簡単にいうと…
社会機関とは
社会体における分化された集団組織
という生産された技術です。
人的集合が「生産された技術」というのも変ですが、組織自体が一定の機能を目的に設立され、他組織とも連動するため、広義のテクノロジーに数え入れることができると思います。
詳しくいうと…
社会のさまざまな働き
ホモ・サピエンスは、集団組織を上手く利用してこれまで生存してきました。
生まれたときにはパパとママがいて、学校へ通って思考することを学び、病院で傷を癒し、会社で働き知らない誰かに益を提供して、自分ではない誰かの運転するバスや電車に乗り、パートナーを見つけ、子どもをもうけ、また新たな家族を今度は自分がつくって……という風に、さまざまな人々が互いに連動しています。
産業に目を向けると、自分ではない誰かが、野菜を育て、鉱石を採掘し、家電を組み立て、ガスを運び、電気を届け、料理を作り、お金を貸し、番組を放送しています。あまりに多様すぎて目もくらむ思いです。いまこうしているあいだにも、これらの人々が時々刻々と活動し、機能して、別の誰かと益を提供しあっているわけです。
では、とテレビに目を向けると、政治家さんが何かを言っています。彼らの仕事は行政や立法であり、やはり日々、統治にかんする事務手続きや他国との交渉、必要な法案の審議や予算案の議論を行なっています。また、裁判の判決もニュースで聞くことがありますが、その現場でも司法にたずさわる裁判官、検察官、弁護士さんたちが、公正かつ必要な判断をつねに体現しようと努めています。
これら家庭、産業、公共のそれぞれのひとびとは、それぞれの組織に属し、毎日の活動によってそれぞれの機能を果たしているのです。
社会体とその機関
こうしてみると、社会とは、まるで生物の体のようです。生物が進化の過程でその器官(organ)を分化させつつ上手く連動させて生きながらえてきたように、社会もその機関(organ)を専門分化させつつ連動させて存続してきました。ここには分化の運動があり、分化された系を相互に調整してひとつにまとめる作用が認められます。
それと同時に、社会は、まるで機械のようです。それぞれの機関は意図的に設計され、機能を果たすように運営されており、その意味では社会機関も人工物、テクノロジーの一種とみなすことができます。たとえば、ピラミッド建設に従事した何万人もの作業員たちの分業体制、戦争において陣形を展開する軍隊、これらはいずれも国家にとっての機械でした。つまり、ひとによって作られた、ひとの意図通りに働くメカニズムです。
社会体が生物であれ機械であれ、オルガニズムであれメカニズムであれ、それは体制化の方向と擾乱化の方向へ、同時に進んでいるようです。体制化は全体や部分を統合し、擾乱化は逸脱や分化の契機を逃しません。ともあれ、抽象的なお話はここまでにしましょう。
いずれにせよ、社会にはそれぞれ異なる人的組織があり、それぞれの仕方で機能し、互いに連動しています。わたしたちはそこにあまりに没入しており、あまりに日常的で当たり前になっていますが、ふと振り返って、思いを馳せてみる価値のある光景だと思います。
社会機関の種類
さて、そんな社会機関には、大きく分けると以下のような種類があります:
・生活機関
・産業機関
・公共機関
・国際機関
一つひとつ概観してみましょう:
生活機関
生活機関は、生存して暮らすうえでの共同体という社会機関です。
産業機関
産業機関とは、物・サービスを提供して対価を得る組織、という社会機関です。
一次産業・二次産業・三次産業それぞれにたくさんの種類があります。
公共機関
公共機関とは、社会体の存続に不可欠な公益性の高い組織、という社会機関です。
国家・インフラ・医療・文化などの種類があります。
国際機関
国際機関とは、複数の国家が連携して課題解決や枠組みづくりをする組織、という社会機関です。
政府間協議機関、経済金融機関、援助機関、標準化機関などたくさんの種類があります。
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つまり…
社会機関とは
社会体における分化された集団組織
という生産された技術なわけです。
ちなみに、19世紀半ばまで、日本には「社会」という言葉がなく、「世間」とか「浮世」などの概念しかなかったそうじゃ。概念って偉大じゃのぉ。
