建物が建てられる
- 4000年前頃絹織物の発明中国で、蚕の分泌物である絹を用いた絹織物が発明される
- 紀元前3600年前頃銅合金の発明メソポタミア地方で、銅-錫合金(青銅)が発明される
- 3000~2000年前頃木工技術の発展古代エジプトで木工技術が発展し、斧、釿、鑿、鋸、弓錐などの木工道具が利用される
- 2600年前頃漢服の登場黄帝の時代以降、漢民族の礼服として漢服が定着、以降17世紀の明王朝の衰退まで着用されつづける
- 紀元前2500年前頃製鉄の普及アナトリア半島(現在のトルコ周辺地域)で製鉄技術が普及する
- 紀元前1400年前頃鉄合金の発明ヒッタイト帝国(現在のトルコ周辺地域)で、鉄に炭を添加した鉄合金(鋼)が発明される
- 1000~300年前頃日本への金属器輸入日本の弥生時代に、青銅器と鉄器の技術が大陸から伝わる
- 3~7世紀頃和服の黎明期日本の古墳時代に、豪族たちが袴や喪(ロングスカート)を身に着ける。
- 7世紀チェスの原型サーサーン朝ペルシアのホスロー2世が、チェスの原型であるボードゲーム「シャトランジ」に言及した書物を残す
- 1733年前織物の生産性向上イギリスの発明家ジョン・ケイが、経糸の間に緯糸を通す際、それまでの指とは異なり飛び杼(ひ)を用いることで、織物の生産性を大幅に向上させる
- 1785年前織物生産の機械化イギリスの発明家エドモンド・カートライトが、織機の機械化に取り組み、以降多くの特許を取得する
- 18世紀現代洋服の登場フランス革命時、革命の推進力となった社会階層が、貴族たちの半ズボン&膝丈コート(キュロット)ではなく長ズボン&腰丈ジャケット(サン・キュロット)を着用する
- 19世紀前半自動織機の普及イギリスやアメリカを中心に、自動式織機の機械が普及する
- 1935年化学繊維の発明アメリカの化学者ウォーレス・カロザースが、世界初の合成繊維であるナイロンを発明する
- 1947年コンピュータゲームの発明アメリカのトーマス・T・ゴールドスミスとエストル・レイ・マンが、ブラウン管を用いた世界初のコンピュータゲームを開発する
- 1983年家庭用ゲーム機の普及日本の任天堂社が家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ」を発売、ゲーム市場を開拓する
【芸術品】
- 36000年前頃楽器の制作現在のドイツで、現生人類が使用したと考えられる骨の笛が発見される
- 紀元前20000年頃ラスコーの洞窟壁画現在のフランスで、クロマニョン人がラスコー洞窟に壁画を描く
- 紀元前2560年頃ピラミッドの建設エジプト王国で、ギザの大ピラミッドが建設される
- 紀元前8世紀頃叙事詩の精華古代ギリシャの吟遊詩人ホメロスが、口承の叙事詩『イーリアス』『オディッセイア』を創作。その後、紀元前6世紀頃に文字化される
- 紀元前5世紀頃悲劇の誕生古代ギリシャで、悲劇が発展する
- 紀元前438年頃パルテノン神殿の建設古代ギリシャで、パルテノン神殿が建設される
- 6世紀頃キリスト教聖歌の展開ヨーロッパで、キリスト教の聖歌『グレゴリオ聖歌』が作曲される
- 1504年頃ダヴィデ像の制作イタリアの芸術家ミケランジェロが、彫刻『ダヴィデ像』を制作する
- 1506年頃モナ・リザの制作イタリアの芸術家レオナルド・ダ・ヴィンチが、絵画『モナ・リザ』を制作する
- 1605~1615年近代小説の勃興スペインの作家ミゲル・デ・セルバンテスが、近代小説の先駆けといわれる小説『ドン・キホーテ』を出版する
- 1652年頃聖テレジアの法悦の制作イタリアの芸術家ジャン・ロレンツォ・ベルニーニが、彫刻『聖テレジアの法悦』を制作する
- 17~18世紀宗教の音楽から感情の音楽へヨーロッパで、感情を表現するバロック音楽の様式が普及する
- 1808~1833年戯曲の精華ドイツの作家ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテが、戯曲『ファウスト』を出版する
- 1827年世界最初期の写真フランスの発明家ジョゼフ・ニセフォール・ニエプスが、世界最初期の写真を撮影する
- 1880年代ポピュラー音楽の展開アメリカの楽譜出版業界(ティン・パン・アレー)が楽譜を販売し、買い取ったレコード会社が演奏録音してレコード盤として販売する商業活動が確立し、以降こうした音楽の形がポピュラー音楽と呼ばれる
- 1895年世界初の映画フランスの発明家リュミエール兄弟が、世界初の実写映画『工場の出口』を公開する
- 1913~1927年無意志的記憶の物語フランスの作家マルセル・プルーストが、小説『失われた時を求めて』を出版する
- 1913年空間における連続性の唯一の形態の制作イタリアの芸術家ウンベルト・ボッチョーニが、彫刻『空間における連続性の唯一の形態』を制作する