歴史のツボっぽくいうと…
【生活機関】
- ?世紀頃神社の普及古代の日本で、神社や祠が建てられる
- 2世紀頃キリスト教の普及古代ローマ帝国で、キリスト教の組織が普及する
- 6世紀頃仏教の伝来日本の飛鳥時代に、仏教が伝来し、聖徳太子の働きもあり日本全国に普及、以降多くの寺院が各地に建てられる
- 622年最初のモスク現在のサウジアラビアで、ムハンマドらイスラム共同体による最初のモスク「預言者のモスク」が建設され、以降イスラム教の普及とともに各地でモスクが建てられる
- 7世紀頃五保制の導入日本の古代律令制において、五戸を単位として相互扶助・治安・徴税などについて連帯責任を負わせる制度が導入され、その機能は江戸時代の五人組や今日の町内会へと一部継承される
- 927年日本全国の神社リスト日本の平安時代に、全国の神社の一覧(2810社)である「延喜式 神明帳」が『延喜式』第九・十巻に収録される
- 16世紀頃日本の家制度の誕生日本で、武士階級の家父長制をもとにして家制度が成立し、家督相続や本家/分家などの概念が生じる。
- 1947年日本の家制度の廃止日本で、日本国憲法の施行と同時に、憲法24条(家庭生活における個人の尊厳と両性の本質的平等)に反するとの理由で家制度が廃止される。
【産業機関】
- 約100万年前加熱調理のはじまり食材を火に直接かけたり、焼石で間接的に加熱する調理が行なわれる
- 30万~3万年前木材の利用ネアンデルタール人たちが石器を用いて木から槍や舟などを作り出す
- 約3万年前パン製造の痕跡すりつぶした植物の根を、水に混ぜて焼き上げた、一種のパンがつくられる
- 紀元前24世紀頃農業の興りイスラエルのガリラヤ湖岸で、23,000年前の農耕の痕跡(オオムギ、ライムギ、エンバク、エンメル麦)が発見される
- 紀元前8700年前頃金属の利用メソポタミア地方で、紀元前8700年前頃の純銅製ペンダントが出土される
- 8000年前~6500年前頃
- 紀元前5500年前頃精錬の開始ペルシャで、銅鉱石を加熱して銅元素を抽出する精錬が行なわれる
- 5000年前頃毛織物の発明メソポタミア地方で、羊毛を用いた毛織物が発明される
- 3000~2000年前頃木工技術の発展古代エジプトで木工技術が発展し、斧、釿、鑿、鋸、弓錐などの木工道具が利用される
- 紀元前6~5世紀頃日本の稲作の興り日本の縄文時代中期に、稲作が行なわれ始める
- 1148年ヨーロッパ最古の銀行貸付・投資機能が高度に発達していた中世イタリアで、ヨーロッパ最古の認可された銀行「サン・ジョルジョ銀行」が設立される
- 1785年前織物生産の機械化イギリスの発明家エドモンド・カートライトが、織機の機械化に取り組み、以降多くの特許を取得する
- 19世紀前半自動織機の普及イギリスやアメリカを中心に、自動式織機の機械が普及する
- 1838年世界初の農業協同組合日本の江戸時代に、農政学者・大原幽学が、先祖株組合という農業協同組合を世界で初めて創設する
- 1872年日本の国立銀行の設立日本の明治時代に、国立銀行条例が制定され、翌1873年に渋沢栄一が日本初の国立銀行である第一国立銀行(現:みずほ銀行)を設立する
- 1882年日本の中央銀行の設立日本の明治時代に、日本銀行条例が制定され、同年に日本銀行が開業する
- 1900年全国規模の農業組合日本の明治時代に、他国の協働組合などを参考に、産業組合法が成立、以降全国の農村に普及する。のちに帝国農会、農業会へと改組される
- 1935年化学繊維の発明アメリカの化学者ウォーレス・カロザースが、世界初の合成繊維であるナイロンを発明する
- 1947年コンピュータゲームの発明アメリカのトーマス・T・ゴールドスミスとエストル・レイ・マンが、ブラウン管を用いた世界初のコンピュータゲームを開発する
- 1948年農業協同組合の発足日本の戦後の農地改革において、当時の深刻な食糧難において食糧を統制・管理する必要から、それまでの農業会を改組する形で農協が発足、今日にいたる
【公共機関】
- 紀元前4千年前帆船の普及エジプトやメソポタミア地方で、帆船が使用される。
- 紀元前3500年頃文明の興り中東でメソポタミア文明が興り、古代都市ウルクなどで都市行政が発達する
- 紀元前3000年頃官僚機構の誕生中東でエジプト文明が興り、国家の公共事業(治水、灌漑など)の拡大とともに、官僚機構が生じる
- 1748年三権分立の提唱フランスの思想家シャルル・ド・モンテスキューが『法の精神』を出版、国家権力を立法権・司法権・行政権などに分立することを提唱する。以降のアメリカ合衆国憲法やフランス革命後の憲法制定などに大きな影響を及ぼす
- 1807年蒸気船の開発アメリカの技術者ロバート・フルトンが外輪蒸気船を製造する。
- 1814年蒸気機関車の開発イギリスの技術者ジョージ・スティーブンソンが、石炭輸送用の実用的な蒸気機関車を開発する。
- 1821年天然ガス田の発見アメリカのウィリアム・ハートが、ニューヨーク州フレドニアで天然ガス田を発見。その後フレドニアガス灯社が設立される
- 1858年外洋客船の開発イギリスの技術者アイザム・K・ブルーネルが、スクリュープロペラを備えた外洋客船を製造する。
- 1880年代交流電流のメジャー化アメリカの電力事業黎明期に、交流電流の電力システムが主流となる
発電所-電力消費地の全体を同一電圧で設計するエジソン含めた直流支持者に対して、高圧輸送による低い送電損失を掲げるテスラ含めた交流支持者が勝つことにより、高圧輸送後の降圧の必要性から、その後に変圧器の開発が進んでゆく
- 1881年路面電車の開業ドイツ・ベルリンで路面電車が開業する。
- 1885年
- 1901年飛行機の開発アメリカの技術者グスターヴ・ホワイトヘッドが、飛行機の有人飛行を成功させたといわれる。
- 1921年気動車の営業開始日本でガソリンエンジン式気動車が営業開始される。
- 1936年長距離高速列車の開発イタリアで長距離高速列車が製造される。
- 1936年ヘリコプターの開発ドイツの技術者ハリンリヒ・フォッケらが、安定飛行のできる初の量産型ヘリコプターの飛行に成功する。
- 1946年現代日本の憲法制定日本国憲法が公布、翌年施行され、大日本帝国憲法時代よりも厳格な三権分立に基づき国会(立法権)・内閣(行政権)・裁判所(司法権)が設置される
- 1971年
【国際機関】
- 1865年ITUの設立フランスで、国際電気通信連合(ITU)が設立される
- 1874年UPUの設立万国郵便条約に基づき、万国郵便連合(UPU)が設立され、1948年に国際連合の専門機関の一つになる
- 1875年国際度量衡委員会の設立メートル条約に基づき、国際度量衡委員会(CIPM)が設立される
- 1920年国際連盟の発足第一次世界大戦後に、史上初の国際平和機構である国際連盟が発足するが、国際紛争等に伴い脱退国が続出し、のちの国際連合へ継承される
- 1945年国際連合の発足第二次世界大戦後に、国際連合が51か国によって発足する(2020年現在で加盟国193か国)
- 1945年IATAの設立キューバにて、航空会社同士の産業団体である国際航空運送協会(IATA)が設立される
- 1947年ICAOの設立1944年に締結された国際民間航空条約(シカゴ条約)に基づき、国際民間航空機関(ICAO)が設立される
- 1947年ISOの設立スイスで、1926年に設立された万国規格統一協会を前身として、国際標準化機構(ISO)が非営利法人として設立される
- 1958年欧州経済共同体の設立一部のヨーロッパ諸国間でローマ条約が調印・発効され、欧州経済共同体および欧州原子力共同体が設立される
- 1958年IMOの設立国際連合・海事会議で、政府間海事協議機構を設置するための条約が採択され、1982年に現在の国際海事機関(IMO)となる
- 1963年Eurocontrolの設立欧州でEurocontrolが設立される
- 1967年ASEANの設立共産主義の波及を防止したいアメリカの支援のもと、それまでの東南アジア連合(ASA)を継承する形で東南アジア諸国連合(ASEAN)が設立される
- 1970年IHOの設立1967年に採択された国際水路機関条約に基づき、国際水路機関が設立される
- 1971年太平洋諸島フォーラムの設立フランスの核実験などに反対するために、太平洋諸島フォーラムが設立され、以降は主に域内の経済連携などが議論される
- 1993年欧州連合の設立欧州経済共同体・欧州原子力共同体・欧州石炭鉄鋼共同体の加盟国間でマーストリヒト条約が調印・発効され、欧州連合が設立される
<参考文献>(2020/08/08 visited)